イミナシプロローグ
神様という、幻想地味た存在は果たしてこの世にいるのだろうか?僕は17年間生きてきて、神様の存在を感じてことがない。別に不幸な人生というわけではないが、どうも不幸と幸福の頻度が不釣り合い過ぎるような気がしてやまない。僕の不幸の数を数えると、それこそ無数の星の数を数えるに等しいだろう。
そんな星の数だけある僕の不幸の中に、最悪の不幸が一つあった。いつか話すこともあると思うが、それは二年前に起こり、それが原因で僕は高校一年生の春休みまで家に引き篭っていた。あの頃の僕は、絵に書いたような廃人で、毎日自殺地味た事をしようとするが、恐怖で手が止まる。そんな意味のない一日が毎日続く日々だった。
しかし、そんな日々の終焉は急に訪れた。いつだっただろうか。俺は、SNSでフレンド5000人と言うそれなりの人気度の地位に立っていた。そんな5000人の中で、特別に仲が良い人がいた。互いに相手の年齢などしか知らなかったが、SNSにいたら一日一回は話していた。ある日、その人が偶然にも俺が在籍しているが登校していない高校の生徒であると教えてくれた。こんなプライベートな事を教えるほど、僕たちはネット上で信頼しきっていたのだと思う。同じ年齢だけあって、信頼感が湧いたかもしれない。だが、この人がいつからかSNSに現れなくなったのだ。僕とこの人は、ネット上ではあるが信頼し合ってるのだと思っていた。しかし、何の話もなく急に僕との関係を絶ったのだ。僕はそれに憤慨し心の奥底で悲しんだ。そして、暗い部屋の中で大きな決心をした。学校に行き、あの人を見つけ出し、文句を言うという一つの決心を!そして一年の歳月が僕を過去の呪縛から開放してくれて、学校に見事登校できるようになったのだが―――。
(まぁ、そりゃそうだよな…)
だれも、僕とは口を聞いてやくれなかった。これは当然の事だろう。一年間、訳あって学校に来なかった僕に話しかける勇気を持っている人などそうはいないだろう。僕も、そんな「一人で可哀想だから、話しかけてあげよう」なんて偽善者地味た勇気を持ち合わせてはいない。まぁ、何人かはそんな偽善者地味た事をしてくれたのだが、一年間引き篭っていた僕のコミュニティ能力の低下が感じられ、見事に変人としての称号を授与したというわけである。いやぁ、別に悲しくないよ?一人には慣れてるし。あっ、それがいけないのか。
ちなみに今日は部活紹介の日で、昼休みのクラスはその話題でもちきりである。サッカー部は紹介をどのようにやるやら、バスケ部は何にも考えていないやら。ホント、こんなくだらない話するくらいなら、勉強でもしてろよ。普通に考えろよ、普通に。あっ、僕の目が腐ってるだけか。
(屋上で、弁当でも食おうかな…)
雑踏と喧騒の教室を抜け出し、母親の愛情と野菜が少し多い弁当を片手に持ち、静寂であってほしい屋上へと向かう。この学校の屋上は基本、人が入れないように数十個の机で扉を抑えている。これを一個一個どかすのは果てしなく面倒なので、近くの窓から侵入する。というか、漫画などでよく屋上で昼飯を食べている絵があるが、ほとんどの高校は屋上使えないだろ。みんな、窓から侵入しているのだろうか?
「おお…!」
思わず声を上げてしまう。思った通り、完全なる静寂の空間。誰も居ないし、誰の声も聞こえない。ここなら、どんな言葉を叫んでも誰にも聞こえないだろう。まぁ、その類の変人じゃない僕はそんなことしないが。
さて、ここに来た本来の「昼食を食べる」という目的を軽く忘れていた僕だったが、この学校は屋上を立ち入り禁止にしているので、当然ベンチなどの座れる物の類は存在しない。勿論、たった独りでこんな広い屋上の中央で昼食を食べるというど根性精神など、生憎持ち合わせていないので必然的に給水タンク(?)が設置されているもう一段上の所へ、梯子を使って登っていく。と、ここで僕はふと思ったことがあった。
(エロゲとか漫画だったら、ここで美少女とか読書してたり昼食を取ってたりしてるんだよな…)
僕はゆっくりと梯子を登って、給水タンクの周りを見渡す。勿論、美少女なんていない。
……………………。
「べ、別に期待なんかしてないんだからねっ!!!」
「な、何をかな……?」
「へっ?」
下を向くと、そこには黒髪の美少女がいた。
……あっ、そのパターンね。
こうして僕こと、榎本叶は、これから入部するであろう天文部の仲間達と共に神様のいない日常の中を、苦しんだり楽しんだりして生きていくのだった。
最悪の日常を、ね。