0.生まれた日
気がついたら白い空間にいた。
ここはどこだろう。
見回そうとするも体がうまく動かない。
私は一体どうしてしまったのか。
自分を見下ろそうとして、体がない事に気がついた。
上も下も、右も左も、前も後ろも、何もない。
ただただ白いだけの空間が見えるのみである。
私は何なのだろう。
体がないのに意識はある。
それは不思議な事である、という事を私は知っている。
しかし同時にその事は別段不思議でもなく普通の事なのだという事も私は知っている。
矛盾する二つの事柄に私はうーんと首をひねろうとして、首がない事にも気がついた。
よく考えれば体がないのだから、そこから顔へつながる首がないのも不思議ではない。
ひょっとすると顔もないのではないだろうか。
何しろ目をひらいた覚えがないのに、私の意識は私の周囲が見えている。
耳は音を拾って来ないし鼻もにおいを拾わない。それにも拘わらず、それが正しい認識であることを私は知っている。
音もにおいも何もなく、ただただ白いだけの空間。
私は今、その空間にたしかにいる。体も何もないが、意識はたしかにここにいるのだ。
――アップデート完了。転送を開始します。
ふと、無機質な音声が響いた。
何もない白い空間であったはずなのに、その音声と同時に白い空間に黒い色が混ざりはじめる。
その黒い色は白い空間をあっという間に埋め尽くし、私の意識も飲みこんでいった。
目標は完結。