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ミシュナ  作者:
11/19

首飾り 6

これで首飾り騒動は終わりです。

「あの首飾りは私が持っています。私の侍女が持ってきました」


リティス様はむくれたような声でそう言った。


「私が命じたわけではないのです。侍女が勝手に、あの首飾りを持ってきただけ」


「では、何故すぐに返さなかったのですか?」


ツェン姉様は冷静に訊ねた。


「そ、それは…、首飾りが盗んだものだとは」


「知らなかった、と。でも、出所が分からない首飾りなら、普通はどこから持ってきたのか訊ねませんか?」


「………」


言い訳が見付からなかったのか、再び黙り込んだ彼女を見ているうちに、私はふと思い付いた。


「メイリア様のような首飾りが欲しい、と侍女に言いませんでしたか?」


「確かにそのようなことは言ったわ。でも、その程度のことは普通でしょう」


リティス様は苛立たし気に言った。ツェン姉様も、不思議そうな顔になった。


そう、確かに、見事な装身具を羨ましがるのは、おかしくもなんともない。けれど――。


「何回言いましたか?」


――当たり、ね。


リティス様が瞳を揺らした。私の質問の意図に気付いたらしい。ツェン姉様のほうは、まだ不思議そうな顔のままだ。


「繰り返し繰り返し、あの首飾りが欲しい、と言い聞かせませんでしたか?」


「た、だだ羨ましがっただけよ!言い聞かせただなんて」


「手に入れるにはどうしたらいいと思う、と訊ねませんでしたか?」


「………」


「訊ねたのですね?」


「…ええ」


やっぱりそう。確かに、盗ってこいとは命じていないだろう。でも、これは、


「言外に圧力をかけたのですね?」


ずっと冷静だったツェン姉様の口調が、強くなった。


「そんな言い方をされれば、侍女は首飾りを持ってこなければならない、と思い込んだはず」


「強迫観念を抱いた侍女は、"勝手に"首飾りを盗んだ。確かに、出所は話さなかったでしょう。だって、あなたはもう首飾りの出所が分かっていたのだから!」


「………」


ツェン姉様の糾弾に反論できず、リティス様は悔しそうに顔を歪めたけれど、


「…首飾りはどこですか?」


「…私の、寝室に」


もう、抵抗する気はなくなったようだった。






首飾りは、メイリア様の手元に戻った。


でも、彼女が私達に感謝することはなかった。どういうわけだかもともと嫌われているので、これは仕方ない。


本当に接点はなかったはず、と記憶を引っ繰り返す私を、ツェン姉様は微妙な顔で見ていた。…よく分からない。


リティス様は、首飾りを隠し持っていたけれど、侍女に盗むように命じたわけではないので、謹慎処分で済んでしまった。


でも、実際に首飾りを盗んでしまった侍女も、実家に戻されるだけで済んだ。これを聞いた時は、思わずほっとした。


それから、一度犯人扱いされたのが原因で、メイリア様のところに居づらくなったシャオは、なんと睡蓮宮に引き取られた。


今は、みんなと一緒に楽しそうに働いている。


こうして、首飾り騒動は幕を閉じた。






そうそう、もう1つ。


シャオがこちらに移ってきた日。彼女は、簪と櫛を持ったツェン姉様に手招きされていた。


見て見ぬふりをした私を、どうか許してほしい。


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