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ミシュナ  作者:
12/19

義兄

どこの国でも、身分の高い娘は、早くに婚約し、早くに嫁ぐ。


この国の王女もそうだ。私のように立場が弱すぎない限り、結婚は彼女達の役割なのだから。


つまり――、17歳であるツェン姉様にも婚約者はいる。ものすごく違和感があるけれど、いるものはいる。


身分が高い娘を、陛下は最大限に利用したいらしい。


ツェン姉様は、隣国の第三王子と15歳で婚約していて、来年には彼に嫁ぐ。






隣国・イディア王国は、私達の国・シェルイよりも小さい国だ。


ところが、国力はシェルイよりもかなり大きい。あちらの国は、先代国王、現国王と名君が続き、様々な政策を打ち立て、貧富の差はかなり小さくなっている。


さらに、20年ほど前、権力を削られて不満に思った貴族達が起こした反乱を、見事に治めた。


この辺りで一番小さいけれど、この辺りで一番縁を結んでおきたい国、それがイディアだ。


ちなみに、なんでこんなことを知っているかというと、ツェン姉様に教えてもらっているからだ。こうした知識は、姫君が知るには相応しくないらしいけれど、ツェン姉様は積極的に学んでいる。


さて、肝心の第三王子は、正妃の子だ。というか、イディア国王には側室がいないので、王子は3人、王女はいないらしい。


第一王子はすでに結婚していてほかの妻を娶る気はなし、第二王子は何故か結婚話がない。


…縁談はあっても、どういうわけだかまとまらないとか。


それで、ツェン姉様は第三王子と婚約することになった。






婚約の証の腕輪を大切にしているし、(ふみ)の遣り取りもしているようなので、ツェン姉様が婚約者とは仲が良いことは知っていた。


でも、文の内容を聞いた時、私は思わずひっくり返りそうになった。


「首飾りの話もしたんですか!?」


自分の婚約者がそんな捜索をしたと知ったら、大半の人は眉をひそめる。賢し気だと嫌がられることが多い。


「大丈夫なんですか…?」


「そういう行動を嫌がる人じゃないわ。大丈夫」


「懐が大きい方なんですね」


そういう考えを持てる人は、身分が高ければ高いほど少なくなる。


私は、まだ見ぬ未来の義兄のことを尊敬した。


「それに、面白い人なの。隠し扉も、彼が思い付いたのよ」


「…えっと、すごい性格です、ね…?」


…私は、まだ見ぬ未来の義兄のことが心配になった。


「それとね、身の回りの出来事を教えてくれるの。今日は仕事が多いのに面倒事が持ち上がってて大変だったとか、視察で北の海まで行ったら季節外れの雪が降って寒かったとか」


「…どういう方なのか分からなくなりました」


いったい何を訴えているのか。


とりあえず、ツェン姉様とは似た者夫婦になるのは間違いない人なのはよく分かった。






しばらく婚約者や、2回行ったことがあるイディアの話をしてくれたツェン姉様は、ふと思い出したように言った。


「今年の即位記念日に、お祝いに来るそうよ」


「そうなんですか?」


「あなたを引き取った話を書いたら、教えてくれたの」


こちらに来るときに紹介するわ、と楽しそうに話すツェン姉様を、私は凝視した。


地位を追い落とされた元王女を引き取ったなんて、外聞のいい話じゃない。


でも、私の心配を聞くと、ツェン姉様は文を見せてくれた。そこには――、


「"妹に会えるのを楽しみにしている"…」


ごく自然に書かれた"妹"という文字に、私は思わず顔を綻ばせた。


まだ見ぬ未来の義兄は、変わり者だけど優しい人みたいだ。

変人を増やしたかったんです…。

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