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V-038 戦機の分配

 ヴィオラのブリッジ出頭すると、直ぐに隣接した一室に通された。

 既に、騎士団長達が揃っている。

 クリスも急いでやってきたんだろうな。俺が最後ってのも変な感じがするけどね。


 「待ってたのよ。おおよその話はクリスから聞いたわ。ここは約束通りにクリスとアデルに戦機を引き渡したいんだけど……。2機目を見つけたリオの意見も聞きたいってことになってるの」

 「これから、カテリナさんやドワーフの技師達が調整をはじめるのでしょうが、1つ問題があります。2機目の戦機はどうやら無人機のようです」


 俺の言葉を聞いて3人の騎士団長がガタンと椅子を鳴らして腰を上げた。

 かなり驚いているな。


 「そんな話は聞いた事も無いわ。それにそこまで電脳は進んでいないわよ」

 「ドミニク! 幾ら約束を何とかかわしたいと思っても、そうは行かないわ」


 「待って。私も初耳なの。ちょっと休憩しながらリオの話を聞きましょう」

 

 そんな所にレイドラが俺達にコーヒーを配ってくれた。そして、俺の前にカタンっとガラスの灰皿を置く。


 「アリスは意思を持っています。デイジーも少し意思を持つようですが、王女様とデイジーは会話をこなす事は出来ません。

 ですが、アリスは個人的な意思を俺に伝達する事が出来ます。

 そのアリスの言葉では戦機には幾つかのタイプがあり、戦鬼と呼ばれるものもアリスにとっては戦機の1つのタイプであると教えてくれました。

 そして、問題の2機目の戦機について、自立型の電脳を持つと教えてくれました。ある程度の作戦の指針を示せば良いとの事です」


 3人が俺の言葉を聞いて互いに相談を始めた。

 のんびりとコーヒーを飲んでタバコを楽しみながら3人の会話の流れを聞く。


 「それって、機士を必要としないという事かしら?」

 「その考えで良いと思います。1人で何機かを制御していたと俺は考えています」


 「やはり、私が頂きたいわ。機士が必要ないなら、理想的よ」

 「そうでも、ありません。問題は誰が戦機に指示を与えるのかという事が分かっていません」


 「何がキーになるかは分りません。しばらくはあの戦機は使えないのでは? と思っています」

 「『誰が、何を指示するか』ということ? それはちょっと問題だわ」


 また3人の騎士団長が相談を始めた。

 女3人寄れば姦しいと聞いたが、なるほどと思ってしまう。

 確か学生時代の友人と聞いた事があるな。いつもあの調子だったのだろうか? そうだとしたら、かなり学園でも目立っていたろうな。

 

 「リオ。アリスは指示を与えれば良いと言ったのね?」

 

 突然、ドミニクが俺に顔を向けると聞いてきた。

 とりあえず、頷いておく。


 そして、再び会話の中にドミニクが入っていく。

 取り残された俺に、レイドラがコーヒーをポットから注いでくれた。

 カップをレイドラに捧げて礼を言う。


 2本目のタバコを灰皿で揉み消した時に、どうやら彼女達の意見が纏ったようだ。

 3人の騎士団長が握手をしている。


 どうやら、自室に戻れるな。

 

 「リオ君。次ぎは私の番だからね」

 

 そう言ってアデルが俺の肩をポンっと叩いて部屋を出て行った。

 

 「とりあえず、1機手に入ったわ。ありがとう」

 

 クリスは握手をして出て行く。

 そして、俺とドミニクそれにレイドラが部屋に残った。


 「とりあえずカリオンとベラスコを戦機ごとアデルのベラドンナに乗船させるわ。ベラドンナには火器が少ないから丁度良いでしょう。

 ヴィオラにはアレク達に頑張って貰わねばならなくなるけど、リオがいるし、王女様もヴィオラに乗船を希望してるのよ。

 ガリナムには戦機が1つだけになるけど、元々が砲艦だからある意味ステータスとして艦首に据えるだけになるでしょうね」

 「次ぎを発掘したらどうなるんだ?」


 「ベラスコをトレードするわ」

 

 そう言って俺をみた。

 カリオンより先があるという事になるのかな。

 ちょっとカリオンが気の毒になってきたが、彼ならどの艦に移っても上手くやっていけるだろう。


 「次の航行は数日後になるわ。しばらくは休めるわよ」

 「そうだな。ゆっくり休ませて貰うよ」


 そう言って、俺は部屋を出る。

 先ずは、待機所に行って、アレクに状況報告だ。


 エレベータで居住区の階に下りて船首に向かって進む。そこが待機所で機士達の溜まり場だ。

 部屋の艦首にあるソファーには、自分の家のようにアレクが2人の美女とグラスを傾けていた。

 俺の顔を見ると早速サンドラがグラスを渡してくれた。

 そのグラスに、アレクが酒を注いでくれる。


 「たいしたものだ。戦機2機が増えたな」

 「それで、騎士団長達が揉めてました。少し俺達の移動があるみたいです」


 「何だと? 言ってみろ」

 「カリオンとベラスコをベラドンナに移動させるそうです。ガリナムには新たな戦機と新人になるでしょうね。戦機1機は保留です」

 

 「保留って?」


 シレインが疑問に思ったのだろう。聞いてきた。


 「今日運んで来た2機の戦機ですが、1機は無人機なんです。自律型らしいんです」

 「何だと? そんな戦機、聞いたことが無いぞ」


 「その辺は俺にも分りません。カテリナさんやベレッドじいさんが詳細を調査してくれるでしょう」

 「そうね。カテリナ博士がいるから安心だわ」

 

 サンドラはそう言って納得してるけど、俺は趣味の世界に生きてる人にしか見えないんだよな。

 

 アレクと別れて今度は食堂に向かった。

 やはり、ヴィオラの食堂は大きい。ガリナムの2倍はあるぞ。

 ネコ族の少女にメニューを聞くと、夕食帯の前なので軽いものしか出来ないらしい。

 お任せしますとお願いすると、出て来たのはラザニアのような料理だった。あっさりしたスープにサラダ付き。十分夕食になるんじゃないか?

 食事が終ったら柑橘系のジュースまで出て来た。


 「夕食にしようとマスターが考えた料理にゃ。感想を言ってくれればタダで良いって言ってたにゃ」


 何と2度美味しいって感じだぞ。


 「そうだね。夕食のボリュームとしては十分だと思う。女性にはサラダに果物を追加しても良いかも知れない。それと、この料理は俺には丁度良いけど、少し小さめでも良いかも知れない。大と小って感じかな。スープもあってると思うよ。最後のジュースはコーヒーと選択出来たら良いかもね」

 

 俺の言葉をうんうんって頷きながら聞いていたネコ族の少女が、頭を下げてくれた。


 「今ので十分にゃ。マスターも喜んでくれるにゃ!」


 ホントにタダになったぞ。

 厨房の奥に向かって『ご馳走様』って言うと、食堂を出て、自室に戻る。

 

 ようやく休めるな。

 冷蔵庫から持ってきたビールのプルタブを開けてドカっとソファーに腰を下ろす。


 船窓からはホールの工事風景が見えるけど、分厚いガラスが騒音を遮断してくれる。防弾ガラスの3重窓らしいからな。装甲シャッターっているんだろうか?


 時間的には15時過ぎ、フレイヤもドミニクもまだ仕事をしている筈だ。神出鬼没のカテリナさんもオモチャに夢中の筈……。


 丁度良い時間だから、次の定期便の注文を出しておこう。

 世話になっている人達と自分達で飲む酒、そして、タバコにコーヒーを注文する。

 そして、ドミニクとレイドラにだけ下着と言うのも変な感じだから、4人に贈っておけば問題はない筈だ。


 早速、端末を操作してスクリーンにカタログを表示させる。

 俺の嗜好品は直ぐに入力を終えたのだが、下着が問題だ。

 とりあえずカタログを開くとあるわあるわ……。これが下着ってのもあるぞ。こんなの意味無いじゃないかと言いたくなったが、人様々って言うし、個人の問題だろう。

 とりあえず、適当に注文しておくか……。

 とそこで、サイズの壁があることに気が付いた。

 これは、協力者を得なければ注文が出来ないぞ。

 

 「アリス。ちょっと相談なんだが……」

 『何でしょう?』


 「アリスはヴィオラの電脳に入れるよね。ちょっと調査して欲しい情報があるんだが……」

 『ヴィオラなら十分可能です。何を調査しますか?』

 

 「俺が見ているカタログの製品を、フレイヤとドミニク、レイドラとカテリナさんに贈りたいんだけど、サイズが分らなくて」

 『問題ありません。氏名とカタログナンバーそれに色を教えていただければ、私が発注しておきます』

 

 ありがたい。さすがはアリスだ。こういう時には頼りになるな。

 早速、フレイヤから選び始めた。


 そして、注文を終えた時に俺の残高もついでに確かめてみる。

 給与が振り込まれているし、ボーナスも入ってるみたいだ。500,000Lを超えてるぞ。

 そして、先程の買い物の結果は-25,000Lだ。どうやら、あの下着4人分で12,000Lを超えたらしい。あんな小さな布着れにか?

 ちょっと理不尽さを感じるが、まだ貯金があるから気にしないで置こう。

 

 注文が終ったので、艦内案内を確認する。

 ニュース以外に、掲示板的な目的で艦内案内が作られているらしい。

 そこには拠点の進行状況が簡単に纏められていた。


 ホール内の空気が置換された日にモノレールが2本開通したみたいだな。

 北と南に東駅、中央駅、西駅の3つの駅が桟橋を結んだようだ。ホールの大きさは1.5kmは無いんだから歩いても良さそうだけどね。

 そして、ヴィオラ騎士団専用桟橋には、やはりプールが作られるようだ。横幅50m長さ200mの大型プールには、波まで再現されるようだ。自称サーファーが多くなりそうだぞ。

 中央桟橋は横幅を狭くして東西にラウンドシップが停泊出来る。西の桟橋には中継地点の管理を行なう大きな事務所が建ち始めている。宿泊施設や商店等も、この桟橋に出来るらしい。

 多目的ビルが2つ建設されている。そして、カテリナさんのラボはヴィオラ専用桟橋の内部に引っ越してきたようだ。

 こっちの方が居心地が良いのだろうか?

 それでも、必要な電力や資材は全て中継地点の事務所が提供してくれるというから、向うにとってもお邪魔なのかも知れないな。

 

 そんな画像を見ながら温くなったビールを飲んでいると、フレイヤとドミニクが帰ってきた。

 

 早速、ソファーに座ってビールを飲み始める。


 「これを見てたのね。当初の計画とだいぶ変わってきたでしょう。私達の桟橋を変えなければ彼らに自由にさせても良いと思ってるの。維持費が全て向こう持ちだから、それ位は許可してあげないとね」

 「俺もそれで良いと思うよ。王女様もいるんだし、あまり図々しい事は出来ないだろうしね」


 「それより、問題はあの戦機ね。母さんも頭を捻ってたわ」

 「飾っとくしかないの?」


 「そうでもない。アリスは俺なら起動できると言っていた」

 「さっきは言わなかったわね。でも、それで良かったかもしれないわ。あくまで結果論にしたいから、黙っているのよ」


 とは言うものの、カテリナさん辺りが勘付きそうだな。

 

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