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東方戦士の冒険譚-顕現するは敏捷神- 作者:松脂松明

第一章

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プロローグ

 銀閃が奔る。黒閃が奔る。ぶつかり合う鋼が火花を生むが、黒い大剣の持ち主も銀の槍を投じた者もそれに目を奪われたりはしない。炎も鋼も輝きも栄光も血もそこら中に落ちている。ここは血と泥と汗で作られた戦場なのだから。

「やるな人間の小僧!だが貴様達、東方の戦士は得物を己が魂と定めると聞いたがな?人それぞれというやつか?貴様らの多様性と来たら呆れるばかり!全く退屈せんな!」

 言葉を発する度に黒の輝きが煌く。その流麗な剣技、遥か十手先まで見通した華麗な体捌き。明らかに正式な教育を受けた者だけが持ち得る武技だった。
 黒閃の発生源である緑の肌を持つ巨漢が呵呵と笑う。緑の肌を持つ彼の種族を人間種は“オーク”と呼び蔑む。だが大陸共通語を流暢に話し、その会話の端々から他種族の文化への理解すら覗かせるその姿を見ればそんな固定観念は吹き飛んでしまうだろう。
 それも当然。彼こそはオーク達の英雄にして覇王。彗星のごとく現れた神話の主役じみた存在は当たり前のように文武どちらにおいても比類ない。

「…」

 対する黒髪の青年は無言。瞳まで黒いことを見れば彼が東洋の血を引くことが分かるだろう。先の亜人の英雄の言葉通り、青年は武器を次々に使い捨てていた。槍を持ったかと思えばそれを投じ、足元の剣を拾い斬りかかってくる。時に石つぶてまで放ってくるのだから青年の節操の無さに、オーク王は感心すら覚えていた。なにせその全てにおいて“超”こそ付かないものの一流と言って差し支えない腕前なのだ。これほどに多様な武芸に通じているものは稀だ。

「貴様は実に面白い敵だ!だからこそ惜しい…その面白さ故に貴様は敗北するのだからな。そうら!後が無くなっていくぞ」

 オーク王の言葉通りに青年は徐々に追い込まれていく。オーク王の持つ大剣は神秘の産物。対して東洋の青年が使う武器はそこら中に落ちている雑兵の武具に過ぎないのだ。いかに青年が達人であろうと、そんな粗雑な代物は黒いオーラに包まれた鋼と打ち合えば数合と持ちはしない。得物が破壊される度にできるほんの僅かな隙を、オーク王は見逃さない。

 二人の周囲に雑兵達の姿は既に無い。彼らの一撃は岩を割り、空を切り裂く。そんな怪物の舞踏に好き好んで付き合う者はいない。平凡であるからこそ危機に敏感な兵らは既に距離を置いている。化け物達の共演に参加する資格がある者がいるとすれば…

「おいおい。人の相棒をそんなに虐めてくれるなよ?」

 それはやはり人外の領域にある存在に限られる。荒くれ者とはかくあるべし、とでもいうようなむくつけき大男が両手斧を携えて参戦した。その身には碌な防具も身につけていない。

「飛び入りか。歓迎するぞ…ほう?貴様のその斧、耳にしたことがあるぞ。そうか貴様が“竜殺し”の英雄か!これはこれは!今日はなんという日だ!人間どもの英雄を二人も相手取ることができるとはな!男子の本懐ここに極まる!」
「…ホレス殿」

 初めて東方の戦士は口を開いた。ホレスと呼ばれた男は歯を見せて笑う。オーク王が亜人の英雄ならば彼は人間の英雄。数多の栄誉をほしいままにする生ける伝説にして青年の相棒だった。

「おいソウ。とっととこの暑苦しい緑禿を潰して帰るぞ。こんなくせぇところからはおさらばして久々にサクの飯が食いてぇ」
「ホレス殿も髪は無いではありませんか…ですが同意しますよ。おさく殿ならまず風呂に叩き込むでしょうがね」

 青年…ソウザブにとっては世界の趨勢などどうでも良いことだった。それは彼の相棒たるホレスにしても同様だ。だというのに戦場くんだりまで来て、どう考えても割に合わない強敵と鉾を交える羽目になっている。これでは昔と何も変わらないではないかという思いがソウザブにはあった。
 冒険者として活動をする内に多くの騒動に首を突っ込んだ結果がコレだった。始まりはさて何だったか?ホレスとソウザブがコンビを組んだ日だったか。遡ればキリがない。ソウザブの脳裏に今までの旅路が浮かんだ。
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