表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/24

第8話

 翌朝、僕はあやうく遅刻するところだった。理由は簡単だ。寝坊したのだ。

 昨夜、タカと別れてから、僕は一人で最初の街ファーストを歩きまわった。NPCたちは本当にいろいろなことを教えてくれた。戦闘方法、レベルが上がったときのポイントについて、スキルとはなにか、街の情報、街の周辺になにがあるか。

 ビースト・オブ・ザ・ゴッドでは、レベルが上がるとポイントがもらえるようだ。そのポイントを体力、知力、攻撃力、防御力、俊敏さ、飛行能力など――もちろん、これらもゲーム内で数値化されている――に自分で振り分けていく。

 ポイントの振り分け方によって、各神獣(しんじゅう)に個性が現れる。それだけではない。振り分けられた内容により、覚える技――この世界では『スキル』と呼ばれていた――も変わってくるのだ。これにより、神獣はプレイヤーの個性を反映した、世界に一体だけの神獣へと成長していく。

 あるNPCは――そのNPCはROCK(ロック)といった――話しかけた僕に、ある依頼をしてきた。自分の神獣が毒におかされしまっているそうなのだ。それを治すのは、街から少し離れた場所に生えているグーフィーという草が必要らしい。他に頼める人がいないので、それを取ってきてほしいと。

 ゲームには、このようなクエストと呼ばれる依頼があるようだ。その依頼を受け、グーフィーを取りにいく際に、モンスターと戦闘になる。戦闘を繰り返すとレベルが上がり、神獣は成長する。クエストを完了するころにはより強くなっていて、また別のクエストを受け――という流れになっている。

 もちろん、クエストを受けるのは自由で強制ではない。クエストを受けずに淡々《たんたん》とモンスターと戦い、レベルを上げてもいいのだ。

 依頼を引き受けると、ROCK(ロック)は神獣の体力の回復の仕方を教えてくれた。神獣は人間とは比べ物にならないぐらい、自然治癒力が優れている。ある程度の傷なら、その場に留まっていれば回復するというのだ。

 僕は早速、グーフィーという草を取りに出かけた。しかし、これがいけなかった。グーフィーが生えている場所は、街からかなり離れていた。モンスターと戦闘を繰り返し、街へ戻るのにたっぷり二時間はかかった。

 結局、僕は昨夜風呂にも入らず、ゲームで夜更かしをしてしまった。その結果、寝坊して遅刻ギリギリになってしまったというわけだ。

 先生とほぼ同時に教室に入ると、タカが待っていた。

「おっす!遅いなぁ、そんなにビースト・オブ・ザ・ゴッドやってたの?レベルいくつになった?」

「あぁ、レベル六。ROCK(ロック)のクエストやってたからさ」

 話しながら周りを見渡すと、クラスメイトはぞろぞろと廊下へと向かっていた。

「今日ってなにかあったっけ?」

「学校集会があるんだって」

 学校集会ほどめんどくさいものはない。学校全体が集まるのでどうしても、時間は長くなる。それに大した話をするわけでもないのだ。僕とタカはしぶしぶ、その列に続いた。

 校庭に出ると、大半が整列をしていた。僕らも慌てて、それにならう。しばらくすると、集会が始まった。

 集会の内容は、やはり大したものではなかった。校長先生の話と、教頭先生の話。今後の学校行事について。そして、風邪が流行っているなどの注意事項。こんな集会やる意味があるんだろうか。

「最後に、生徒会長である藤原正宗ふじわらまさむね君のお話です」

 生徒会長が壇上に立つ。僕は思わず、あくびをしてしまった。ただでさえ寝不足のところに、眠くなるような話を聞かされていたのだ。あくびも仕方ないところだ。しかし、タイミングが悪かった。僕は生徒会長ににらまれたような気がした。

 生徒会長は、真面目が服を着て歩いているようだった。常に真剣な表情を浮かべている。全校生徒の前で話をするのに、ヘラヘラとしているわけにもいかないだろうが。僕は集会での生徒会長しか知らない。普段は笑ったりするのだろうか。 

 生徒会長の話は、学校にゲームを持ってきている人がいるので止めるようにということと、遅刻が多いので気をつけるようにとのことだった。

 僕は学校にサンポウドーPSを持ってきてはいない。が、遅刻に関しては危ういところだ。もしかしたら、みんなビースト・オブ・ザ・ゴッドのせいでゲームを持ってきたり、遅刻が多いのではなかろうか。

 集会も終わり、教室へ戻る。後はいつもと変わらなかった。ただ、早くゲームがしたくて、まったく授業に身が入らなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ