表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

1人目。うさ耳は、何を聞く。⑦





自分はいくらだと問われて、即座に値段を言える人間など、そうそういるだろうか。



ビシッと自分に向けられた亀の指を、ただ見つめる。動揺で、ひくひくとつり上がる俺の頬。すると亀はニヤリと笑い、口を開いた。



「答えないつもりですか。噂には聞いていましたが、屈強な心の持ち主ですね」



「どこで流れてるんですか、その噂。俺は、買う価値もない、只の凡人ですよ」



「あくまで、己の信念を貫き通すつもりですか。私たちには、従わない、と」



「いや、人の話聞いてます?」



「では、力ずくでしかないですね」





カチャ・・・・




突然頭に、軽い衝撃。機械的な音と共に、右こめかみに冷たい何かを突きつけられた。




「君の魂、もーらった」




知らないその声に、ドキリと心臓が跳び跳ねる。今自分に起きている状況を確認しようと恐る恐る右隣を見てみれば、レジカウンターに膝をついて、拳銃を突きつけている、見知らぬ青年。



誰ーっ!?




青い髪に、黒い服。中々のイケメンだが、その表情は狂気に満ちている。




「リーダー、とっととやっちまいましょう。あのウサギが嗅ぎ付けてくる前に」



「タック。まぁ待ちなさい。突然魂を吸われるなんて、可哀想でしょう?最後の言葉くらい、聞いてあげましょう」





え?何?俺、殺されかけてんの?んで、亀に情けをかけられてんの?どうして、こんなことになってるの。意味が分からないまま、突きつけられている銃に、ゆっくりと両手を上げる。助けを請うように汐谷を見れば、殺されかけている俺の姿を、携帯で写メり出した。




アイツ、何がしたいの!?



いかん。このままじゃ、亀に殺されるハメになってしまう。それだけは避けたい。



意を決し、震える口で言葉を発する。




「何が目的?金なら、そのレジの中にある。だから、殺さないでくれ」



「ふむ。それが、最後の言葉なのですね」



「ちげーよ!命乞いしてんだよ、空気読んでくれ!」



「おい、コラ。リーダーに向かって何つー口の聞き方してんだ」



「ひ!」




ガツンと、突きつけられていた拳銃で殴られる。人に殴られるなど、地味な人生を送ってきた俺には、初めての経験だ。揺れる脳に、襲ってくる目眩。



するとその時、ビュンと風を切る音。




「ぐあっ!」



「ちょっとお痛が過ぎるっスね」



俺のこめかみに銃を突きつけていた男が、ぶっ飛んだ。カラン、カランと、床の上でくるくる回る、汐谷愛用のモップ。



どうやら、汐谷が全力で投げたモップが、青い髪の青年に直撃したらしい。どんな力で投げれば、あんなに人を吹っ飛ばせるのだろうか。



青ざめて汐谷を見れば、ニコーッと笑ったまま、モップを拾い上げる。




「代理をいじめていいのは、私だけっスよ」




どんな理屈ですか、汐谷さん。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ