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ミシュナ  作者:
2/19

始まり 1

私はミシュナ。

この国に大勢いる王女の1人――だった。


今は違う。


私は罪人の娘。その証拠に、私を見ている人々の目は冷たい。


玉座に座る王は、私の処分を告げようとしていた――。






事の始まりは昨日の朝。いいえ、本当はもっと前から始まっていたのだけど、事が発覚したのは昨日の朝だった。


その日、いつものように起き出した私は、困り顔の侍女を見付けた。


「どうしたの?」


「あ…、姫様…」


その侍女――メイという名で、16の私より少し年上――は、言葉を選ぶように口籠もった。


「その…」


「何?」


「リーシャ様が、いらっしゃらないのです」


そう言って彼女は、母様の寝室を指し示す。


「母様が?お散歩かしら」


何気無く寝室を覗いた私は、事態の深刻さに気付いた。


部屋が片付きすぎている。


物がまったくないのだ。


さらに室内を見回した私は、卓に置かれた(ふみ)を見付けた。


「これ…、文よね」


「そうですね」


見れば分かることをわざわざ口にしたのは、不安になったからだ。


私達は恐る恐る文を開いてみた。


「え…」


「そんな!」


メイが思わず叫んだのも無理はない。その文は"ここにはもういたくない。私は恋人の元に行く"という内容だった。


「………」


最初に思ったのは、どうやって王宮を抜け出したのかしら、ということだった。


その次は、何も言わずに置き去りだなんて、お母様はやっぱり私のことが嫌いなのね、ということだった。


そのあと、ようやく私は気付いた。妃の姦通と逃亡。――これは大罪だ。捕まれば恋人共々斬首。それに――、大罪の責は身内にも及ぶ。


「ひ、姫様…!」


同じ事に気付いたらしいメイが真っ青になった。


「…大丈夫。あなた達には責が及ばないようにするから」


メイを落ち着かせようとそう言うと、彼女はぶんぶんと首を振った。


「それでは、姫様だけが罰を受けることになります!」


「私は仕方ないわ。娘だもの」


「だめです!」


「メイ…」


押し問答をしていると、後ろから声が掛かる。


「姫様、どうかなさいました?メイも、一体何事です」


振り向くと、アイリャがいた。その後ろには、ミンもいる。アイリャとその娘・メイ、そしてアイリャに育てられた孤児のミン。この3人が私達母娘に仕える侍女だ。


この一角の住人が揃ったのを見て、私は微笑んだ。


「ちょうど良かった。話し合わないといけないことがあるの」






私とメイが事態の説明をすると、あとから来た2人は唖然とした。


「いつの間に恋人など…。しかも、誰にも気付かれず抜け出してしまうなんて…」


ミンが、信じられないというように溜め息をつく。


「警備が甘かったのでしょうけど、問題はそこじゃないわ」


私が言うと、アイリャが後を引き取る。


「ええ、問題は連座ですね」


「そう。私は間違いなく身分を剥奪される。良くて追放、悪ければ幽閉かしら。でも、あなた達が罰を受けないように頼むことはできる」


「で、ですが…!」


「これ以上は無理よ、メイ。私自身はどうにもならない」


「………」


「…衛士に知らせなくては」


呻くようにアイリャが言った。


「そうね。隠蔽の罪まで被る必要はないわ」


私は、そう返事をして、立ち上がった。



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