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第1話

 心地よい風が吹いている、小高い丘の上。空はどこまでも澄んでいて、雲一つない。眼下には草原が広がっていた。見渡す限り緑一色。地平線まで草原が続いている。右手に目を移すと、川が流れているのだろうか。太陽の光が乱反射している。

 自分のいる丘には、草花が咲き乱れている。色とりどりの花々は、新しくこの世界へとやってきた自分を歓迎しているかのようだ。風で草花は揺れ、その間をちょうが踊るように舞っていた。

 雲一つない空。心地よい風が吹き、見渡す限りの草原。川はの光を受けて輝き、色とりどりの花々が咲いている。天国が実在するとしたら、こんな感じなのかもしれない。ここは天国なのだろうか。いや、天国とは確実に違っているであろう点が一つだけあった。

 僕のかたわらには、巨大なけものがいた。わしとライオンを合わせたような獣。頭と前足、そして翼は鷲のもので、それより下はライオンの姿をしていた。大きさは人間の五倍はあるだろうか。人間を丸呑みできそうなほど巨大だ。グリフォンと呼ばれている、伝説上の生物だった。

 僕はグリフォンの上に乗っている形になっている。グリフォンは、この世界ヴァースでの僕の相棒だ。ヴァースではグリフォンのような伝説上の生物が数多く存在する。彼らは神獣しんじゅうと呼ばれていた。

 グリフォンの隣には、巨大な魚が宙に浮いていた。これまた人間の五倍はあろうかという大きさだ。巨大な魚の上には、僕の親友が乗っている。そして、先ほどから熱弁を振るっていた。

「――だから、あの川沿いにまっすぐ行くと街があって――おいっ!聞いてるか?」

「聞いてる、聞いてるよ。ただ、やっとこの世界に来れたんだと思ってさ。ちょっと感慨かんがいひたっていたんだよ」

「ああ、そうだよな。おかげでだいぶ待たされたもんな」

 そうなのだ。僕が、正確には僕の分身がこの世界にやって来たのは、ほんの三十分ほど前のことだった。

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