表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/217

V-065 中継点開業

 関係者一同が西の桟橋に並ぶ。

 1歩前に、俺とエミーそしてローザが並んだ。


 ドロメ騎士団のラウンドシップは小型のダモス級輸送船を改造したものだ。

 装甲甲板に、75mm砲塔が前に3つ後ろに1つ付いている。

 小規模騎士団だから戦機は持っていないだろう。獣機を数機使って落穂拾い的に鉱石を採取しているのだろうな。


 艦橋横の扉が開き、可動橋が桟橋とドロメの扉を繋いだ。

 5人の男女が姿を現す。

 

 俺達が拍手をする中、嬉しそうに手を上げて応えてる。ノリは良さそうだな。

 俺から数歩離れて彼らが並ぶ。

 ドロメの騎士団員はドロメの装甲甲板に一列に何時の間にか並んでいた。


 「ようこそ、我が領地へ。ヴィオラ騎士団と中継点関係者はドロメ騎士団を歓迎します」

 「最初の利用者となれて光栄です。そして、危ういところをありがとう」


 2人の男が1歩前に出ると、年かさの男が俺に答礼をする。

 それを合図にエミーとローザが、花束を持って歩み寄り2人に花束を贈呈した。

 相手の男達は笑顔で受取ると、握手をしているぞ。


 それを見て、周囲で成り行きを見ていた者達が一斉に拍手をする。桟橋の左手奥にはラドネス騎士団と見える連中が集まっていた。

 

 簡単なセレモニーが終ると、ドロメ騎士団長達は入港手続きに居住区へと向かう。他の団員は早速商会の事務所へ向かって歩いて行く。

 ちょっとした息抜きだな。


 そんなセレモニーを終えた俺達は、モノレールで東の桟橋に停泊しているヴィオラへと向かった。


 早速、礼服を脱ぎ去りジャグジーに向かう。

 ようやく、拠点として機能し始めた事を誇らしく思うのか、皆の顔が微笑んでいる。

 

 「少なくとも、10日は私達は出られないと思うわ。それと、母から聞いたんだけど、フラグシップが2ヵ月後に完成するわよ。このヴィオラには1年も乗船してないけど、もうすぐお別れになるわ」

 「でも、隣を走ることになるんでしょう。かなり火器コントロールプログラムをいじったから愛着もあるのよね」


 確かに、この船では色々あったからな。

 だが、フラグシップを早く見たい気はするな。

 問題は搭乗員をどう変えるかだ。大型にはなるが搭乗員は少ないらしい。

 獣機も搭載すると言っていたが、フラグシップに積むよりはこのままヴィオラに積んでいた方が良いだろう。

 

 「早目に人員配置をクリスと相談した方が良いぞ。その時になって慌てるよりはいい」

 「明日にでも、そうするわ。まだ決めなきゃならない事も沢山あるし……」


 「そう言えば、シエラ母さんとイゾルデが騎士団で働きたがってたんだけど」

 「確か農園を経営してるのよね。王都の事務所を担当して貰えると嬉しいわ。リバリー商会がビルの一角を貸与すると言ってくれてるの。もちろん家賃は払うけど、騎士団領への入港手続きや来訪申請やらで結構事務手続きがありそうなのよ。旧騎士団の人達に頼んでるんだけど、人が足りないって文句を言われてるわ」


 アレクはどう思うだろう?後で教えてやろう。

 イゾルデの友人を迎えるのも良いだろう。意外と王都での暮らしは楽しいかも知れないぞ。


 ジャグジーから出たところで、今度は皆でビールを飲む。もう朝の6時だから、早起きする連中は散歩でも始める時刻だが俺達はこれからが睡眠だ。

 

 エミーとフレイヤを連れてベッドに向かうのを恨めしそうにドミニク達が見ている。

それでも諦めたようにレイドラと溜息を付いている光景がドアを閉める時に見て取れた。


 睡眠不足だから、ベッドに倒れこむようにして横になった。

               ・

               ・

               ・


 次の日。

 皆で昼食を終えると、ドミニク達は騎士団長との会議に出掛け、フレイヤはエミーと共にローザやサンドラ達とボードゲームをするんだと言って待機所に出掛けて行った。

 残ったのは俺だけだから、部屋でのんびり過ごすことにした。


 コーヒーを飲んで一服すると、少し早いがお昼寝としよう。

 数時間も寝てないんじゃないかな。それを考えると皆元気だなと感心してしまう。

ぐっすりと寝込んだ俺だったが、ふと目を覚ますと隣にカテリナさんが寝ていた。


 「あら、起きちゃったの。どう? 早速着てみたのよ!」


 嬉しそうにシーツを捲ると、あの下着を着ていたぞ。

 ピンクに黒の縁取りはちょっと扇情的だな。

 

 カテリナさんを抱き寄せるとしっかりと抱きしめる。そして手を……。

 

 「あらあら、大胆ねぇ」

 

 俺の耳元でそんな事を呟いた。

 まあ、買ってしまったのは仕方が無い。何時までも着られるものじゃ無さそうだし。


 1時間後、2人でジャグジーで体を洗うと何事も無かったように衣服を整えた。

 ソファーに座ったカテリナさんにコーヒーカップを渡して、俺もマグカップのコーヒーを飲む。

 そんな俺をみて微笑みながら、カテリナさんはタバコに火を点けた。


 「明日、ヒルダ達がやってくるわ。吃驚すると思うわよ」

 「まだ話していないんですか?」


 「もちろんよ。エミーにも長距離通信の代金は高額になるって言ってあるしね」


 遊んでるな。

 そんなに高くはないと思うけどね。衛星回線だから、1秒いくらって感じだけど、長く話さなければ、1回100Lを超える事は無いんじゃないかな。


 「エミーにローザが、短剣を強請れって言ってましたよ」

 「そして、ローザはあの護身用拳銃を強請るんでしょうね」


 そういえば、ローザのガンベルトにはゴツイホルスターが付いていたな。

 俺がプレゼントしてやろうかな。

 幸い、貰い物の宝石が沢山あることだしね。

 と言うか、全員分を作ってやるか。ドミニク、レイドラ、フレイヤにローザ、それとクリスか……。全部で5丁なら少しは値引き交渉が出来るだろうし。

 騎士でなくとも護身用ならそれ程奇異な目で見られることは無いだろう。


 「何を考えたの?」

 「皆に護身用の拳銃をプレゼントしようかなと……」


 「そうね。だったら、ベレッドに頼んでみたら? 彼の拳銃作りはかなり有名よ。そして、士官用となれば、ベレッドなら彼の師匠に頼むでしょうね。たぶん3つの王国で一番のカスタム拳銃作りよ」

 「カテリナさんも欲しいですか?」

 

 「残念ながら、既に持ってるの。リオ君の拳銃のもう片方よ。結婚記念にベレッドからの贈り物だったのよ」

 「すみません。大切な物だとは知りませんでした。これはお返し……」


 「気にしなくて良いわ。形見としてドミニクにあげたものだし、ドミニクがそれをリオ君にあげたのならそれで良いわ」

 

 そういえば、貰っただけであまりジッと見た事は無かったな。

 改めてホルスターから取り出すと、グリップにヴィオラ騎士団の象嵌が入っていた。

 変わった形だが、持ちやすい。今度射撃訓練に行ってみようかな。


 「そうそう、これをアリスに渡してくれない。ラボの連中と頑張ってみたんだけれど上手く行かないの。アリスなら上手くプログラム化出来るかもしれないから」


 そう言ってクリスタルキューブをテーブルの上に置いた。

 記録媒体だな。これに作業内容とカテリナさん達が考えたプログラムの断片が入っているのだろう。

 

 「コーヒーをご馳走様」と言ってカテリナさんは帰っていった。

 忘れない内に、アリスにキューブを託す。

 後はアリスに任せておこう。たぶん知恵の輪みたいなプログラムなんだろうな。

 

 そして、誰も帰らないうちに早速、銃の製作をベレッドじいさんに頼みに出掛けた。

               ・

               ・

               ・


 ベレッドじいさんの所から戻る途中で待機所に寄ってみる。

 いつもの場所にはボードゲームに興じるエミー達と、そんな彼女を達を見ながらビールを飲んでいるアレクとグレンは退屈そうだな。


 俺がソファーに座ると、グレンが缶ビールを手渡してくれた。


 「全く、サンドラ達は良く飽きないものだ」

 「リンダもです。軍隊内では懲罰ものですよ」


 片方は夢中になって遊んでるのに、こっちはビールをちびちび飲んでるだけではな。不満も言いたくなるだろう。

 

 「俺達もやりましょうか?」

 「カードは俺が持ってます!」


 バッグから、まだ封も切っていないトランプを取り出したグレンを、アレクが呆れた顔で見ている

 それでも、文句を言わないところを見ると、アレクもやりたいってことなんだろうな。


 「それでは……」


 そう言って、グレンがカードを配る。

 最初に1枚カードを抜いたところを見ると、ババ抜きだな。

 どのカードを抜いたか分らないから、結構おもしろいんだよな。


 そして、俺達の熱いバトルが始まった。


 「いったい何時まで遊ぶつもりじゃ? そろそろ食堂に出掛けるぞ」

 「ホンと、子供なんだから」

 

 お腹を空かせたフレイヤ達が文句を言い始めた。

 自分達をさて置いて良い気なものだ。


 ……で、勝負の結果は?

 勝った数だけ積み上げた手元のコインを互いに確認すると、アレクの負けだな。


 「という事で、アレクの奢りだな」

 「ゴチになります!」


 「しょうがない。食堂のワイン1杯で良いな」


 5Lだから大した額ではないが、何となく嬉しくなるな。グレンと顔を見合わせて微笑んだ。


 食堂は、あまり混んでいない。どうやら、商会の建屋の中にあるレストランに流れたようだな。

 ちょっとした変化が嬉しいんだろう。でも値段が違うから、今後はたまに出掛けるだけになるだろう。

 その辺は、食堂の責任者も心得ている筈だ。


 今日は野菜たっぷりの焼肉だ。

 ワインを飲みながら皆で西の賑わいを眺める。


 「桟橋にだいぶ人が出ているね。ラウンドクルーザーが4隻も入ってるんですもの。その内、2つは中規模騎士団よ。そうなると、上陸している人だって500人以上はいるわ」

 「警備の人達も大変ね」


 桟橋から10mは立ち入り禁止だから、落ちる人はいないと思うけどね。

 それでも、酒が入ると喧嘩位はあるんだろうな。


 「小規模騎士団は今日中には出発するそうよ。24時間以内の休憩なら1万Lで済むからね。2日で2万、3日で4万って2倍に増えるらしいわ」

 「24時間なら、水と食料の積み込みは出来るか……。王都なら最初から10万だからな。意外と良心的な入港料かも知れんぞ」


 「問題は、大規模騎士団と12騎士団ね。明日にはレブナン騎士団が来るわ。戦機5機を持つ騎士団よ。そして5日後に問題の騎士団サーペントがやってくるらしいわ」

 「戦鬼を2機持ってる騎士団ね。2隻で行動していると聞いたけど……」


 戦鬼2機は凄いな。

 そうなると、彼らの自尊心を保つ為にもムサシとアリスは確認しておきたいところだろう。

 見せる位は構わないが、要求はそれぐらいじゃ済まないんだろうな。


 「どんな要求をされるかと思うとね」

 「だが、地位はリオの方が上だ。まさか公爵閣下に向かって命令するとは思えないが?」

 

 そういう事も考えて、俺を公爵にしたのか?

 確かに、他国に乗り込んでその国の長に向かって命令は無いだろう。

 ドミニクが10日は出られないと言ったのはそういう事かも知れないな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ