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V-045 ちいさな小島

 キングサイズよりも大きなベッドの真ん中に、4人で集まらなくても良いんじゃないかと俺は思うな。

 目が覚めると身体がまったく動かない。

 左右から抱き着かれて、胸の上にはレイドラがいた。


 何とか逃れようと、もぞもぞ動いたら全員が目を覚ましてしまった。

 そのままジャグジーに行って軽く汗を流す。

 時計を見ると既に1030時だ。


 急いで身支度を始めたのだが、3人とも下着代わりにビキニを着ていたぞ。

 テニスルックモドキで白のスニーカーを履いて、3人が並んでメイクを始める。

 時間が掛かりそうだから、ソファーでタバコを楽しむことにした。


 一応、騎士の資格があるから、ガンベルトを着けている。これに着けた小さなバッグが俺の小物入れになる。

 財布には小銭が沢山あるからチップは大丈夫だな。

 

 メイクが終った彼女達は美人の上に超が付きそうだぞ。

 それぞれのバッグに荷物を詰めると、忘れ物が無い事を再度確認する。


 「さあ、出掛けましょう!」


 フレイヤを先頭に1階のロビーに降りると、カウンターに行き渡されたカードを使って支払いを済ませる。そこで荷物を預けると、朝食を取りにレストランに入った。


 軽くトーストとハムエッグそれにコーヒーが朝食だ。

 これから十分贅沢が出来るからな。

 3人とも太らなければ良いんだが……。


 レストランを出たのが1140時。ロビーで彼女達がおしゃべりを始めたのを見て、少し離れた喫煙所でタバコを楽しむ。

 

 そういえば、バッグの中にタバコの箱は1つだけだったぞ。

 慌てて、カウンターに行って、1カートンを買い込んだ。

 俺のバッグにしっかりと入れて置く。

 ついでに、4人のバッグを引き取って、彼女達のところに持って行った。


 12時5分前に、ロビーに身なりの良い壮年が現れると、俺の名を呼ぶ。

 どうやら、迎えに来てくれたようだな。


 俺は片手を上げてバッグを曳いて、俺の名を読んだ男性に近付いた。


 「俺がリオですけれど……」

 「ご案内致します。お連れ様が3人と聞きましたが、そちらのお嬢様方ですね。……さあ、こちらです」


 玄関に出ると、大型の円盤機が降りていた。

 クルージングと思っていたが、これで一気にプライベートアイランドに向かうようだ。


 ヴィオラの円盤機よりも数倍大きい。これなら10人は乗れそうだ。

 俺達が円盤機に乗り込んで席に着くと、静かに上昇を始めた。そして一気に南方へ飛行を始める。


 「自然を可能な限り残そうと言うことで、島の周囲の珊瑚礁をそのままにしてあります。おかげでクルーズ船が着岸する港もありませんし、岸に近付くことも出来ません」


 そう言う事か。

 前のクルーズでは確かに船長が入念に着岸するコースを選んでいた。

 船を着けるのであれば、どうしても珊瑚を削って道を作らねばならない。それをしないという事は、自然が満喫できるって事だろうな。


 約1時間程乗っていると、大きな窓越しに島が見えてきた。


 「あの島が目的地です。常時50人が皆様のお世話をする為に滞在しております」

 「という事は、客も最大で50人を超えないと?」


 「はい。最大で20人に制限しております。それ以上のお客を招くときは最大規模のプライベートアイランドを使います」


 という事は、かなりのVIP待遇ってことだろう。

 気になるのは、他の客だな。まあ、大方王女様の友人達だろうけどね。


 椰子の林の中の一角にある円盤機の発着場に到達すると、俺達はバッグを引いて島に降り立った。

 いきなり太陽が眩しい程に俺達を焼き付ける。慌ててサングラスを取り出した。


 「こちらがこの島のセンター施設になります」


 男性が俺達の先に立って歩き出した。その両手には俺達の持つバッグの2倍程のバッグを曳いている。

 この男性もこの島の住人なんだろうか?


 そして、木造平屋の大きな建物が俺達の前に現れた。

 外壁は全てガラス張りだ。

 中に入ると、外の温度が嘘のように心地良い。


 奥にあるカウンターには水着姿のネコ族のお姉さんが2人立っていた。

 早速、受付を行って、部屋のキーを受取る。キーと言っても小さなブレスレットだ。人数分を貰うと、部屋の奥から別のお姉さんがやってきた。


 「ようこそにゃ。リオ様達の部屋に案内するにゃ」

 

 そう言って、外に出るとそこには2台のサンドバギーが置いてあった。

 1台で数人が乗れるみたいだ。

 俺達のバッグを運転手が後ろのカーゴベースに乗せると、俺達は2人ずつバギーに乗り込んだ。

 お姉さんも助手席に乗り込む。


 「この車の運転は簡単にゃ。ギヤは前進と後退しかないにゃ。アクセルにブレーキで走ったり止まったり出来るにゃ。ライトのスイッチはダッシュボードに大きく表示されてるし、方向はハンドルを使って行うにゃ。その上、衝突防止機能が付いているから、未だかつてこのバギーで事故は起きてないにゃ」


 まるで、遊園地のゴーカートみたいだ。

 時速20km程の早さで10分程走行すると、海に浮かぶコテージが数個見えてきた。

 あれが俺達の宿泊する場所か。


 そんなコテージ近くの駐車場にバギーが到着する。

 直にお姉さんがバギーを降りて俺達を集めた。

 

 「4つの海上コテージにゃ。真ん中にある大きなコテージはパーティ会場兼食堂にゃ。そして、リオ様達のコテージはあれになるにゃ」


 お姉さんが指差したのは一番奥のコテージだった。

 木造の桟橋をゴロゴロとバッグを曳いてお姉さんの後に続く。

 そして、お姉さんがコテージの扉を開くと……そこには、カテリナさんが水着姿で俺達を出迎えてくれた。

 

 「カテリナ様に一通り説明しておいたにゃ。夕食は19時からにゃ。ここからの夕焼けは綺麗にゃ」


 そう言って呆気にとられている俺達を置いて帰って行った。


 「何で母さんがここにいるの?」

 「あら、私だって関係者よ。それにリオ君をめぐる美女の一人だと思ってるけど?」


 ドミニクの言葉もカテリナさんにはどうってこと無さそうだな。

 とりあえず、バッグを寝室の端に並べておいて、皆で水着になった。

 リビングに戻ると、カテリナさんが全員の飲み物を用意してくれていた。

 冷蔵庫に沢山飲み物が入っているらしい。

 

 「お腹が空いてるでしょう? 一応、用意してくれてたみたい」


 そう言って大きなお皿をテーブルに乗せる。

 サンドイッチの山盛りだ。

 

 サンドイッチを食べながら4人の水着を見てみると、一番布地が少なく見えたレイドラのビキニがマシに見えてきた。

 カテリナさんのビキニは殆ど紐だぞ。

 

 「やはり、リオ君は男の子ね。良かったわ。私に釘付けにならなかったらどうしようかと思ってたの」

 

 そう言って席を立って寝室に歩いて行く。3人の足が俺の足を蹴飛ばしてるのに理不尽さを感じるぞ。

 そして寝室から出てきたカテリナさんはレイドラと同じ型のビキニだった。

 最初からその水着だったら良いのに、俺で遊んでるな。


 食事を終えると、フレイヤ達はコテージの探検を始める。俺は後で教えてもらえればいい。

 残った俺とカテリナさんで、タバコを楽しむ。

 カテリナさんが何時の間にか俺の膝に乗ってる。

 Tバックだから、殆ど裸のお尻が腿に乗ってる感じだ。


 「私が処方した薬はちゃんと飲んでるの?」

 「ちゃんと2錠ずつ飲んでますよ」


 「ここにいる間は1回に3錠にしなさい。判ったわね」

 

 「はい」って答えた俺に優しく唇を寄せる。

 アリスが『害は無い』って言ってたから大丈夫なんだよな? ちょっと心配になってきたぞ。


 カテリナさんが俺から離れると同時に、3人が帰ってきた。

 ちょっと不思議そうな顔で俺達を見ているぞ。


 気にしないで、ピルケースから3錠取出して、トロピカルドリンクで飲み込んだ。

 それを微笑ながらカテリナさんがみているのが気に掛かる。

 

 「飲んだら一泳ぎしてきなさい」

 「そうそう、この場所は凄いわ。コテージの周囲だけ深さが3mはあるのよ。ところでリオは泳げるのよね?」


 ドミニクが素朴な質問をしてきた。


 「ああ、泳げるさ。出来ればマスクとシュノーケルが欲しいね」

 「人数分揃ってるわ。マリンシューズとフィンまでね」


 早速、装備を整えて、コテージのテラスから海に飛び込んだ。

 この間のクルーズもプライベートアイランドだったが、やはり常時人が来るのだろう。それなりに魚は多かったが、ここは比べものにならない程だ。


 俺達が珍しいのか、沢山の魚が寄って来る。

 そんな魚達から逃げるように泳ぐのは初めての経験だな。

 30分程魚と戯れて、バルコニーの階段を上ってコテージで一休みだ。


 「私からで良いわよね」

 

 テーブルでジュースを飲んでいた俺達にそう告げると、カテリナさんは俺の腕を掴んで寝室の方へと歩きだした。

 寝室を通り越して、置くのジャグジーに向かう。

 俺の水着を脱がせると、俺の目の前で水着を止めてある紐を引く。

 

 「ジャグジーは終ってからよ」

 

 その言葉に、立ったままでカテリナさんを抱きしめた。

 あれ? ちょっとおかしくないか。

 俺ってこんなに積極的だったかと考える自分がいるのだが、身体は全くそんな事を気にしていないようだ。


 そして、1時間程経った時にはジャグジーで後ろからカテリナさんを抱いている自分に気が付いた。


 「何かおかしくありません?」

 「別にどこもおかしくは無いわ。リオ君は正常な年頃の男の子よ。……ここで、私は終わりかな。リオ君はここにいてね」


 そう言うと俺にキスしてジャグジーを出て行った。水着を着けずにリビングに行ってしまったぞ。


 バシャンっと水音を立ててジャグジーに飛び込んできたのはレイドラだった。素早く後ろから抱きしめる。

 こうしないと俺の背中は傷だらけになってしまう。

 そしてジャグジーからそのまま外にでて、2人の時間を楽しんだ。


 やはり、レイドラも水着を着ないで出て行ったぞ。

 そして、今度はドミニクとフレイヤの2人が一緒だった。

 

 1時間程経ってジャグジーで汗を流しているけど、まだ2人は俺を抱いたままだ。


 「4人を相手に出来るなんて凄いわね。しかもまだだいじょうぶみたいだし……」

 「カテリナさんは何も問題が無いと言ってたけど……。やはり少し変だよね」


 何時に無く積極的なのが気になるな。

 3人でジャグジーを後にする。2人はそのままの姿で、俺はタオルを巻いてリビングに向かった。


 「どう、楽しめたでしょう?」

 「何時に無く積極的でした。理性のタガが一つ外れたように」


 レイドラがカテリナさんに答える。


 「一応、例の薬の副作用なんだけど、許容出来るでしょう」

 「あれって、リオ専用の精神安定剤じゃなかったんですか?」


 フレイヤが驚いて席を立ったが、早く着たほうが良いぞ。誰かに見られたら大変だ。


 「フレイヤとドミニクはリオ君の体の秘密を知ってるわよね。私達4人を相手にしていたらいくらリオ君が特殊な身体でも参ってしまうわ。あの薬はそれで失った元素を補完するためのものよ。そして、ちょっと悪戯して強壮薬と媚薬を混ぜてあるわ。だから後数人相手にしても全く問題が無いの」

 

 前の話は確かに必要だろう。だが悪戯は酷いんじゃないか?


 「なら、問題無い訳ね。それに順番すら関係無いわ。母さんはやっぱり頼りになるわ」


 そんなドミニクの言葉に『そうでしょう』って応じているのも問題だぞ。


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