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V-019 拠点造りの始まり

 陸港の巨大なガントリークレーンが次々とバージに資材を搬入している。

 確か2台分の鉱石は運んできたはずだが、それはちゃんと荷降ろしが済んでいるんだろうか?


 そんな光景をスクリーンで眺めながらヴィオラの待機所で過ごしている。


 「何か必要な物はない?」

 

 サンドラがカタログを俺達に渡しながら言った。

 

 「どうやって注文するんですか?」

 「携帯のメニューで購買を選んで、このカタログに付いてる番号を入力すれば良いわ」


 そんな形で発注出来るのか。

 感心しながらカタログを開くと、早速蒸留酒の強い奴を3本、ビールを3ダースそれに少し高給なワインを数本手配する。これも良いかもしれないと葉巻1箱を追加する。

 明日の昼前には届くらしい。

 そういえば何時も、アレク達に酒をご馳走して貰ってたな。

 思い出して、直ぐに少し高給なウイスキーを追加した。3本あれば十分だろう。〆て、12,000L。食うには困らないからたまには散財してもだいじょうぶだろう。


 「それにしても、ラウンドシップ3隻か。本拠地を持つとなれば、上級騎士団になるな」

 「それでも、戦機が増えないのが問題よね。リオに期待してるわよ」


 「そんなに、転がってる訳じゃないですよ。あれは運が良かっただけです」

 「でも、それを期待してるんでしょうね。同盟の相手は下級騎士団だから戦機は喉から手が出るくらいに欲しい筈だもの」


 あの3人の騎士団長が、同盟にサインをした日から3日が過ぎている。

 確かに、そこには戦機が手に入るかもしれないという思惑が絡んでいるのは確かだな。

 

 たぶん複数機を手に入れるまでは同盟が続くのだろう。

 後で見せてくれた同盟の誓約書には期間を10年と定めて、再度更新の手続きをすることが書かれていた。

 そして、細かな取り決めが数ページに渡って記載されている。

 給与、戦機の分配、指揮系統……。色々と副騎士団長達が取り決めていたようだ。

 それでも、『……記載なき事項は騎士団長3人の協議による』と結ばれていたのには恐れ入った。


 「俺達のバージにも荷物が満載だ。他の2隻も小さいながらもバージを曳いてくるんだろうから、かなりの資材が運ばれるな。

 たぶん、定期便の交渉が終了するまでは1隻を定期便とせざる得ないだろう。場合によっては俺達が2つに分かれるぞ」

 

 「その時は俺が行こう。俺の戦機は装甲を落として、その分燃料を多く積み込んでいる。リアクターの出力も3割ほど上げてあるから、機動戦が出来る」

 「1機では不安だな。ベラスコを連れて行け。元は俺の機体だ。短時間なら、お前の戦機を馬力で越える」


 アレクが、カリオンにそう言うと、ベラスコの目が輝いている。

 早く一戦したいって感じだな。だけど、そんなことがないようにするのが騎士団長の勤めだから、あまり期待しない方が良いと思うぞ。


 『ヴィオラ騎士団に連絡します。ヴィオラは現在資材の積み込み中ですが、明日の夕刻に積み込み終了の目途が立ちました。出発予定時刻を明日2000時とします。繰り返します……』


 「出発は明日か。……さぞかし皆が待ってるだろうな」

 「ちゃんと土産は用意しました」

 「お前もか?」

 

 どうやら、アレクも用意したらしい。でも、ドワーフ族は酒が好きらしいから、いくらあっても困らないとは思うな。

               ・

               ・

               ・


 「もう少しで出発ね」

 

 優雅に、昼前に届いたワインを飲み始めたのはフレイヤだ。

 ワイングラスを回しながら飲んでいる。

 

 1本500Lだから、高級品だと思うな。

 俺も、タバコを吸いながら飲んでいるけど、食堂のワインとは明らかに違う。

 

 「たぶん数百Lってとこね。ワインの値段的には中の上って所でしょうけど、これ位が私には合ってるわ」

 「結構、高いと思ってたんだけどな。もっと上があるのか」


 そんことを呟いていると、ゆっくりとヴィオラが動き出した。

 他の2隻も後に続いてく筈だ。

 そして一番遅いのがヴィオラになるんだよな。

 巨獣を目にして、迎撃できるかどうかで船の速度が変わるのは仕方がないんだろうが、船団を組む時には不便だな。


 「だけど、ガリナムには驚いたわ。あれはガンシップね。75mm長砲身が12基よ。少し北上しようとして改造したらしいけど、戦機2機分に相当するんじゃないかしら?」

 「ベラドンナも凄いぞ。ヴィオラよりは小振りだがリアクター出力は十分だ。獣機を沢山乗せて落穂拾いに徹していたんだろうけど、低緯度をかなり長期間活動出来るように造られてる」


 活動する騎士団に合わせて少しずつ特化していくんだろう。

 まだ見た事はないけれど、12騎士団のフラッグシップとなれば、軍の戦艦並みに特注してるんじゃないか?


 2m四方はある舷窓から摩天楼が次々と現れては後ろに走り去る。

 俺達は、何時しか寄り添ってそんな光景を眺めていた。


 そして、次の日。

 夜の間に防壁を越えたのだろう。窓の外には荒地が広がっていた。

 何時の間にかソファーで寝ていたみたいだな。

 フレイヤを揺り動かして起こすと、2人でシャワーを浴びる。

 

 フレイヤの当直開始までには、まだ間があるらしい。

 それでも、戦闘服を着込むとその上に袖の無いミニのワンピースを着込む。サイドに赤いストライプが走っている。

 何時の間にか制服が変わってるぞ。

 

 俺の方は何時も通り。Tシャツに白いスラックスだ。

 腰にガンベルト付けて、食事をする為に食堂へと出掛ける。


 朝が早いのか、食堂に人は少ない。俺達は左舷の窓際に席を取って、ネコミミの女の子に朝食を注文する。

 届けられたハムエッグを食べながら外を眺めていると、やや離れた位置を併走するガリナムの姿を見つけた。

 

 となると、右側にはベラドンナがいるんだろうな。

 上空から眺めるとさぞかし堂々とした姿に見えるだろう。


 バージに荷物が満載だからあまり速度は出せない。時速30km位の巡航速度を維持して俺達が拠点に着いたのは10日も経ってからのことだった。


 洞窟の中に次々とラウンドシップがバージを曳いて入って行く。

 あのホールで転回は難しいと思っていたのだが、中に入っていくとラウンドシップからバージを切り離して獣機がそれを片方に並べていく。

 ホールの中はラウンドシップの明かりで煌々と照らされているから作業も捗っているみたいだ。


 獣機が次々と下ろされて、バージの荷を下ろしている。

 俺達の仕事は今のところ無いみたいだな。

 アレク達とスクリーンを見ながら獣機達の動きを見ていると、スクリーンが強制的に切り替わった。


 『ヴィオラからニュースのお時間です。今回の航行でこの洞窟がヴィオラ騎士団の拠点に正式に認定されました。

 明日から、拠点の工事が始まりますが、ヴィオラそれにガリナムの2隻は周辺の鉱石採取に向かう予定です。

 ベラドンナは拠点に残り獣機を用いて拠点作りを行います。

 それでは、カテリナさん。拠点の解説をお願いします……。」


 ネコ族の少女に変わってカテリナさんが現れた。

 背景に映し出された洞窟の平面図をポインターで示しながらこれから作る拠点の概要を説明してくれる。


 「この洞窟ホールの大きさは東西1.2km、南北1.3km天井高さが最大で300mの大きさがあります。このホールを利用して……」

 

 東側に高さ30m、長さ1kmの桟橋を作るようだ。これだけの大きさならヴィオラが3隻は停泊できるから、それより小型のガリナムとベラドンナなら余裕を持って停泊出来る。

 間を500m程空けて、西側にパージを停泊させる桟橋を作るらしい。鉱石の積み替えが出来るように荷役装置が2基設置される。

 そして、東の大型桟橋の中は戦機や獣機の整備工場、動力炉、発電装置等が設置される。

 騎士団員の居住区は入口近くに高さ50m程のビルを作るようだ。

 水タンク、燃料庫、換気装置等は複数の設備が設けられると言っていた。


 「現在、このホールでは、機密服と酸素ボンベが無ければ活動出来ませんが、将来はこの奥に続く洞窟を複数の隔壁で閉じて、内部の有害なガスを外に出します。天井に孔を空けて、外の空気を中に引き込むことで重装備をする事無く活動が可能な空間に変えて行きます」


 「かなりの工事になるな。資材もまだまだ運びこまなければなるまい」

 「でも、便利そうですね。問題は周辺の監視です。ここは荒地に張り出した尾根の合間にありますからね」


 俺の言葉にアレクが頷く。


 「それ位は誰もが気が付くことだ。円盤機を残していったろう。既に周辺の山頂に監視装置を設置してあるはずだ。この拠点の全体監視を何処でやるかは分らんが、そこで確認出来るようにする筈だ。でないと、俺達が出航して直ぐに巨獣と鉢合わせと言うことになりかねないからな」

 「そういえば、円盤機を積み込んでいましたよ。上空からも監視するんでしょうか?」


 確か、偵察用とか言っていたな。燃料を増やして長時間上空で監視をするのかもしれないな」


 ベラスコの質問にアレクが答えている。

 ドミニクも2隻を同盟に加えたんだから責任を感じているんだろう。

 新たに購入した円盤機は2機だが前の円盤機と合わせれば7機になる。かなり広範囲に偵察が可能になるだろう。


 夕食後に買い込んだ蒸留酒と葉巻を持って、ベレッドじいさんのところに会いに行く。

 

 「すまんな。お前のアリスにはあまり手は掛けていないんだが……」

 「そんな事は無いですよ。長剣も頂きましたし。皆で分けてください」


 そう言って、自室に戻る。

 ドワーフ族は義理堅いから、仲良くしておくに越した事が無い。

 色々とアリスの面倒も見てくれるし、暇な時は何時でもアリスを見てるんだよな。


 部屋に帰ると、カテリナさんが私服で訪れていた。

 マスターキーで出入自由だからな。


 「あら、お帰りなさい。良い物を見つけたので勝手にやらせてもらってるわよ」

 

 そう言って氷の入ったグラスを俺に見せた。

 棚に置いておいたアレクへ渡そうと思っていたウイスキーだな。

 残り2本あるから、まあ、ここで1本空けたとしても問題はないけど……。


 「どうぞ。結構美味しいわよ。高かったでしょう?」

 「ちょっと、贈答用に買い込んだものです。まあ、残り2本あれば良いでしょう」

 

 カテリナさんからグラスを受取ってソファーに腰を下ろす。

 

 「結構、おもしろいところね。たぶん、古代の採掘跡地なんでしょうけど」

 「やはり、そう見ますか?」


 「ガスでかなり痛んでいたけど、人骨を見つけたわ。持っていた工具は全く分らないほど腐食していたけど……」

 「ここは、危険なんでしょうか?」


 「今は全く危険が無いと言って良いわ。良い場所を探したものだと思う。放送を聴いたと思うけど、有毒ガスはパイプで外に出すことが可能よ。あのガスのおかげで巨獣が来ないんだから、ここは位置的には極めて危険なんでしょうけど、安心して休む事が出来るわよ」


 それでも直ぐにそうなる訳ではない。

 ゆっくりと時間と資材を投入して俺達の拠点ができるのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ひとつ思ったのが主人公を不老にして欲しい 流石に戦姫を主人公が死んだ時誰かに渡すのもやだよね 主人公の身体謎だしそのくらいの設定つけても良さそう
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