約束―新しい冒険の始まり―
クソノートだけどPC復帰ちょっとがんばる
「やっと休めますねー」
ちんまりと背伸びをしながら先ほどとはまるで別人のようなアイシア、もしかして別人かと思うほど雰囲気も違っていた。
あれが彼女の仕事中の姿なのだろうか、こっちが素なのは確かだろうし……人には意外な一面があるからな、などと考えことをしていると……
「もしもーし!ダイチさん」と大きな声をかけられてしまった、気がつくとアイシアが頬を膨らませている、おそらく話をあまり聞かれていなかったため怒っているのか……
「ごめんごめん考え事してて……でどうした?」
「考え事してたじゃありませんよまったく……」と言ってそっぽ向いてしまった、こっちが言いたいよまったく……しかし、ご機嫌取りも大事なので今回はこっちが折れてやろう。
「本当に申し訳ない、次から気をつけるから」
「仕方ないですね!」
ふむ扱いに慣れてきたのかはたまた彼女が扱い易いのかともかく会話はできている、彼女いわく僕の服装が怪しいから着替えを買おうと言うことともっと落ち着いてお互いのことを話したいということでまずは洋服屋に向かうことにした。
「いらっしゃい!いいのが入ってるよ」
店の店主が声をかけてくる、アイシアが詳しく説明すると僕の寸法を測ってくれた、これがいいという彼女のおすすめを着てなんとか服装はまともになった。よく考えたらこっちの世界にきてからまともに食事をしていないことを思い出した(情けないことに自分のおなか周りが少し減っていることで気づいた)のでアイシアに言って食事をとることにした。
アルラスカは魚があまり流通していないようだがメディクトは普通の市場のようになんでも取り揃えていた、飯屋を探す間にアイシアがあれもこれもというのであっという間に両手がいっぱいになった。しばらく滞在するしと服まで買い始めたので半ばあきらめて付き合った。
手頃な飯屋を見つけるとアイシアに言って入ることにしたが彼女の好みがわりとうるさいのでおちつくまでに時間がかかった。
「それじゃあ、それでお願いします」
「かしこまりました」
ウエイターに注文を伝えると、アイシアのほうから僕に質問が飛んできた。
「ダイチさん、そのずっと気になってたんですがダイチさんがこの大陸に来た理由ってなんなんですか?」
一番聞かれたくないことを聞かれてしまった。前の僕なら適当な理由をつけて誤魔化したんだろうが正直、彼女になら真実を話してもいいと思い始めた。なぜだかわからないが彼女になら本当のことを話しても解ってもらえる気がしたのだ。
だがこんなところで堂々と話す話でもないので彼女にはこういうことにした。
「その話は重要な使命が関わってくるからここじゃ離せない宿に戻ったらゆっくり話すよ」
と彼女は納得できない、というよりも今すぐ知りたいという感じだったがそういうと渋々承諾した。
食事はなんとか口に合う程度のものだった、お世辞にもうまいとは言えない食材のせいか変な雑味がまじっておりどうもすっきりしないあじわいだった。しかしアイシアはおいしいと言って食べてるし僕もおなかは膨れたので贅沢は言っていられないしかも王の許可でただで食べられるんだからこれ以上文句を言ったら罰あたりになりそうだ。
ようやく宿に着くとなんでも特別室が一室しかないとかでアイシアと同じ部屋になってしまった。僕は普通でいいと言ったんだが他国の使者様にそんな無礼な扱いをしたら私の首がとんでしまうと脅されたので仕方なく承諾した、アイシア自身は気にしていないようだが……
「さて……やっとダイチさんのことを聞けますよ。さあ教えてください」
部屋に着くなりこれである、よく見れば幼さ残るその顔だちはもう少し年を重ねれば美人といえるであろうその顔で僕に迫ってくる。
「わかったよ、だからそんなに近づくな」
そして僕はこれから頭のおかしい人間にならなければいけない。
僕は事の経緯をすべて話した、秋葉で買い物をしていたらここに飛ばされたこと、日本のこと世界のこと自分のことすべてを洗いざらい話した。アイシアは僕が不思議な話をするたびおどろいたりよろこんだりと不思議なものだった、でも僕を軽蔑したりするようなことはなく真剣に事実としてきいてくれた。(それも彼女自身が目の前で護衛が消えるという現象を目の当たりにしているからだろうが……)
話を終えると彼女はしばらく考え込むと満面の笑みでこう言った。
「それなら、ダイチさんがもとの世界に戻れるまで私がお手伝いしますよ!その代りダイチさんはもどり方が分かるまで私の旅のお供をお願いします。もちろんちゃんと報酬は払いますし、ダイチさんの意見も尊重します。どうですかいい提案でしょう?」
ふむ……正直俺は悩んでいた、もちろんこの世界に疎い俺には願ってもない提案だし、それにアイシアといるのは別に苦痛ではない……むしろ楽しいとも思ってきてしまった。しかし、これでは彼女を利用するようなものだし、そんな恩を返せるあてもない……それこそ俺がほかの大陸からの移住者ならお礼もできたのだが……
しかし……
アイシアの好奇心と期待に満ちた目を見た瞬間、なるようになれと思いその提案を吞んだ。