思考の線
今、僕が居るのは”デイタウン”。
ここは体質者が約1万人いる、世界で3番目の”恵まれてる街”。
そもそも体質者は凡人から見て神様的存在。だから特別扱いされてる事もある。
僕もその内の1人だ。なんせ体質者だからね。
それもランクA、いい立場にある。でも、今の僕には感情が無いと言ってもいいくらい。
だから、ランクBになっちゃったかもしれない。
故に行動しやすい。
まだこの街には僕の情報が入ってないらしい。
だが、あちら側も馬鹿じゃない、何か作戦を練ってるに違いない。
特に、ヨクは侮れない。あいつは僕の中のベスト10入りしているからね。
でも所詮はただの体質者、そうやすやすとこの僕が捕まる訳が無い。
それよりも今の問題は”奴ら”だ。
奴ら、『クルエ同盟』。あいつらの幹部は結構消した方だ。
だけど、まだ上官を見てない。
あの、コモとか言う女はたいして強くなかった。
なのに何であんなにオーラがすごかった?
多分、それは奴らの”属性”
特別な存在が集まった・・・・・・・・・なるほど。
だから”同盟”ね。『狂え同盟』
狂ってるんだ、きっと。
「あれ?どうしたの?」
いつの間にか日が沈み、あたりは夕闇に包まれる。
僕のまえに1人の女性が心配そうなおもむきで聞いてくる。
それに笑顔で対応する。
「えっ、あ、もうこんな時間でしたか。すいません、少しぼんやりしてたんです。」
「そうなの?なら、よかった。ボクは今から帰るの?大丈夫?」
「あ、あの・・・・・それが、僕、親に虐待されてて・・・・・、だから、逃げてきたんです・・・・・。」
「まぁ!そうなの?可哀想に・・・・・。今日はうちに泊まっていきなさいな。」
かかったね・・・・・。
ニヤリと、口角が上がりそうなのをグッと堪え、僕は驚きの表情を作り出す。
「えっ!悪いですよ、そんな・・・・。」
「いいのよ、困った時はお互い様でしょう?」
どいつもこいつも、同じ。
同じ事しか言ってこない人間たちに僕もそろそろ幻滅した。
面白くないよ。もっと僕を楽しませてよ。
「あ、有り難うございます・・・・。じゃぁ、お言葉に甘えさせていただきます・・・・・。」
「ええ!でも、そんなかしこまらないで?私の”名前”はオルガ。宜しくね?」
「はい!僕の”名前”は『ゼナ』です。こちらこそ宜しくお願いします。」
”ナゼン”という名は隠して、ひっそりと旅をする。
僕、面白くない事に興味なんか無いから、
せめていい声で嘆いてよね。オルガさん。
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今日も月が綺麗だよ。
君は生きてるんでしょう?”リオ”。
嬉しい?わかんない。
ごめんね、僕、感情が無くなってきちゃった・・・・
でも、生きててくれて”ありがとう”。
君だけは、大切にしたいから、殺さないから、
いつか、会って話をしたいな。
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頭の中でムズムズと痒みがする
ブチッと、何かが切れた。
あぁ、思考の線が切れた。
どんどん僕が無くなっていく・・・・・その前に、
君に会いたいな・・・・。