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第四章 召喚獣のざんねんな帰還。〈6〉

挿絵(By みてみん)


「ガ~ッハッハッハッ!」


 超巨大なドラゴンが鎌首を天にもたげて哄笑(こうしょう)した。


(なんじゃ、このゆかいなたわけは!?)


 笑いをとりにいったつもりのないオレは意味がわからず、ひたすら平身低頭をつづける。


(もうよい。頭を上げよ、たわけが)


 おそるおそる頭を上げると、全身からあわい光を放つ超巨大な6枚翼のドラゴンがオレを睥睨(へいげい)していた。F級召喚獣(フェアモン)サンドロバルバドスの3倍はあろうかと云う巨大さである。


(きさま、ただの召喚獣(フェアモン)ではないな?)


召喚獣(フェアモン)の姿をしておりますが、正体は異世界の人間です)


(異世界の人間……?)


 いぶかしむ正体不明の神獣へオレは人間(アース)召喚獣(フェアモン)のことやこれまでの経緯を説明した。


(ところで、あなたさまは一体……?)


 オレも正体不明の神獣へたずねると、神獣もあっさりこたえてくれた。


(わが名は神獣グラコロアリスドラゴン。かつてグラスゴルレリウス帝の双竜として名を()せたものだ)


〈双竜帝〉グラスゴルレリウスの神獣!? 2体の神獣を使役したと云うグラゴードリス皇国初代皇帝の伝説が真実だったなんて!


(伝説の神獣がどうしてこんなところに?)


(グラスゴルレリウスの子どもたちは1体の神獣と契約するだけで精一杯だったからな)


 それはわかる。しかし、神獣がだれとも契約せず放置されていると云うことは、安全装置(セーフティ・ロック)のない状態で核ミサイルを放置しているようなものだ。


(あなたさまもふつうの神獣ではありませんよね?)


(バカていねいな言葉づかいはやめんか、たわけが。われのことはグラコロでよい)


 神獣グラコロアリスドラゴンは自分の名前をおいしそうに省略すると衝撃の告白をした。


(われも元は人間じゃ。グラスゴルレリウス帝の妹だったのだよ)


 神獣グラコロさんはオレたちとおなじ人間召喚獣(アースフェアモン)だ。厳密にはまりるとおなじ召喚人獣(フェアビースト)と云ってよい。


 キルリーク大陸が3国に平定されるまでの動乱期、召喚獣戦闘(フェアモン・バトル)召喚獣(フェアモン)召喚獣(フェアモン)を殺し、召喚師を殺しあう文字通りの戦争だった。グラスゴルレリウス帝の妹・グラコロアリスはそんな戦争の最中に瀕死(ひんし)の重傷を負う。


 死を待つよりほかない状況で、たったひとつだけ彼女の命を救う方法があった。彼女を召喚獣(フェアモン)にすることである。いまや失われた外法(げほう)であり、グラゴダダンですらその外法(げほう)をよみがえらせてはいないが、彼女は自らの意志をもってその選択をした。


召喚獣(フェアモン)となればふたたび人へもどる(すべ)はなかったが、われはなんとしても生きて兄さまの建国の手助けをしたかった)


 G級召喚獣(フェアモン)グラコロアリスドラゴンへと転生した彼女は戦いの中で進化し、やがて神獣になった。グラゴードリス皇国初代皇帝グラスゴルレリウスの退位とともにひっそりとこの地へもぐったそうだ。


(あんたともう少しはやく会いたかったよ、グラコロさん。アレストリーナ姫が生きてさえいれば……)


 思わずすすり泣くオレへ神獣グラコロさんがこともなげに云った。


(だから生きとると云うに、このたわけが)


(ええっ!? いやだって息してないし……!)


(あれは仮死状態だ。われが落ちてきたふたりの時間をとめた。枕元に人の死体があっては気もち悪いからな。人間相手に魔法をつかうのはひさしぶりなので、ちょいと加減がわからなかった。それに姫が死んでいたら、きさまは強制的に帰還(リターン)されているはずだろう?)


 云われてみれば、たしかにそうだ。


(どうしたら、アレストリーナ姫たちは生きかえる!?)


(てきとうなショックとかあたえてやればいいのではないか?)


 神獣グラコロさんのいいかげんな言動に頭をかかえていると、それを見かねた神獣グラコロさんがいきなりオレを指ではじいた。地面を転がりながらうしろへふっとんだオレの身体がなにかにぶつかった。


 なんだここ!? せまいし暗いし、でも妙にやわらかくてあったかい……? パニクってじたばたもがいていたら、耳をつんざく悲鳴が聞こえた。


「きゃああああ!? スカートの中になんかいるっちゃ!」


 ……は? スカートの中? 言葉の意味を吟味(ぎんみ)していると、今度はいきなり蹴りとばされた。


「ぷきゃん!」


 とりあえずひろいところへでたと思ったら、アレストリーナ姫が鬼の形相でオレを睥睨(へいげい)していた。北斗真拳伝承者みたいな殺気をはなちながらバキバキベキボリッ! と首や指の骨を鳴らしてじわりじわりと間あいをつめる。


 いつの間にか目をさましたまりるもアレストリーナ姫の背後から冷たい視線をおくっていた。ふたりが無事でホッとしたけど、なぜにオレの命が風前の灯火(ともしび)!?


「……カオル。あんたウチが気絶している間に、なにえっちいことしてくれようとしたっちゃ? ケモノけ? 身も心もケモノけ?」


 オレはあとずさりながら何度も小さく(かぶり)をふった。ちがいます。誤解なんです。別にわざとアレストリーナ姫のおまたへ頭をつっこんでぐりぐりしたわけじゃございません。

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