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仲良くしようよ!  作者: つられるクマー
2章、名前を決めよう
7/10

6.平和な日

 ワーズとエリザベータによる勉強会からさらに数日が経っていた。

 私に名前を付けると意気込んでいたミィは今日も書庫で本を読み漁っている。

 ミィは文字が読めるらしく、絵本や児童文学はもちろんの事、専門書籍や百科事典・図鑑等まで幅広く、それこそ棚の端から端まで順番に、片っ端から読んでいた。

 その理由は勉強の為……というものではなく、私に良い名前をつける為であるらしい。

 そんなにがんばらなくてもいいよと伝えても、一番良い名前を付けるんだからとミィは譲らない。


 意外と頑固なんだなぁと思いながら、私もミィの肩の上から本を一緒に読んでいた。



☆  ☆  ☆



「オバケさんはしゅみとか好きなものとか、何かないの?」


 メイドさんに入れてもらった紅茶を一口飲んで、ミィが聞いた。

私は少し考えて――趣味と言えるようなものはないし好きなものは…――答えた。


≪ミィが好きだな≫


「ぼくもオバケさんが好きだよ!」


 私の答えに、にこにこと笑顔になるミィ。

 やはり彼は素直でかわいい。間違いない。


 ずっと書庫に籠っていたミィと私は「たまにはお外で遊びなさい!」とエリザベータにつまみ出されて庭に居た。

 時間がちょうどおやつ時だったので、そのまま庭でおやつを食べている。

 今日はスターパ国産の紅茶と執事長が趣味で焼いたスコーンだ。

 ミィは色とりどりの果物のジャムの中から好きなものを選び、スコーンにつけてうまうまと食べる。

 私には食べる口がないので、肩の上からいつも通りミィを見て、癒されている。

 いやまあ、今のところ私にはストレスのようなものはないのだから、何を癒されているのかと聞かれると困ってしまうのだが。


「オバケさんオバケさん」


 ミィは口の中のものを飲み込むと、私を呼んだ。

 何かいい事でも思いついたのであろうか。


「いっしょにおかいものに行こう?」


 笑顔でそう言ってきたミィには悪気も何もないだろうが、もしも私に口がありお茶を口に含んでいたら、噴出していたに違いない。

 よかった、飲み食いが必要のない口のない生き物? で。


「……殿下、恐れながらご意見申し上げます」

「なあに?」


 同じセリフを聞いていたらしい使用人の一人がミィと私の前に一歩出る。

ミィは自分のセリフの意味をわかっていないらしく、不思議そうに使用人を見ていた。


「ウィルオウィスプ様が殿下の大切なご友人である事は、屋敷の者なら誰もが知っております。が、街の者たちはその事を知りません。ウィルオウィスプ様の種族への危険性しか知らないのです。ですから街へウィスプ様と買い物へ行くというのは……」


 ミィの目が丸くなり、私とその使用人の顔を見比べ、ポンと手を打った。

 私がミィと共に買い物へ行った場合の結果を理解したらしい。

 そして困った顔で私を見た。


≪構わずに買い物へ行ってくるといい。私はここで待っていよう≫


 買い物へ行きたいミィを止めるという選択肢は、私にはない。

だからこそミィにそう告げたのだが、それはミィの意思に反することだったようで、困ったような怒ったような――子供がする顔じゃないだろうというような複雑な表情になった。

 こういう表情を見ると、子供でもミィは王子なのだなぁと実感する。子供だけれど、子供ではいられない立場なのだろう。


「ぼくはオバケさんといっしょに、おかいものへ行きたかったの。でも、まちの人たちがこんらんしてしまうなら、ぼくは行かない。オバケさんといっしょがいいもの」


 オバケさんは違うの?とミィが続けるので、私は慌ててそれを否定した。

 私だってミィと一緒に居られる事が一番の幸せである。

 そう伝えると、ミィは子供らしからぬ表情をひっこめ、子供らしい満面の笑みで頷いた。


 私の言葉にご機嫌になったミィと一緒に、その日は一日、庭で遊んで過ごしたのだった。

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