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カフェでモーニングコーヒーを


 翌日の私たちは五時から腹ペコだった。飛行機まで三時間あるが、既に電光掲示板で便の情報は手に入ったし、することは無い。おしゃべりならいくらでもできるが、なんだか色々と不安になってきた。このまま乗ろうとして手続きが未了ですから再見!なんて言われたら帰って身の回りの人々に合わす顔がない。それにゲートも果たして合っているのだろうか。寝床の隣とか話ができすぎなんじゃないか。寝起きで頭が回っていなさそうな小森の隣で、寝起きだけは異常に良い私は、リュックサックを抱きしめていた。

坤丝咖啡という店を発見したのは五時半かそこら。中国語弱者の二人でもなんの店かはわかったのでモーニングにありつこうと駆け込んだ。店内は伽藍の洞。客は一人もいなかったが、入り口間近のテーブルで中年の女性がうなだれていた。東南アジア系の顔立ちで、肌色は濃い茶色。黒いくせっけのある髪は登頂でまとめて結んでいて、耳に数本が枝垂れかかっていた。声をかけると目を軽く見開いて、すぐに穏やかな笑みを浮かべて席へ案内してくれた。しばらくしてメニューとおしぼりを。二人とも同じメニューで、それからコーヒーを余計に頼んだ。メニューが片付けられてから、小森がお金を渡す。昨日の晩御飯は私で、今日の朝ご飯は小森。高額の元を崩すためだった。代金を受け取って、彼女は去っていき、すぐにお釣りとコーヒーが運ばれてきた。どの所作も丁寧で、穏やかに行われた。

 昨晩の二品料理にザーサイが添えられたという具合の見た目だったが、味は違った。スープはほどよく薄く、麺は整えられて浸され、鶏肉は少し辛め、ザーサイは口直しにちょうどいい。満腹になってからコーヒーを一杯――おかわりは無いからもったいぶって。店を出るころにも、雨模様な空に陽の兆しはない。ガラスの外の中国大陸は、まだ眠っていた。すっかり目が覚めた僕らは、口々に言い合う。腹が減ると不安になるもんだね、と。呑気なことを言っていられるのは、なるほどそういうことなのだ。

 立ち去るときに、精いっぱいの中国語を。

おいしかった、ありがとう。またくるね


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