表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/217

V-100 12騎士団との共闘

 

 8時に目を覚ますと、カテリナさんを部屋に残して、衣服を整えてリビングに出掛ける。

 ドミニク達が食事を終えてコーヒーを飲んでいるぞ。

 

 そんな彼女達に片手を振ってテーブルに向かうと、ライムさんがサンドイッチを運んでくれた。

 

 「昼前にはバージターミナルに付く予定よ。テンペル騎士団も厳戒態勢に入ってるわ。そして援軍が名乗りを上げたわ。タイラム騎士団よ」


 ドミニクがソファーから俺に振り返って教えてくれた。

 タイラム騎士団か……。義にあつい連中だな。本来の騎士団はそうあるべきと理想を持ってるのかもしれない。


 12騎士団としての地位をそれで保っているのだろう。となれば、騎士団員もさぞや立派な連中に違いない。

 

 「さすが、12騎士団だね。サーペントとはえらい違いだ」

 「あの騎士団は早く忘れましょう。ホントにいなくなって良かったわ」


 そう思われるようではお終いだな。


 そんな所に、カテリナさんがあのパジャマを着て現れた。


 「あら、みんな揃ってるの?」

 「母さんこそ、今頃起きたの?」


 あきれ返ってる娘に片手を振ってテーブルに付くと、ライムさんが運んで来た朝食を食べ始めた。


 「それで、作戦は決まったの?」

 「現在、バージターミナルの西200kmほどをゆっくりと東に進んでいるわ。私達が到着次第、テンペル騎士団とタイラム騎士団がラウンドクルーザーで攻撃する予定よ」


 「どちらも重巡洋艦の改造型だが、速度はだいじょうぶなのか?」

 「ギリギリって所でしょうね。カンザスで囮になるわ。カンザスなら更に速度が出るし、できれば進行方向を変えたいのよ」


 テンペル騎士団達に花を持たせようと言うのだろう。

 初撃を与えれば世間的にも彼らの行動を賞賛して貰える筈だ。


 「となると、カンザスの装甲甲板に出す戦機は、固定しないと振り落とされるわよ」

 

 カテリナさんがコーヒーカップ片手に注意してくれた。


 「戦姫はだいじょうぶなんでしょうか?」

 「あれは反重力制御装置が内在されてるでしょう。アンカー代わりに使えるわよ」


 「どうやって固定するんですか?」

 

 戦力外通達をされたようなリンダがカテリナさんに訴えてる。


 「昇降装置の枠に鎖で縛って貰いなさい。ベレッドに頼めばやってくれるわ」


 昇降装置を途中で止めて、装甲甲板から顔を出すような感じで撃つんなら問題無さそうだな。

 

 食事を終えたカテリナさんが部屋へと戻っていく。

 一番奥の部屋をクリスと共同で使ってるんだよな。

 

 俺も、再度コーヒーを注いで貰って、ソファーに座ると、皆が見ているスクリーンを覗き込んだ。

 画像は桟橋に並んだ戦機が映っている。

 20機近くあるんじゃないか?

 2隻のラウンドクルーザーも出番を待ってるようだな。


 もう1枚のスクリーンにはバージターミナルと周辺の状況を図示してある。

 どうやら味方は緑で、プレートワームの群れは赤で示しているようだ。カンザスは青で表示されている。もう2時間もすれば到着する距離に近付いている。

 ガリナムはかなり遅れているな。

 現在中継点から400km程の距離だ。

 まあ、地上を走るからな。それでも、通常の駆逐艦より時速は15kmほど速いんだけどね。


 「ガリナムは間に合うかな?」

 「群れの様子しだいね。今日の昼過ぎにこっちから仕掛けてどんな反応を示すかによるわ」


 カンザスを囮にして上手く北に向かわせる事が出来ればしめたものなんだが……。


 「カテリナさん。プレートワームって海から出てどれ位活動出来るんですか?」

 「そうね。結局のところエラ呼吸なのよ。あの甲羅の下にかなりの海水は貯えられてるし、甲羅自体も微細な穴で酸素を海水に送れるわ。それでも、乾いた大地では限界が出るから5日と言うところじゃないかしら」


 5日間、奴等を引き付ければ俺達の勝ちってことだな。

 かなり苦しい戦いになりそうだぞ。


 『テンペル騎士団から連絡が入ってます』

 「繋いで頂戴」


 ドミニクの指示でもう1つのスクリーンが展開した。

 そこに映っていたのは、ユーリーさんだな。

 戦闘服姿だが、少し厚手の装いだ。


 「早速来て頂けましたか。やはりカンザスは速いですね。それで、私達はこれから敵を攻撃に出航します。

 出来れば、私達の逃走経路を確保して頂きたいのですが……」

 

 「了解です。このような進路で介入します。その後は北に進路を取るつもりです。上手く行けばカンザスを追ってくると考えています」

 

 ドロシーが俺達の計画を先方に送ったようだ。

 手元を確認しながら頷いている。


 「危険ではありませんか?」

 「イザとなれば戦姫で誘います。それに、もう1隻こちらに向かわせました。丸2日以上は掛かるでしょうが、かなり使えるラウンドクルーザーです」


 互いに礼をして通信が切れる。

 いよいよ始めるみたいだな。

 

 「ドロシー。速度調整をお願い。テンペル騎士団の攻撃の後に、南方から北に抜けるようなコースを取るわ」

 『了解です』


 同時に軽い加速感が船体から伝わる。

 更に速度を上げたようだ。


 ゆっくりとタバコを味わい、予定時間の1時間前にアリスに搭乗する。

 アリスとデイジー、そしてムサシが装甲甲板に並んだ後で装甲甲板の開閉式ハッチから、リンダの乗る戦機が腰から上を出した。

 確かにあの状態なら、操船が荒くても振り落とされる事は無いだろう。


 「アリス、重力制御で機体を装甲甲板に固定出来るか?」

 『可能です。位置を決めたら教えてください。3機共に遠隔で制御します』


 俺達は左舷に並んで立つ。ムサシも40mm滑腔砲を持っている。群れが大きいから適当に狙っても当るんじゃないかな。

 

 「アリス準備、OKだ!」

 

 そう言うと、足が装甲甲板に固定される。

 重力アンカーって事だが、確かに宇宙では必要な機能なんだろうな。


 コクピットの全周スクリーンの一部で地上の映像を捉える。

 テンペル騎士団とプレートワームまでの距離は20km程だ。

 搭載しているのは2隻とも88mm連装砲塔が4台だから16門一斉砲撃になりそうだな。

 そして敵前5kmで2隻が回頭すると砲塔が一斉に敵に向けられた。

 距離が2kmに迫った時、16門の88mm砲が一斉に火を噴く。

 装填はシリンダー型の自動装填装置だから、6発を続けざまに打ち終えると、直ぐに回頭を行なって全速力で東に向かった。


 『回頭始めます!』


 船体が斜めに傾きながら左に急速回頭をカンザスが行なった。急激に高度が下がり、カンザスの砲塔が全て右に向かう。


 時速60km程に速度を落として、プレートワームの群れの前を横切りながら砲撃を加える。

 

 俺達もレールガンや40mm滑腔砲で群れを撃つ。

 どう考えても千匹より多いような気がするな。

 焼け石に水って感じに思えるぞ。


 砲撃を終えると時速50km程に速度を落として群れを回りこむように北に向かった。

 俺は重力アンカーを解除して、カンザスの後方に向かう。

 弾装を交換して、後方の2連装砲塔の放つ砲弾と一緒に、敵を狙い撃った。


 どうやら付いて来るようだ。

 そして、……なるほど足が速いぞ。時速50kmは出ているようだ。


 『100匹ほどがそのまま東に進んでいます』

 「ドミニクの判断に任せよう」


 アリスに答えると同時にドミニクから通信が入る。

 

 「リオ! 刈り取りながらカンザスの後を追える?」

 「任せとけ。ローザも連れて行くぞ!」


 そう言ってカンザスから飛び降りると速度を上げてカンザスを追い抜く。

 直ぐ後ろからデイジーが付いて来るな。


 「兄様、どうするのじゃ?」

 「大きく右に回りこんでさっきのカンザスと同じ事をするのさ。右に見えたプレートワームは必ず倒してくれ。そして、プレートワームの群れにあまり近づかない事。

 俺が後ろにいる。思う存分レールガンを叩き込んでやれ!」


 デイジーがアリスに向かって片手を上げる。

 そして、速度を更に上げながら大きく右に方向を変えた。

 俺もアリスを滑空状態にすると、デイジーの後を追いかける。


 滑るように飛ぶグランボードの上で、弾丸のマガジンを交換しているようだ。

 最初は危なっかしく見ていたが、今ではグランボードで戦うのがデイジーのコンセプトのように見えてくる。


 アリスの機体を撫でながら、涙を流すまいと懸命に堪えていたローザをふと思い出した。

 今では、そんなそぶりを見せないからな。

 どちらかと言うと、デイジーの勇姿を皆に見せたがっているようだ。

 ウエリントンの戦姫だからな。

 デイジーがある限り、ウエリントン王国は安泰だろう。


 前方にテンペル騎士団とタイラム騎士団のランドクルーザーが見えてきた。2隻の大型艦の直ぐ傍を俺達は通り過ぎて南へと向かう。

 

 今頃は驚いて俺達の姿を見ているだろうな。

 戦機と比べるのも馬鹿らしくなるほどの戦姫の機動だ。

 何としても2つの戦姫を飾りにせずに使いたがるだろう。

 

 前を滑空するデイジーが右にコースを変える。

 体を傾け、それが元に戻った時には俺達の飛行方向は北に変わっている。


 『中々良いコースを取っています。このまま進めば直ぐに東に向かったプレートワームの群れが右手に現れますよ』

 「それじゃ、落穂拾いを始めるか」


 ライフルのレールガンだから、速射性は落ちるがそれだけ正確だ。

 300m程前を飛ぶデイジーがレールガンを発射するのが見える。

 俺もローザに負けないようにしないとな。


 ローザが打ちもらしたプレートワームを倒しながら北へと進む。少し西に寄るとプレートワームの大軍が黒い流れになって北に進んでいる。


 「まだ群れを離れた奴は多いのか?」

 『70程に減っています。もう一度攻撃すべきでしょう』


 ローザに通信を開いて、南に移動しながら再度攻撃する事を伝えた。

 直ぐにデイジーが右に大きく曲っていく。


 攻撃を終了した時点で、東に向かっているプレートワームは10匹程度に減っていた。

 

 そんな俺達に通信が入る。

 どうやら、テンペル騎士団からのようだ。


 「ありがとうございます。10匹程度ならバージターミナルの戦機でも十分でしょう。一度ラウンドクルーザーにお立ち寄り下さい。美味しいコーヒーを準備しておきますわ」

 

 そういう話なら、寄ってみるか。

 ローザに伝えるとローザも賛成してくれる。

 カンザスにはアリスから通信を送ってもらい、俺達はテンペル騎士団のラウンドクルーザーの装甲甲板に飛び乗った。

 2つハッチが開いたので、そこに顔を出した昇降装置に乗る。


 そして、カーゴ区画に戦姫を置いて、案内人の後に続くと、騎士達の待機所に向かった。

 

 既に、ユーリーさん達が集まっている。

 勧められるままに席に座ると、早速コーヒーが運ばれてきた。

 タバコが吸えるかを確認して、タバコに火を点ける。


 やはり、戦闘の後のコーヒーにタバコは会うな。

 隣では美味しそうにローザがコーヒーを飲んでいる。


 「助かりました。しかし、あの機動は戦機では真似が出来ませんね」

 「そんな事だから、今回は落穂拾いです」

 

 そう言って笑って誤魔かした。

 戦姫の機動はこんなものじゃない。少なくともアリスにとっては、こんな戦いは遊びの範疇なんだろうな。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ