首飾り 5
首飾り探しは、ますます重要なものになった。
睡蓮宮の侍女なら、ツェン姉様が守ることができる。けれど、シャオについてはそうもいかない。
私達はひとまず、睡蓮宮の侍女を見掛けたという人を探すことにした。
私は、どこかに行ってしまったメイリア様を探すつもりだったけれど、ツェン姉様曰く、
「そんな面倒なことをしなくても、メイリア様の行動を辿ればいいわ」
思わず納得した。わざわざ探し出してごちゃごちゃ言い合いになるより、そのほうが簡単そうだ。
あれだけ派手な人の行動なら、すぐに辿れそうだし。
そんなわけで、私達は手分けして、メイリア様を見た人に話を聞くことにした。
メイリア様の行動は派手すぎ目立ちすぎで、とても辿りやすいものだった。
メイリア様が擦れ違った人々は、誰もが彼女が歩いて行った方向を覚えていた。
「あまりにじゃらじゃらと鳴っているので、思わず目で追ってしまいまして…」
と言っていたのは、この近くに届け物をしに来たという侍女。
…ここまで注目されているとは思ってなかった。
「本人は気付いてないのかしらね」
ツェン姉様も、呆れ返った顔でそう言う。
「…注目されることに慣れているからでは?」
「それにしても、周り中に呆れられているのも気付かないなんて。ある意味感心するわ」
本当に感心した顔になって瞳をくるりと動かしたので、私は思わず吹き出した。
私達は、あの証言の主にも簡単に行き着いてしまった。
妃である姉を訪ねてきたという女性が、
「私がここを通った時には、メイリア殿下とリティス殿下がお話なさっていましたが」
と教えてくれたからだ。
「リティス様ですか…?」
ツェン姉様が片眉を上げる。
無理もない。リティス様はメイリア様の取り巻きではなくて、違う派閥に属しているから、仲は良くないはずだ。
何はともあれ、相手にお礼を言った私達は、リティス様を訊ねた。
見間違いや勘違いをしたのか、嘘をついたのかは分からないけれど、彼女が手掛かりになるのは間違いない。
ところが、
「知りません」
首飾りを持っていたという侍女について訊くと、返ってきたのはそんな言葉だった。
私とツェン姉様は、ちらりと目と目を見交わす。
――嘘だわ。
すぐにそう思う。
リティス様はどう見ても挙動不審だった。目は落ち着きがないし、手を握ったり開いたりと忙しい。
「ですが、メイリア様は、私の侍女が首飾りを持っていたと聞いたとおっしゃってました」
メイリア様は"リティス様に"聞いた、とは言ってなかったけれど、ツェン姉様はそこのところは誤魔化してしまった。
リティス様は、しばらく私達を睨みつけてから、ぼそりと言う。
「私は睡蓮宮のほうに歩いていく侍女が首飾りを持っているように見えたと言っただけです」
「本当にそんな侍女を見たんですか?」
「………」
顔を背けてしまったところを見ると、これも嘘かもしれない。
こちらがそう思ったのが分かったのか、唇を噛み締めたリティス様は、渋々と言った感じで口を開いた。