013 イレーダの酒場
―――
「忍。分かるな?」
手始めに衣食住の“住”だ。
「心得ております。間取り、部屋割り、施設構造。手始めにここから…その後、世界間の設備機能を融合、最適化、生成設置します。お客様をお任せしても?」
「任された。それからオマエ…何か着ろよ」
忍がお辞儀をして奥に消えると瞬く間にこの空間が白と黒を基調としたダイニングバー&キャバクラ風に姿を変えた。俺と忍は繋がっている。そう創ったし、別に気にしない。互いに気が利くし、楽だし便利、一心異体みたいな存在って表現がしっくりくるかな?
瞬間調光ガラスの壁面一体型ショーケース。
天上にはシーリングファンとダクトレールライト。
バーカウンターにカウンターチェアー。
酒棚のど真ん中と奥のVIPルームには大型ディスプレイ。
ボックスソファーとテーブルセット。
カラオケマシーン、ダーツマシーン、漫画…
…
一部色々オカシイな。後でレイアウト考え直さねば。。。
忍は俺の“こんなのあったらいいかもな”を再現してるだけであって、悪くない。庇うわけではないが非は俺にある。
やましいところがあるから庇うんじゃないか?
…
意図したわけではないし、断じて狙っていない。
何の因果関係があったのか当の俺にすらサッパリ不明なのだ。俺は自身の潔白を確信している。―――それなのに何でだよ。忍の見た目が俺の好みだったり昔の女性関係が反映されてるのなんて偶然の産物、他人の空似だろ?何も悪い事してないのにさっきからなんで嫁の顔が浮かぶの?
何でだよ…無意識ってオソロシイ…
俺が意識しなければ忍だって平気だろうと軽く考えて、後からドツボにハマッても、まぁどーにかなるだろう。どちらかと言えばプライベートの部分だからな。
心の中で取り敢えず嫁に謝罪して、バーカウンターの中に入る。
ふーむ…昔のバイトを思い出す。一時期カクテル作りにハマッてね。様々な道具やリキュールをよく集めたものだ。腕はそうだな…大分錆び付いてはいるだろうが、またやるとしよう。
カウンター下、奥の冷蔵庫、共に開けて調べるが何も入っていないし、冷えてもいない。う~む、電気はこれからか…
アロマキャンドル、ライターを生成しカウンター上で火を灯す。電力系統が来るまではコイツと…魔法頼みになるわけなんだが。
魔法の使用はさすがに躊躇する。オーディンの知識としては持っているものの、使ったことないし威力精度原理も理解出来て居ないモノを室内でイキナリは…そんな勇気は俺には無いね。
魔法は後回しだ。
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2019/01/12/Sat/12:00-




