第6話
突然、一体のドラゴンが炎に包まれた。そして、苦しそうな咆哮。ドラゴンの体の上に、千台の数字が現れる。炎が治まると、ドラゴンは姿を消していた。
「なんだ?何がおこったんだ」
「コウ、後ろのドラゴンだ!」
そう言った直後に、もう一体のドラゴンも炎に包まれた。そして、炎とともに姿を消す。
仲間をやられてパニックを起こしていたプレイヤーは、やっと自分を取り戻し後ろを振り返った。
そこには漆黒の龍が漂っていた。東洋の龍なのだろう。蛇のような長い体に手足がついている。頭の二本の角は、血のように真っ赤に染まっていた。角以外は全て漆黒だ。そして、龍の片目には傷があった。
「……独眼龍だ」
タカのつぶやきが聞こえた。どうやらあの龍は独眼龍というらしい。独眼龍の背中には人間が立っている。人間が乗っているのだから、あれはプレイヤーなのだろう。その頭の上は、MASAMUNEという文字が表示されていた。
「なにするんだ!お前もドラゴンなんだから、仲間だろ」
仲間をやられたプレイヤーが食ってかかる。独眼龍のプレイヤーはなにも答えない。代わりに、独眼龍の頭上に『火計』の文字が現れる。そして、独眼龍が炎の玉を吐き出した。
火球はまっすぐにドラゴンへと向かう。ドラゴンは逃げようとしたのか、独眼龍に背中を向けた状態で炎に包まれた。断末魔の叫びと炎が治まると、やはりドラゴンは姿を消していた。
助けてくれたのか、それとも次は僕たちの番か。僕たちの番なら、ほんの少し命が延びたってだけのことだ。独眼龍は、あのドラゴンたちを一撃で消し去るほどの強さを持っているのだ。今のままでは勝ち目はない。玉砕覚悟で攻撃してみようか。
僕たちが様子をうかがっていると、独眼龍は踵を返し、街の方角へと飛び去ってしまった。お礼を言うことすらできなかった。その場には僕たちと三つのアイテム、お金が宙に浮いた状態で残された。