魔と神
「ったく、お前って奴は・・・、いいか?もう寝たりするんじゃねぇぞ!今度やったら本当に成績下げるからな!!」
「はいっ!もうしません〜〜。」
「よろしい、もう帰っていいぞ。じゃあな。」
「はい、さようなら・・・。」
ああ!!怖かった・・・(ブルブル
なんだってあの人はあんな怒るんだよ!!
もう!ちょっと居眠りしたくらいでサ!
はぁ、もうこんな時間か・・・
あたりはもうオレンジ色で、世間的に言えば夕時だ。
黄昏・・・、私には黄昏がなんなのかいまいち分からない。
いろんな事を考えながら、歩いていると今日の授業中の夢を思い出す。
「あの男の子最後なんて言ったのかな・・?君は・・・・」
「君は僕に似てる、だよ。」
ばっっ!!
突然後から声が聞こえた。
何だか、夢の中で聞いた声のような、それ以前に昔から知っていたような・・そんな声。
吃驚して後を向いた。
そこには1人の少年が立っていた。
周りには誰も居ない。ただ、夕日が私たちを照りつける。
「アナタ・・何?」
「僕?僕はねぇ〜ん〜人間・・かな?」
「違う!名前を聞いているの!!」
なんだこの少年は・・・
自分が人間だと言うのに戸惑ったぞ・・・。
ほんと、狂ってる。
「名前・・・?なまえねぇ・・。」
「な、何!?」
彼があまりにも私を見てくるものだから戸惑ってしまう・・・。
それも目が笑ってない。
「ねぇ、君は名前の存在意味を分かってる?分かって使ってるの?」
「え、はぁ?そ、そんなの名前が無きゃ誰が誰だか分かんなくなっちゃうからじゃ無いの!?」
「違うね、名前は親と言う生き物が勝手に子供に押し付けるある一種の願い事さ。それで満足する者も、しない者も、一生それに縛り付けられる。だけどその名前で運命が変わる事だって有る。」
「何・・?」
ふっと彼が笑う。まるで獲物を見つけたオオカミのように・・・・。
「名前は、その時点で神と魔に分かれるのさ。それの基準はどっちかが気に入るか、いらないかだ。
でもたまに、どちらも召さない名前がある。そいつの事を”魔神”と言うんだ。」
「魔神・・?魔の神・・?」
「そう。魔神は、神か魔にその”名前”を送る仕事をするんだ。向かいに行き、連れて行く。
まさに”死神と同じ役目だね?」
ゴクリ・・・
やばい・・・この人は違う。
なんだろう、嫌な予感が止まらない・・・。
「・・・・だからね?僕は、今日仕事をしに来たんだ。」
「あ、アナタの・・・名前は・・・?」
「僕?ああ、そういえば教えて無かったね?僕の名前は『名前』、今宵も名前を迎えに来た。」
「!!!?あな・・たが、ナゼン・・?」
「うん。そういう君はルエだね。初めまして。・・・そして、久しぶり。」
ニコッと彼は笑って私の名前を言った。
「どうして私の名前・・・それに久しぶりって・・・」
「大丈夫、君はまだ選ばれてないから。選ばれたのは、君のお友達さんだよ。」
え・・・。
ハッとして私はナゼンの顔を見る
彼は笑っていて、楽しそうに私を見ていた。
そして、彼の手は赤で濡れている。
とても綺麗な赤で。
いつの間にか夕日は沈んで、辺りが暗闇に溶け込んでいた。