名前
中はそんなに汚くは無い。
だがとてつもなくほこりがまっている。
ここは玄関の突き当たりの・・・・多分ホール、そしてその真ん中には、大きな階段があった。
「此処を上がるの?」
「ああ、だが気をつけろ、”奴らはもう其処に居る”」
「・・・・・本当に?じゃあ急がないとね。」
そう言うとリオは心底からため息を吐いた。
リオのことだからきっと絶望したんだろう。
何に?僕に。
「おまえな〜、もっとこう・・・危機感というものを覚えた方がいいぞ、少なからずともこの先必要な時が来るからな。それより、あれもってきたんだろ?早くそれつけろ。」
あれとは・・・・・まぁ、簡潔に言うと”力制御用具”だ。
リオの場合は”ピアス”、
僕の場合は”トルク”である。
コレをつけると首の部分に痣ができるから、着けなくて良いなら成るべく着けたくない。
けど、奴らが居るなら着けなくては・・・・ね。
「はいはい・・・・・・・・・っと、着けた。じゃあ行こ。」
「ん。・・・・ん?お前変えたのか?ソレ」
「ああ、コレね。実は前のやつ制御がきかなくなっちゃってさ、そのまま”やっちゃう”ところだったんだよね。だから新しい、しかもとても性能の良いやつ、特注でハヤレさんに頼んじゃった。それに、値下げしてもらった。」
「ったく!気をつけろよ?お前のその体質は、色々と面倒なんだから・・・。ってか、俺も今度頼んでみようかな〜・・・ハヤレさん今日”ナイトトゥーン”に居るかな?」
「あ、残念。ハヤレさん余計な事しない人だから、壊れでもしなきゃ作ってくれないよ。」
「まぁ、そうだけどね。」
階段を上る。其処はたくさんほこりが溜まっていた。
2階の奥に進んでいく。僕はリオの後について行った。
ふと、異常に気になる部屋のドアが有った。
リオはどんどん進んでいく。僕は止まってその部屋の前で留まる。
なんだろうこの感じ・・・どっかでコレと同じパターン無かったっけ?
僕は思い切ってゆっくりと、中を確認するようにドアを開けた。
其処には、真っ白な家具、壁紙、床、そしてカーテン。
そう、白一色。
其処にテレビとか生活用品はそんな無く、ただテーブルの上にノートと鉛筆が置いてある。
正直、今の僕に白は目に悪い。
窓が開いていたので近寄ってみる事にした。
カーテンが揺れる、其処に同い年くらいの、真っ黒な簡素な服を着て目を黒い包帯で隠した少年が立っている。
その少年が僕を見て言った。
「初めまして・・・いや、お久しぶりですね、名前」
にこりと、僕の名前を呼んで、さも、この再開がとても嬉しいとでも言うようにに笑う。