召喚
―――保護された数名は西洋風の甲冑に身を包み「王国の護衛団」と名乗っており詳しい取調べが行われる予定です。えー次のニュースです―――
駅前にそびえ立つ建物に設置された大型モニターから流れるニュースをよそに人の流れは一層速くなる。
一昔前ならビジネスマンやOL、ラジオオタクが行き交ってた場所もすっかり変わってしまった、大々的に掲げられたアニメやアイドルの広告・・・・・・
時代の流れは恐ろしい・・・・・・自分もその一人だけど
久々の休日に今まで変えずにいたグッズやCDを求めはるばるやってきた。
ネットで買うのもいいのだがこういうのは昔から自分で買うのがやっぱりすきだ。
有名なアニメショップをめぐり終えると時間はお昼時を過ぎていた、いつもよるカレー屋でデカ盛りカレーを頼み、ゆっくりと頬張る・・・・・・
今日の成果を確認していくこの時間が実にいい、生憎売り切れも多かったが久々の買い物で満足できた。
食事を終えると帰路に着くための地下鉄の入り口へと足を進める。
まだまだ夏日の残る日差しを避けつつ日陰の通りを進んでいく、いつもならよく分からないラジオ無線を売ってる店もお盆のせいか閉まっている。
「あっつ・・・・・・」
日陰のを通りながら持参のタオルで汗を拭く、このまま駅まで行きたいのだが暑さで足が止まる。
「ふぅ・・・・・・」
一息つきながら知的炭酸飲料を自販機で買い一気に飲み干す。
なんともいえない清涼感が体を突きぬけると体温も少し下がった気がした。
ふと休憩がてらに人の流れを見ていると路地の隅に不可解な光を発見した。
ビルの反射や大型モニターの映像とも違う・・・・・・
なんだろう、僕は得体の知れない興味に駆られその光の場所まで駆け寄った。
光は自転車置き場の角の空間から漏れているようだった。
その光を除くとどこだかは分からないが森の様子が映されていた。
「なんだ・・・・・・これ」
僕の興味は一種の恐怖へと変わっていった
こんな現象は見たことも聞いたこともなかった
だれかのイタズラか、またはCGか・・・・・・
僕は慌ててあたりを見回すがそれらしいものは見つからない。
この光をじっくり眺めていると不意に声が聞こえたような気がした。
―――だれか―――
自分にしか聞こえないような大きさで
―――助けて―――
確かに聞こえた。
通りの喧騒は聞こえなくなり、僕はその声に集中した。
「光か?」
誰が答えるわけでもないが僕はつぶやいた。
そして見たのだ光のその向こう。森の中、化け物に追われる少女の姿を・・・・・・
悪戯でもなんでもいい、その光景に僕のRPG魂に火が付いた。
「困ってる人は助ける、これが俺のモットー」
どうするわけでもなく僕は光に手を入れた。
瞬間世界が光に包まれた・・・・・・
今までしていた喧騒も排気ガスの匂いも夏日の暑さもすべてが変わった。
さっき見た森が目の前に広がった。
声が近づいてくる・・・・・・助けてと・・・・・・
僕はゲームで幾度となく出会ったこの光景を頭に浮かべてシュミレートする。
大きくこぶしを振りかぶり、構える・・・・・・
幾度となく頭に浮かべた魔物を倒す勇者と自分を重ね。
追われる少女と獣が視界に写る。
準備はできた、あとは覚悟だ・・・・・・
少女が自分の脇を通り過ぎる、そして獣も自分の脇を抜けようとする。
僕に見向きもしない、好都合だ・・・・・・
獣の脇目掛け拳を突き出す。
距離を見余ったのか拳はちょっと当たった程度でせいぜいダメージはないだろうと思った。
しかし、獣は大げさすぎるぐらい吹き飛ばされ木々をへし折ってぐったりと倒れた。
刹那、ピロンと音を立てて金貨が現れた、まるでゲームの世界のように・・・・・・