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女神―理解できぬ世界―

頭の中に声が響いた、そして辺りが震える。

僕は事態が飲み込めないが今それどころじゃない、アイシアの部屋に走る。

こんな現象は実はなんどもあった、僕が来てから徐々に増えた現象……

この世界の人間はこの現象を終焉ラグナロクと呼んでいる。

そしてまさに今僕の身に起こっていることはそのラグナロクでまちがいない……まさか調べ続けてきた現象のヒントが意思をもったなにかなら説明がつく……


「アイシア!」


慌てて部屋に駆け込む


「義父さん……」


エリが心配そうにこちらを見ている、僕はエリとアイシアを抱きしめる。

地響きが本格的に酷くなってきた。

もうすぐ、この空間から人が消える……王宮の何人かは巻き込まれてしまうだろうが、それも仕方がない問題はどこにおくられるかだ、もし都心の中心に送られれば警察の厄介になってしまう。

あっちじゃ魔法は使えないはずだ……

視界が白くなる。

白一色の世界がそこにあった。

しかし、良く見ると白の中に黒い煙のようなものが浮かんでいるのが見える、だんだんとその煙は人のような形へと変化していく。

だが、鮮明に写らないぼやけている、かろうじて分かるのは髪が長いことぐらいだろうか……


「見つけた……迷い人よ」


煙が声を放つ……いや頭に直接語りかけてきたのか、僕が巻き込まれる前に聞いた女性の声に似ている……


「世界救済のために……元の時代に送り戻そう」


なっ……いまさら何を……


「貴様は世界救済の邪魔なのだ」


僕が邪魔……?


「な、なにをいっているんだ」


「……」


理解できない言葉を吐いて、煙は消えた。

また白い世界、だがその白は急に強くなり思わず目を閉じる。




なつかしい臭いが鼻を刺激する、排気ガスの臭いだ。

喧騒の中に僕たちはいた、あの時のまま周りは変わっていない。

魔法を確認する……よかった少しは使えるのか。

野次馬が写真を撮っている、なにをどうやったかわからないが僕が送られたその時に戻ってきた。


「義父さん…」


エリが目を覚ましたようだ、僕はエリとアイシアをなんとか抱えて移動する。

このまま警察のお世話になるのもいいが、格好に武器もある言い訳を考えるのも難しい。電車には乗れないし、タクシーも無理だ。

だが運のいいことにここは秋葉原だ、うまくいけば事を荒げずにすみそうだ。

表通りは危ない、裏路地に入って行く……さすがに二人を抱えていくのはおもいが、エリに走ってもらうのは難しいとりあえずこの辺までくれば大丈夫だろう。


「何あれレベル高い」


「やっば写真撮っても大丈夫かな……」


やっぱり目立つな、秋葉原でよかった。それ以外なら下手すれば通報もあるぞ。


「エリ、歩けるか?」


「うん……ここどこ?」


「あとで教える」


家に戻るか……だがもし同じ時間なら僕だって言っても母親は気付いてくれないだろう。どうする……サイフとかは拾ってきたが、ホテルでも入って落ち着くか。

町中にいればSNSで情報が回ってしまう。

これ以上騒ぎが大きくなることも困るしな……なにげなく拾ってきた携帯を見た……


「八月一五日……あの日と同じか……」


とにかく、お金が必要だ。

僕は周りの目を気にしながらもコンビニで貯金を全額下ろした。

これだけあればしばらくは大丈夫か……

少し外れのちょっと高いホテルをとった、部屋につくと大きくため息をついた。携帯でちょっと見たが話題になっているようだ、しばらくすれば冷めるだろうがそれまでは動きまわるのは難しいな。

エリは、異国の地のためか元気がない……もともと人見知りが激しいのだから仕方がないか。

アイシアはまだ目覚めない……どうにも身動きが取れないな。

とりあえず服か、幸い購入にこまることはない場所にでてきたからそこは救いだ。

しかし、いざ戻ってくると居心地の悪い世界だ。

飛ばされたのは僕らだけか……不思議なことだがあちらの世界で流れた十年はこちらの世界では流れていないなんて。

まだこちらでも十年たっていればすごしようもあったが……

解決策もなにも浮かんでこない、そもそも一方的にとばされて一方的に戻されただけだ僕らはそれに介入していない、こちらでまた生活をするのか……だがこちらはそう言ったことに厳しい、アイシアもエリも戸籍もないんじゃ……僕が頑張ればいいのか……母親に真実を話すか……


「義父さん、アイシア様がお目ざめに!」


エリがうれしそうに教えてくれた、僕は「そうか」と素っ気ない返事をしてしまった。

だが、慌てて大げさにアイシアに声をかけに行った。


「アイシア?」


「……」


目は覚めたようだが相変わらずか……そんなにすぐ改善できたらとっくに治ってるはずだ。

僕はあきらめたようにエリの頭をなでる、エリは不安そうな顔をしている。

僕だってどんな顔しているが分からない、けど笑うしかない。

エリに精一杯の笑顔を向ける、僕が頑張らなければ……

すると突然、激しい耳鳴りがする、頭が割れるほど痛みを感じるほど……


「君には迷惑をかけたな」


女性の声がする。

あの時と似ている声だ。


「誰だ?」


僕はなにもない空間に話しかける、エリはまた不安そうな顔をする聞こえているのだろうか……


「名乗ることは出来ない、でも君には迷惑をかけたことは事実、まあ君も僕らに迷惑をかけたのだからお互い様さ……さて、これはボーナスだ」


「こ、ここは……」


「ア、アイシア?」


嘘だ……僕は信じられなかった、だってこれは奇跡だ……


「これが僕の力だ、そしてもう一つ……」


なにかが僕達を包んだ気がした。


「これで君達はこの世界で暮らすことができるよじゃあ頑張って」


「ま、まて!」


「なんだよ」


「なんでこんなことをするんだ、納得のいく説明をしろ」


「はあ……面倒ですがいいでしょう。僕達の計画にあなたは含まれていないんです。けど僕達に到達するまでもなくかと言って協力する様子もないだから邪魔だったんですよ。まああっちの世界にはもう二度といけないですしもう許しますよ。もっと頭が良ければ僕達も面白かったんですけどね……ただ僕達の邪魔をするだけならいらないんでじゃあさよならー」


「おい!おいまてよ!」


反応はなくなった、なくなる時も耳鳴りはした最初とは違い随分と軽いが……

もう完全に僕の理解を超えていた……不思議な世界で起きる出来事ならまだなんとか正当化できただろうが今は現実の世界だ。

でも夢じゃない、これは事実だ。

僕が邪魔……計画に含まれていない……

なんなんだいったい……僕はなんなんだ……


「だ、だいち?」


そうか……


「アイシア」


今はこれでいい。


「ダイチィ!!」


アイシアは僕を強く抱きしめた。

僕も強く抱き返した、彼女は僕の胸で泣いた。

そして、僕は自分の腕が生えていることに気がついた。

世界は……

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