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ミシュナ  作者:
16/19

子猫 3

解散した後、私とリアンは任せられた一角を歩いていた。


通り掛かる人に事情を話すと、大概の人が気を配っておく、と言ってくれた。


今の時期は特に忙しくもないので、猫探しの手伝い程度なら承諾してくれるらしい。


10人ほどに頼んだところで丁度見付けた東屋で、一息つくことにする。


「うまくいけば、すぐ見付かるかも知れないですね!」


「そうですね」


「白い子猫でしたよね。雌の」


「中々見られないような、交ざりけのない白だとのことですよ」


そんな猫なら見てみたい。きっと綺麗だろう。丁度、そこの植え込みの近くにいる猫のように――あれ?


「リ、リアン、そこの猫ってそうじゃないですか!?」


「あらっ」


2人で慌てて立ち上がったのが良くなかった。子猫は驚いて逃げ出してしまう。


「ああ!」


「ま、待って!」


誰も見ていないのをいいことに、私達は裾をからげて走り出した。






「…いない」


先程まで追い掛けていた子猫は、角を曲がって姿を消してしまった。


「ごめんなさい、逃がしてしまいました」


追い着いてきたリアンにそう言うと、彼女は首を振った。


「すばしっこかったですから、仕方ないですよ。…それにしても、足が速いんですね」


「自分でも、ちょっと驚きました。知らなかったので」


王宮内で走ることなんて滅多にないから、当たり前と言えば当たり前だけど。


「裾をからげて走ったなんてシェイザに知れたら叱られますね」


睡蓮宮における最古参で、侍女のまとめ役のシェイザは、こうした礼儀作法に厳しい。


「秘密にしておきましょう」


「そうしましょうか」


リアンが唇に指を当てたので、私はちょっと笑って同意した。


猫は逃がしてしまったけれど、リアンと仲良くなることはできたみたいだ。






睡蓮宮に戻ると、ミンとセリファ以外は全員が戻っていた。少しすると2人も帰ってきた。


そのまま報告会を始める。


私達がそれらしい猫を見たと言ったので、かなり驚かれてしまった。


「もう?随分早く見付かったわね」


目を丸くしたツェン姉様がそう言うと、リアンが頷く。


「たまたま、ミシュナが見付けまして」


「丁度、視線の先にいたんです」


「とりあえず、捜索はやり易くなったわね」


ツェン姉様はそう言ってから、不意に真剣な顔になって改めてこちらを見た。


「元気そうだった?」


「特に痩せている様子はありませんでした。どこかで餌を貰っているのではないかと」


「怪我もしていないみたいです」


「よかった」


「ええ、本当に」


ツェン姉様もほかの侍女達も、ほっとしたように微笑んだ。


「それにしても」


ふと、アイリャが首をかしげた。


「どうして戻ってこないのでしょうか」


「迷子になった、とか?」


そう言ったメイに、アイリャは首を振る。


「部屋の外に出たことがなかったのならともかく、普段から出掛けていたのでしょう?」


――確かに。


あれだけ元気だったのだし、私達が見付た場所はスーラ様の所からそう遠くはなかったはず。帰ってこない理由が分からない。


「ただたんに、遠くに行き過ぎて迷子になったんだと思っていたんだけど…」


ツェン姉様は首を捻りながら見取り図を眺めている。と思ったら、


「あら?」


何かに気付いたらしい。


「何か見付かったんですか?」


「セリファ、図々しいわよ」


リアンに呆れられながら、セリファが覗き込んだけれど、よく分からなかったらしい。


なんとか理解しようと考えるあまり、おかしな顔になっている。


「ぷぷ」


「へ?」


「なんでもないわよー」


「?」


…残念ながら、本人は自覚してなかったみたいだけど。


「ところでツェン姉様、何に気付いたんですか?」


「んー、ちょっとね。確かではないけど、戻ってこない理由がなんとなく分かった気がする」


「…はい!?」


こうして、捜索1日目であっさりと解決の目処が立った。

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