首飾り 2
話しているだけです。
闇雲に探したところで見付かるわけはないので、とりあえず作戦を立てることにした私達は、睡蓮宮の中に戻った。
「なくなった首飾りってどんな物なんですか?」
2人分の茶を用意してから、ツェン姉様に訊ねる。
「銀と最高級の翡翠を使った物よ。母君が細工師に作らせたとかで、以前自慢しているのを見たわ」
「翡翠…。瞳の色に合わせたんですね」
濡れ羽色の髪に翡翠色の瞳のメイリア様に、その首飾りはさぞかし似合っていたのだろう。ところが、私がそう言うと、ツェン姉様は複雑な顔をした。
「首飾り自体は確かに合っていたけど…」
「…けど?」
「ほかの装身具と合っていなかったから、どうも趣味が悪く見えたわね」
「………」
そう言えば、さっき見た時も、簪に歩揺、腕輪に耳飾り首飾り帯飾りと随分派手だった。…というか、ツェン姉様も随分遠慮が無い言い方をする。
「とにかく、見事な首飾りなんですね?」
「首飾り自体はね」
「…実は結構怒ってます?」
「なんのこと?」
…答える声が低い。これは、どう考えても怒っている。
「まあ、どなたかの適当な証言を真に受けて怒鳴り散らすは家探しするは挙げ句のはてに見付からなかったのをこちらがどこかに隠したなどとおかしな事をおっしゃるから少し苛立ってしまったけどね、ふふふ」
…怖い。
ツェン姉様が持っている扇が、ミシッと嫌な音を立てた。このままでは、なんの罪もない扇が哀れな姿になってしまう。私は慌てて話を戻した。
「そ、そんな首飾りなら見たらすぐに分かりますね!」
「そうねぇ。ほかの物と間違えるような事はないわね」
持ち主が落ち着きを取り戻したおかげで、ギリギリと締め付けられていた扇が解放されたので、私はほっとした。
「まずは、詳しい状況を訊かないといけないわね」
「でも、あの調子だと、メイリア様がちゃんと説明してくださるかどうか…」
「本人に訊ねる必要はないわよ」
「え?」
どういう意味なのか分からず、私は首をかしげた。
「彼女の周りにいる人達の中には、状況をよく知っている人もいるはずよ」
「あ、確かに…」
メイリア様に仕える侍女も従者も多い。それとは別に、母君のほうに仕えている人々もいる。
その中には、首飾りについて見聞きしている人も必ずいるはずだ。
「というわけで、早速行くわよ!」
ツェン姉様は、勢い良く立ち上がった。
「姫様!もう少ししとやかになさいませ!」
…そして、ちょうど通り掛かったシェイザに叱られた。
私も、吹き出しそうになるのを堪えて、立ち上がる。
こうして、まずは聞き込みをすることが決定した。