精神の減少
真っ白な部屋に、真っ黒な少年が1人佇んでいる。
僕は、テーブルの上にあるノートをこっそりと覗いた。
其処は真っ白。白紙だ。
ふと思い出す、このページには名前がないのだ。
すぐに視線をノートから外す、と、少年が言った。
「ねぇ、真っ白でしょう?コレは君のせいだよ?」
「・・・・ふーん、何で僕のせい?」
そう言ってやると相手はクツクツと笑い出す。
まるで人形と遊んでるかのように。
これは”馬鹿にしてる”という意味だ。
「このノートは君の物語の本になるから、でもまだ君は動いていないんだ。」
意味が分からない、とでも言うような反応を取ったら相手は微笑んで言った。
「分からない?そんな事はない、君の本能に聞いてみるがいい。全ては君の中にある。早く覚醒して僕らの世界を作ってくれ。大丈夫、恐れる事など何もない。ただただ進んでいけば必ず扉は拓く。」
「扉?覚醒?何を言ってるんだ?」
瞬間、足元がぐらつく。床が崩れていった。
「うわぁぁああ!!」
「また逢う時は、きっと何もかもが歪んだ時。大丈夫、大丈夫だから、恐れてはいけない。けして。」
微かに、堕ちる瞬間、あいつの声が聞こえたような気がした。
「またね、名前。」
ああ、堕ちていく、怖い?怖いよ物凄く。でも恐れてはいないよ。
ゆっくりと目を開ける。すると其処にはリオの心配そうな顔が在った。
「あ、大丈夫か?」
「・・・うん、と、僕どうしちゃったの?」
「あ?覚えてねぇーの?・・・お前さっき突然この部屋の前でぶっ倒れたんだよ。」
「倒れた・・・?」
おかしい、倒れた記憶なんてない。
もしかしてさっきまでのは夢だったのか?
でも、何処からが現実で、何処までが夢だったのか・・・・。
「ねぇ、リオ、僕の名前は何だっけ?」
「あ?そのまんまだろ?」
「ナゼン、それが僕の名前なんだよ。」
そう、僕の名前は名前。
漢字は同じでも読み方が違う。
僕は”名前の無い物を見ると精神が歪む”体質らしい。
だから、ソレを制御する為にこのトルクをつけている。
ただ、何となくでこの世を消し去ってしまいそうな自分の体質は、はっきり言って怖い。
でも、今は怖くもない。それほど≪精神を削られた≫のだ。
僕にとっての要らない世界はこんな体質のある世界の事をいうんだ。