逃走ー巨大な悪魔の出現ー
うわー場面描写がぐちゃぐちゃになりました。気にする方はすみません、気にしない方もお見苦しくてすみません。
謎の襲撃からしばらく立って、ようやく沈黙の森を抜けた・・・あの攻撃がなんだったのか思考を巡らせてみたがこの世界に疎い僕では考え着くはずもなく、アイシアに聞いてみても心当たりはないという。
仕方がないが、心の片隅において置き先を急ぐと森を抜けた先には綺麗な平原が広がっていた。
「おお!」
思わず歓喜の声を上げる、都会暮らしが長いせいかこう言った景色はとても感動する。アイシアは見慣れているせいか、僕の反応にキョトンとしている。
当たりは背高草にかこまれ、一面には色とりどりの花畑、青々とした木々が立ち並びとても心地いい風が吹いている。
いろいろなことが起こりすぎた僕の心を癒してくれる、そんな感じがした。
「とてもいいところだね。ここは」
僕がそういうとアイシアは黙って聞いているがどうも様子が変だ。
真剣な眼差しで平原の中央付近をものすごい表情で凝視している。
アイシアとの付き合いは短いがこんなに感情が分かりやすい人間もそういない。(別にけなしているつもり出はない)
「アイシア?どうしたのーーー」
一体何があるのか気になって彼女に聞いてみるが反応は返ってこない。
ひたすら身を強張らせて震えている、まるで何かに怯えるように。
その刹那、空間が震え当たりに地響きが走る。
「しょ、召喚魔法!?」
アイシアが甲高い声で叫ぶ、次の瞬間には僕はアイシアに手を引かれ走り出していた。彼女が震えていた原因はこれだと直感で分かった。
後ろでは大きな雄叫びが当たりを奮わせた。
「ダイチさん、走って!」
アイシアが叫ぶ、僕も力いっぱい地を蹴り飛ばす。
二人して森の中へと逃げ込むとアイシアが僕に耳打ちしてきた。
「ダイチさん、私が気を引きますからその間にこの手紙と短剣をもってメディクトまで言ってください、おそらくこの平原の先に逃げ込めれば何とかなるはずです」
「なにいってるんだ、そんなことしたらアイシアが無事じゃ済まないよ!」
アイシアは僕の声を無視して「頼みます」と言い残し森を飛び出した。
確かにあんな化け物に勝てるはずがないし、僕が出て行ったところで足を引っ張るだけだ・・・
ここはアイシアに言われたとおりにしたほうがいいはず。
僕は渡されたものをポケットにしまい、平原の淵に沿って走り出した。
中央を見ると巨大な鹿のお化けみたいなものと対峙するアイシアがみえる。
自分より何十倍も大きなものを前にしてもあれだけの勇気を出せるなんて僕には真似できないだろう。
僕は正面に視線を戻し、全力で駆け抜けた。
ダイチさんは逃げれましたでしょうか・・・
たとえここで力尽きたとしても手紙さえ届ければ私の役目は終わりです。
敵がどういう狙いか分かりませんがおそらくディアヴァルによる悪魔召喚の一種ですね、アースガル全体を混沌に陥れようとしている噂はたぶん事実なのでしょう。
このことが人族の間でひろまれば対策されることは明白・・・魔族は各管轄から狙われるはずだからこんなことを。
一人は心細いですがダイチさんを巻き込むわけには行かないです。ここは第一魔導師としての意地をみせなければなりません。
お母様、お師匠様・・・ふがいない娘をお許しください。
アイシアが覚悟を決めると同時に化け物はその巨体相応しい大きな棒をアイシア目掛け振り下ろした。
瞬間大きな音を立てて棒がなにか薄い膜状のものに防がれた。
「火の精霊よ、大地を焼き付くし命を滅する、火矢となりて降り注げ!「メテオ」」
アイシアの声が空気を奮わせる、小さな魔力の粒はアイシアを通して黒雲を呼び起こし大きな空を真っ黒に染め上げる。
その刹那、空から無数の火の玉が化け物目掛けて降り注ぐ。
化け物は攻撃の手を緩め、見を守ろうと両手を使って防御をするが、火の玉は化け物の腕を焼き胴体や足腰を無慈悲に焼き焦がす。
その猛攻に、思わず苦しみの声を上げる。
アイシアはその隙に化け物の足元を駆け抜けて後ろに前割り込む。
「プロテクト!」
彼女の声に呼応するように杖が輝き、化け物の両足に輪のようなものが何重にも現れまるで空間に固定するかのように化け物を拘束する。
次は胴体へ、両腕、そして首を次々に拘束する、化け物もその強固な輪に抵抗するがなかなか外せない。
「はぁはぁ・・・」
やった。アイシアは心の中で小さく叫んだ、空が青く戻る頃には化け物も抵抗を緩めていた。自分がここまでやれたことに正直驚きながらも、震える手足を押さえようと必死に生きを整えた。
そんなに長くは持たないと頭では分かっているのだがなかなか体が動かない。
それもそうだろう、魔導師として一番と言っていいほどの技を出すと同時に一番強固な守備魔法、そして一番頑丈な拘束魔法をほぼ同時と言っていいほど繰り出したのだから、普通なら気を失うレベルの攻撃である。師匠から譲受けた杖の助けがあったとはいえアイシアはとっくに限界を超えていた。
化け物が再び暴れ出した、そろそろ拘束が限界を迎えたのだろう。
薄れ行く意識の中で師匠の声が聞こえた気がした。
「アイシア・・・」
優しくもしっかり透った声、懐かしい響きに耳を寄せながら最後の声を聞いて、アイシアの意識は途切れた。
「か、担いでも怒られないかとりあえず急いで逃げよう」
聞き慣れ始めたダイチの声が聞こえた気がした。
改めて見返すと空間開けないほうがいいのかな。