騎士―生涯守り抜くもの―
アイシアと今後の事について、詳しく話すことになった……というかした。
さすがに大陸全域ともなると話が変わってくる、それこそ確実な移動手段を持ってないといつ終わるか分からない。
徒歩はさすがにアニメでもない限り、死んでしまう。
一週間飲まず食わずで、まともに寝れず風呂もないとか地獄なのにそれ以上の地獄をわざわざ味わいにいく奴はおらんのですよ。
「で、さっきの話なんだけど、移動手段をこう……召喚とかでどうにかならないの?」
「難しいです……そもそも召喚魔法は魔族が開発したもので未だに詳しい理論は分かっていないんですよ……」
アイシアは一所懸命考えてくれているが分からないことはいくら考えても分からない、我ながら無茶な提案だとは思う。
しかし、召喚魔法か……一見すると僕が送られてきたのも召喚魔法の一種と考えれば辻褄が……いや、原理も分からないんだし決めつけるのはよくないな。
「ありがとう、アイシア無理なものは無理で他の方法を考えよう……それに国どうしなら馬車でもなんでもあるだろうし……」
だが……問題は多種族のエリアだ、ここにもいかなかればならないのか……本当にRPGだな、これは経験を積んで、仲間を増やして、戦うのか……そしてラスボスは魔王かな。
なんてバカな事言ってる場合じゃないな、夢のようだけど現実で、まじで命がけだからな。
「とりあえず、旅に出るか」
「そうですね」
僕たちは、簡単な準備と食糧、武器、地図を持ち、まずは人族のエリアを調べて回ることにした。
それに差し当たり、アベル経由で王国の許可証を発行してもらうことにした。もちろん大がかりな昨日はいらないからただ、各国家間の移動を自由にしてほしいという感じで。
案外、簡単に発行してもらえたのだが、もう一つのイベントが大変だった。
それは……
「お前ら、正式に騎士として契約しないのか?」
アベルの言った一言だった。
「え、でもダイチさんが迷惑だと思いますし……」
「いや、騎士ぐらい僕でよければなるよ」
「ほ、本当ですか!?」
「うん」
この時、僕は騎士なんて正式な護衛依頼みたいなものだと思い込んでいた。
だけど違った……そんな生易しいものじゃなかった……
この世界の騎士になるということは……
「じゃあ、これに着替えろ」
「なんですかこれ?」
「お前の正装だよ」
「汝、騎士見習いダイチよ、そなたはアイシア・ケルターを生涯の主としその命尽きるまで、騎士として誇りある行動をとることをここに誓いますね?」
「は、はははい、ち、誓います」
この世界における騎士とは、要は結婚のようなことだった。
なんでも一度守ると決めたら一生守るのが騎士らしい。
つまり、その人の騎士になるということは生涯傍に居続けるとかいうなんともぶっとんだ話で……
安請け合いしたと、少し後悔しそうだったが……
まあ、アイシアの笑顔をみたらそれもそれでいいかと思った。
しかし、これからの旅って僕がもとの世界に帰るための旅だよな。いいのか僕が騎士で。
「さて、やることもやったし。ほら許可証だ」
アベルは事が終わるとさっさと行け、といった感じで許可証を手渡してきた。
「正直、あんまり時間もないんだ。これ以上ことが大きくなると魔族と全面戦争にもなりかねない。許可証があれば入国制限があっても入れるし馬車は金はかかるが乗せてってくれるすぐれものだ……本当は俺もいくのも筋だがいまおれがここを離れるわけにはいかないんだ……だからお前らにこんなこと頼むのも忍びないがさっさといってさっさと片付けてきてくれ」
そう言いながら、僕とアイシアにお互い聞こえないように耳打ちしてきた。
「妹を頼む、もうお前しか頼れるものがない。今回の許可証がすぐでたのも邪魔者をここから追い出すためだ、これだけ言えば分かるな。頼んだぞ」
「任せてください」
今度こそ僕は自信を持って言えた。
アベルに見送られ、僕とアイシアは旅に出た。
まず目指すはエルフが住むと言われるエルフの森だ、手がかりの一つのこの神様の地図の謎を解くため。
僕とアイシアの長い長い旅は始まった。