修羅の世へ
ガキンッ!
「なっ!?」
「おお。」
今、男の攻撃を受け止めたのはナゼンではない
そこに1人の少女が、片手に太くでかい剣一本軽々と持ち、男の攻撃を受け止めている
さすが・・・・とでも言っておこうか
「・・・・・・・まず、あなたたちの今日の目的は”ナゼンを捕らえる事”ではない。即刻、速やかに退散して。」
「・・・っ、くそっ!行くぞ、魔緒!」
「・・・・(コクン)」
シュルンッ!と素早く消える
奴らにとって命令は”絶対”。それと同時に、下してもいない事を勝手にやる事は禁句領域に入っていくだろう。
そこらへん、話の分かるやつらでよかった。きっと上の立場の奴らだろう。
さて、肝心なのはここから
先ほど助けてくれた少女は、僕が殺したオルガをジッと無表情で凝視していた
「さっきは助けてくれてありがとうね、”ウジナ”。」
「・・・・・いえ。それに君ならあんな奴等ぐらい1発で仕留めてたのは分かる。分かったからこそ私が助けたの。」
「それは・・・・どういう意味?」
彼女はシュルッと剣を自分の腕の中に埋め込んでいく
そして一言
「奴らはまだ殺しちゃいけないって事。」
「・・・・・・・なんで?そんな邪魔な奴ら片っ端から殺しちゃえば良いのに。」
「私も出来ればそうしたい、けど、まだ駄目。」
何か、今から訪れる未来を見透かしているような瞳
きっと彼女は何らかの未来を予知してるに違いない
「ねぇ、ナゼンは次、何処へ行くつもり?」
「え?ああ、次は”螺旋都”へ行くんだ。そこにちょっと用があるんでね。」
「そう、・・・・・私もついてっていいかな?」
何を言い出すんだこの女
もちろん僕は嫌だ、孤独が好きだから。
でも・・・――なんなんだこの気持ち・・・・。
おかしい、おかしいよ・・・・なんでこうも彼女は”懐かしい”んだ・・・・。
断る事も理由もないから、別にいいかな
「ん、いいよ。ただ、僕の邪魔だけはしないでね?」
「分かってるって、君こそ私の邪魔はしないでよね。」
はは、生意気!そう笑うと彼女も微笑んだ。
心から微笑んだような気がした。僕も、久しぶりに本気で笑えたような気がした。
不覚にもさっきのウジナの微笑みに一瞬ドキッとしてしまった
感情はまだ少し残ってたんだね。
夕闇ふる街並みに
1人佇む少年たちの
美しき幻想的な死の交響曲
強者よ修羅の世へ