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プロローグ

 そこはアザファルトと言う世界。

 この世界には剣も魔法も存在し、そして魔王と勇者も存在した。



 そんな世界で俺は勇者召喚という奴で勇者として召喚された。

 最高の出会いとか仲間とのどんちゃん騒ぎとかパーティーの女の子といい仲になるとか、そんな事は一切なく。皆常に真剣な表情で魔王撃破の為に全力を尽くしていた。

 血なまぐさい毎日、魔物倒して、魔物倒して、偶に盗賊、また魔物倒して、そんな毎日。

 そんな俺たちの心の中にあるのは「いつか魔王を倒す!」だけだった。


 そして、遂にその時はやってきた。


 俺の聖剣が対峙する魔王の心の蔵を貫く瞬間が。






「って、夢見たんだよ」

「ふーん」


 己の夢(?)を熱弁していた俺は親友の素っ気ない相づちに肩を落とす。


「ふーんはないんじゃないか? こんなにも熱く語っているのに」

「だってそれ、夢なんだろ?」

「まあそうなんだけどね」



 日本のどこにでもありそうな普通の高校。その二年生のクラスで俺――天霧新太あまぎりあらたと親友のまことは自分の席に座りながら話していた。真の席の後ろに俺の席があって、真が俺の方を向いて座っている状態だ。

 夢の話を放っておいて真は新しい話題を転換する。


「な、そんなことよりお前進路とかどうすんだよ?」

「ん? まだ二年になったばかりだろう。そんなこと何も考えていないよ」


 つい昨日のようにこの高校に入学してきた時の情景が思い出される。これほど時間が経つのは早かっただろうか。いや違う、俺が長く生きすぎたんだな。

 二年前、高校受験真っ只中のあの日俺はアザファルトと言う世界に召喚された。そして十年という歳月を過ごしてようやく魔王を打破できた俺はこの世界に帰還したのだ。帰還した際に元の世界では一切時間が経っていないという事に気がついて焦って受験勉強をしたのはいい思い出だ。


 帰還というより強制だけどね。


 十年もあの世界に過ごせばさすがに愛着が湧くというものだ、魔王討伐後俺は永住を決断しようとしたその時、俺を召喚した国の王が俺を強制帰還させた。

 あの糞ジジィ「帰還の方法はない。魔王が持つ魔道書に記載されている」とか言っておいて普通に帰還させたからな。それに帰還方法ないのに魔法の魔道書に記載されているという矛盾。これにはもう呆れるしかなかった。


 帰還して早二年、今でも思う



 帰りたいと



 あの世界が自分の住むべき世界だと何となく感じた。

 その思いは二年では覚めることなくただただ熱くなる一方だった。

 そして俺は遂に見つけた。あの世界に帰る方法を。




 放課後学校の屋上にて、俺はあの世界に帰るべくゲートの魔方陣を描いていた。

 半径二メートル程の円状の魔方陣の中には向こうで使われているアジル語がびっしりと書かれている。


 魔力の存在概念が無いこの世界で向こうで培った自分の魔力を感じ取る作業がうまくいき、俺はこの計画を思いついた。


「よしっ! 完成」


 魔力を纏わせていたチョークをポイと捨て、魔法陣に残り少ない魔力を流す。瞬間、魔方陣から光の柱が立つように光り始めた。どうやら成功したらしい。

 俺は大きくガッツポーズを取ったあと、学校のカバンや部活用のバックに入れていた着替えやスマートフォンなどを最後に確認した。忘れ物が無いと確認できた俺は遂に魔法陣に足を踏み入れた。


 魔法陣の中に荷物も収まるように入ると、魔法陣の光はより一層強くなる。


「さようなら、現実世界」


 俺は最後にそう言い残して異世界へと旅立った。

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