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ミシュナ  作者:
3/19

始まり 2

衛士を呼んだあとは、予想通りに事が進んだ。


私は牢に入れられ、次の日の夕方、皆の前に引き出された。


侍女達はいない。昨日、私の罰を重くするかわりに温情を求めたのが、聞き入れられた。そんなことをしたと知ったら、きっと3人は怒るけど、それでも頼まずにはいられなかった。


そして今、私は父であるこの王宮の主の前でひざまずき、沙汰を待っている。


「これより処分を下す」


私の父は、淡々と告げた。人々が一斉に頭を下げる。


「ミシュナの身分は剥奪する。また、ミシュナの身柄は生涯幽閉とする」


――ああ、やっぱり。


私は静かに瞳を閉じた。


幽閉されれば、アイリャ達にはもう会えない。1人ぐらいは世話係が付くだろうけど、その人以外の人間に会うことは、もう一生できない。


――さようなら。


家族のように思っていた大切な人達に心の中で別れを告げた、その時。


「お待ちください」


柔らかい声が、辺りに響いた。


王の決定に異議を示す声に、人々がざわめく。


私は、思わず頭を上げそうになってしまった。


あの柔らかい声は知っている。まるで日溜まりのようなあの声は――、


「ツェンニャか」


1歳上の異母姉妹だ。


――どうして?


私を庇えば、王の心証は悪くなるだろう。


私は、こっそりのツェンニャ様の姿を探した。


彼女は、小柄な身体を真っ直ぐに伸ばして王を見詰めていた。


「ツェンニャよ。私の決定に異議があるか」


「はい」


穏やかな声での即答。ざわめきはますます大きくなる。


「母親が大罪を犯した彼女を、王族の地位に留めておいては示しがつかないのは、私もよく理解しております。ですが」


ツェンニャ様は、一呼吸置いて続ける。


「彼女自身は何もしていないのに幽閉とは、罰が重すぎです」


「あの娘は、侍女達の責も自分が引き受けると申した。その分、罰が重くなるのは当然ではないか」


「いいえ。侍女達も何もしておりません。ですから、その責を背負うとしても、幽閉は重すぎます」


「ならば、どうする。身分剥奪のみで王宮に留めておくわけにはいかぬ」


それはそうだ。王女ではない私が王宮に居座るなんてできない。


ところが、ツェンニャ様は平然と続ける。


「新しい身分があれば良いのでしょう」


「…?」


どういうことなのか考えていると、ツェンニャ様はゆっくりと言った。


「ようは、彼女を侍女にすれば良いのです」


「なるほど。だが、お前が提案した以上、ミシュナの身柄はお前が引き受けることになるが」


「承知しております」


――ええ!?


思いもよらない展開に、頭がついていかない。必死で理解しようとしている間に、話は纏まってしまった。


「では、ミシュナの身分は剥奪とし、ツェンニャが引受人とする」


私は戸惑いながらも、頭を下げた。


王が去り、ほかの人々も立ち去ったあとも、私はぼんやりとひざまずいていた。と、こちらに近付いてくる足音が聞こえた。


「ミシュナ」


穏やかに呼ばれて顔を上げると、ツェンニャ様とその侍女達がいる。


「さあ、帰りましょう」


私はぼんやりとしたまま、手を引かれて歩き出した。

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