010 一仕事終えて
◆
代々木くん様々だ…彼の介抱(ステータス調整)の甲斐あってか、神の力が少しずつ馴染んでいるのを実感出来ている。後は時間だったり使用する頻度だったり、失敗や成功を繰り返して調整しながら最適解を模索していくの良さげかな。
「ふぅ…何とかなりましたか?」
「あぁ、感謝してもしたりないよ。助かったよ。お疲れ様」
得るモノもそれなりにあった。ステータス上限付近を手探りながら調査出来た件。代々木くんのスキル使用経験値。それと、この経験を活かせそうな能力が何件か頭に浮かぶ。提案してみるか…代々木くんにぴったりだ。
「にしても、キミの能力はチートやイカサマと評するレベルを越えてるねぇ…逸脱してるよ」
「逸脱ですか?まぁ褒め言葉だと思っておきますよ…フゥ…疲れました」
「一息入れてくれ」
お疲れの代々木くんをリラックスさせると、彼の頭の上で俺を見上げる存在が目に留まる。ばっちり目が合ってるが、不思議そうに首を傾げている。彼の頭の上に胡座をかいている彼女に“おいで”と合図を送り、人差し指の指先を差し出す。
「オヌシ、ワシが見えるのか?」
「おう、ヨロシクな!代々木くんの守護精霊だろ?アキトだ」
「う~む…オサリムじゃ。アキトといったかオヌシ…」
フワリと翔んで俺の指の上に降り立つと、マジマジと俺を観察してやがる。
「握手しようぜ!」もう片方の手の指先を彼女の手に差し出し掴ませた。
「むぅ…契約者でもないのにワシが見えるとは…しかもちゃんと姿形まで見えておろう?小僧には見えておらんのだぞ?ウルスカよ、どーなっておるのじゃ?」
俺とウルスカを交互に見やるオサリム。
「アキト、何があったのですか?それにこの動物達は?」
満を持して沈黙を破るウルスカ。
代々木くんはお疲れ放心中、心此処に在らずでボソリ呟く。
「休みたいっス」
(代々木くんに同意だな。俺も休みたい。腰を落ち着けて話したい)
勿体つける様に間を取りながら、オサリムに軽く息を吹き掛けて代々木くんへと吹き飛ばす。
「コラッ、キサマ。何をするか!」
抗議の叫びを無視して、説明する言葉を選びつつ切り出した。
「コイツらは拾った。飼育するって事じゃなく、俺のお供にする。成り行き上捨て置く訳にもいかなくて面倒みる事に決めた。代々木くんの守護精霊みたいなモンかな?」
「獣風情がワシみたいなじゃと?」
ギロリと睨んでくるオサリム。
「格が違うわ、たわけが!一緒にするな!」
「痛いから頭の上で暴れないでくれよ…」
プライドを刺激してしまったかな?仲良さげでいいねぇ…代々木ペアは賑やかで微笑ましい。
「仲が良さそうなことで♪羨ま…「良くない!」即刻反論かよ!」
(お世辞の一つも言わせろよ…微塵も羨ましいとは思ってないけど)
「そ・れ・で・だ、ウルスカ!」
ヒョイと手の中に出現させた槍をウルスカに投げて寄越す。
「…えっ!?…は?…え゛ぇっ!?」
「なんとか一仕事終わらせた。改めてよろしくな、共犯者様」
震えている様子から察するに何をしたのか理解してくれたみたいだな…
「さーてと、代々木くん!」
ガッと彼の肩を抱く。
「マジでやること目白押し過ぎ!互いに情報交換して構想設計に入ろうぜ」
「ちょっ、痛い!ホントに痛いから、マジで今の先輩は痛いじゃ済まない位ヤバイんだって!」「いいから、いいから」
代々木くんの背を押して無作為に歩を進める。
「色々オハナシしよーぜ。こっちも併せてオハナシしてやるよ。それにちょっと面白い事考えたんだ!でも取り敢えず休憩したいよな…身体は元気でも精神的に疲れたし…【オープン!DualWorld】さ、行こうぜ~」
目の前に半透明の扉が現れ代々木くんにどうぞどうぞと促すが、
「先輩からどうぞ」
「いやキミからどうぞ」
交わる互いの視線とピンと来た顔…
「じゃ俺が!」
「やっぱり僕が!」
「どうぞどうぞw」
なんてじゃれ合いつつ、お供4匹に“着いてこい”と合図を送った。
「ウルスカー、置いてくぞ~。早く来いよ!」
「…はい、お待ちを~、今行きますわー…」
…
俺は最後尾から何もない真っ暗な空間に全員を押し込んで、代々木くんに調整して貰った能力を思う存分奮った。
*To be continued…【MIV-008】
2018/12/26/Wed/12:00-
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