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その3「探偵廃業」

 深淵団が一斉に活動を止めてから数日後、じょじょにではあるが彼らのSNSが更新され始めた。

 それは喜ばしいものではなく、行方不明に伴った捜索願や自殺の知らせといったものだ。彼らがどのような末路をたどったのかはわからないが、喜ばしいものではないのははっきりと読めた。


 そして、深淵団について調べていた俺にもお鉢が回ってきた。

 突如隠れ家に暗黒騎士が押し入り、部屋をめちゃくちゃに荒らしだした。


「俺は何も持っちゃいない。しがない探偵だ」

「そうか、ならなぜあの男の身辺を嗅ぎまわっていた」

「趣味さ」

「趣味か、ならもっと面白いものを嗅いできてもらおうか」


 その暗黒騎士に昏倒され、次に目が覚めた時に目にしたものは――到底考えられないものだった。

 黒い柱とでもいうべきか。人間の構造物では考えられない物体が、じりじりと道路や近隣の建物を飲み込んでいた。


「こいつは運命の日の後に発生したものだ。深淵団を名乗っていたものが住んでいたが、そいつがどうなっているかは不明だ。お前にはそいつを救い出してもらう」


 暗黒騎士が俺の体を闇の中に放り込もうとしている。抵抗したい。だが、縛られているのか全く動けない。体もだいぶん殴られたのか、ひどく痛い。


 まず足の感覚が消えた。次に音が、光が、そして体の感覚が、痛みが消えうせた。そして、俺のからだは、こころは、魂はバラバラになったかのように、分からなくなった。五感すべてが、消えうせたのだ。



 その後のことは覚えてないし、できれば語りたくない。

 ただ、俺は何者かによって救われ、病院で目が覚めた。救い主は名乗り出なかったが、ハンマーを持った妙な男だったらしい。


 こわい、こわくて、俺は探偵家業を辞めた。


 このレポートは懺悔でもある。

 不用意にかぎまわり、そして飯の種にあらゆる人間の咎を食いまわっていた自分のツケを精算したくて書いたものだ。


 それでも、俺の夢の中にはあいつが出てくる。おどろおどろしい声、闇の中でささやく声に、化け物の映像がくっついてくる。


 人々の狂乱に乗じて顔を出した、気まぐれで、恐ろしき深淵。

 それが『トガ』と呼ばれている、深淵のバケモノの正体なのだろう。

・深淵の動画

インターネット上で拡散され続けている呪いの動画。

正体は深淵団が壊滅する全滅に撮影された『トガ』が映り込んだ動画。

この動画をアップすると必ず削除されたり、場合によっては発狂したりするため度胸試しで見るものも多い。


・トガ

「深淵の動画」に現れた深淵の1角。

声は青年のようであり、おぞましい怪物のようである。

彼は動画投稿者を食らい、その意思を組んで彼に従ずるもの――すなわち深淵団を配下に組み入れた。

その性格を読むことはできないが、罪を受け入れる趣旨を口にしていることから「トガ」と呼ばれている。

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