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到着―商業国家メディクト―

書くの楽しい

僕たちがこのボロ小屋を出発したのはあの一件から丸一日がたってからだった。アイシアが言うには魔力の残滓は感じるものの召喚自体は終了しているのでもう安全と言っていたが僕としては二度も襲われた以上警戒してしかるべきだと主張し一日時間をおくことにした。

しかし、その一日でこの世界の魔法という側面に触れられたことに僕は感謝している。

アイシアの提案でこの世界の簡単な魔法を教えてもらうことになったのだがこの世界では幼少時から厳しい訓練を行わないと魔法を扱うことは難しく僕にはどれも扱うことはできなかった。

簡単な火属性の魔法を教わったのだが、せいぜい指先があったかくなる程度でとても魔法とは言えなかった。

アイシアはそれだけできれば上出来ですよと言われたがどうも納得できない。一部、古代魔装具アーティファクトや魔性石とよばれるものの力を借りればだれでも魔法を使うことができるらしく、彼女の杖は超一級のアーティファクトだと言われ貸してくれと頼んだら丁重に断られた。なんでも師匠さんの形見でできれば手放したくないそうだ。

護衛のお礼を頼まれたときに杖すら手放そうとしてたってことはそれだけ切羽詰まってたってことなんだろうか……アイシアの性格を考えるとありえそうだから困る。


夜が明けて、小屋を後にする。

正直まだ休んでいたかったがアイシアは大丈夫だと言ってきかないし僕としても早くこの大事なものを手放したい気持ちがあったため早朝から出発した。

しばらく、開けた道を進んでいくと荷馬車らしいものが通ったのでアイシアが銀貨二枚で乗せていってもらえることになった。


「へーあんた達アルラスカからわざわざここまで……御苦労なこったねー」


一緒に荷馬車に乗っていた奥さんらしきおばさんに世間話ついでに根掘り葉ほりアイシアが聞かれていた。

あの村ほどじゃないがやはり僕の格好はかなり怪しいらしくご主人も最初は乗せるのを嫌がったが銀貨二枚で手を打った。


「そうなんですよ、しかもお忍びなんで馬車や馬も出せなくて……大変でしたよ」


アイシアは笑いながら言っているが言っていい内容なのかひやひやする。

たぶんおばさんの反応から冗談だと思われているようだから大丈夫そうだが……


「でも、アルラスカへつながる橋が落ちたんでしょ?しばらく国へ戻れないんじゃないの」


おばさんは心配そうにアイシアに聞くがアイシア自身はあんまり危機感がないようで。それなら寄り道して帰るので平気です。なんて言って笑っている。正直国へ戻れなければ僕はいったいどうしたらいいのだ。

そんな話を長々と続けているとあっという間に目的地のメディクト王国の関所へとついた、ご主人が通行証を提示して兵士が荷台を確認する。


「身分証をだせ」


兵士が冷たく吐き捨てるようにいう、僕はアイシアに耳打ちすると「まかせてください」となにやら自身ありげに兵士に身分証と通行証を見せる。

すると兵士の態度が急変し「申し訳ありませんでした、国家魔導師様になんてご無礼を」なんて頭を下げ始めた、ますますアイシアがどれだけすごいのかを実感してきた。

そしてお約束通り「そこの怪しい奴はなんだ!?」と言われるがアイシアが軽く説明すると「これは失礼を……通せ!」と何事もなく進んだ。

「へーあんた達すごい偉い人だったんだねー」なんておばさんに言われたが苦笑いで僕は返しておいた。


関所から門をくぐりぬけるとそこにはまるでおとぎ話のような西洋風城下町が広がっていた。それはゲームやアニメなんかとくらべものにならないほどの熱気と活気に充ち溢れ人が躍動していた。

僕は圧倒されながらも王宮への道を馬車にゆられていった。


「アルラスカ王国よりの使者の到着です!」と大げさに装飾された扉、というよりも門に近いものが開けられる、そこに広がるのは一面を宝石と金で装飾された大広間と自身の肖像画が飾られた玉座、それに派手派手な照明器具に天井一面の絵画、まるでむかしの欧州の王族が暮らしていたような一室をさらに派手にしたような場所だった。

王の前に通されると事前にアイシアに言われていたようにアルラスカ流のお辞儀をし、アイシアが口を開く。


「アルラスカ王国より使者で参りましたアルラスカ王国所属宮廷第一魔導師アイシア・ケルターと申します、本日は急な謁見にも関わらずこのようにお目通りいただいたことに感謝いたします」


いつものアイシアとはまるで別人のように話している姿はまるで王宮に仕えるものみたいだったがよく考えたらアイシアはかなりえらい地位の人間であることは明白だった。


「うむ、話は聞いているぞさっそくアルラスカの証明と文章を拝見したい」


大層な髭を蓄えたおっさんが偉そうに喋っていることにはもう驚けそうもなかった、ここまでべたべただとここがもしかして過去の地球かと思えてくる。人間の想像力は罪深い。

王様の使いの人が僕の持っている手紙と短剣を受け取るとそのまま王様のもとへと届けた。

王様は剣を撫でるように見回すと二度、三度頷き今度は手紙を開き手紙を読み始めた手紙を読み終えると「やはりか……」と言って手紙から目線を上げた。


「アルラスカの意向はわかった、こちらも概ね同じ意見だ。すぐに返信を書いてそなたたちに届けてもらいたいところだがなにぶんこのところ変わった事件が多い、橋も落ちていることだ。しばらくこの国に滞在するとよい。部屋はこちらで用意しよう、それと……」


そう言って王様が手を叩くと先ほどの使いの人が僕たちにカードを二枚手渡した。


「それはこの国の滞在許可証と身分の証明書だ。それを持っていればこの国でもアルラスカと同等の扱いを受けることができる。くれぐれもなくさぬように」


「ありがたき幸せです、サンドラス王」


あらかじめ用意されていたセリフを僕が言うと王様、もといサンドラス・ケイト・メディクト王は満足したように下がれとジェスチャーした。

僕たちは言われるままにその無駄に派手な広間を後にした。

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