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1人目。うさ耳は、何を聞く。⑥






「何、ボーッとしてんスか。ただでさえ邪魔なんスから、自分の意識くらい繋ぎ止めておいてくれませんか?」



「お前の辞書に、敬愛という言葉はないのか」



「代理が、敬愛されるような人間だとでも?」




ニコーッと、真っ黒い笑みで微笑む、汐谷。時刻はもう深夜の2時ちょい。



佐々木とかいう、なんだかよく分からない男子生徒から絡まれ、心中穏やかじゃないままバイトへと突入。



あれほどたて続けに意味の分からない言葉を浴びせられれば、そりゃあボーッとしたくもなるだろう。少しくらい、多目に見て欲しい。



はぁ、と一つ、溜まりにたまったストレスと共に息を吐き出し、現金チェックのために取り出していた札束を、レジの中へ戻す。



それと同時に、客の来店を知らせるチャイムが店の中に響いた。いらっしゃいませーと顔を上げれば、一瞬にして、目が点になる俺。




目に飛び込んできたのは、緑色した物体。のそのそとゆっくり歩き、見慣れないそれは、店内へと入ってくる。




・・・・亀だ。



ただ、世間の常識を根本から覆してる亀だ。俺は、口をあんぐりと開けたまま、店の中の商品を物色し始めたソイツを目で追った。



あれ?亀?亀だよね?あれ。二足歩行で歩いているその亀。背丈は、俺より小さい160センチ代。顔は、普通の少女の顔だ。



ただ、その背には、緑色した大きな甲羅。





サラダコーナーで、商品を物色中のその亀。隣で、商品整理をしている汐谷。するとふいに、亀が汐谷の方を向いた。




「あの、スイマセン。大根サラダ売り切れなんですか?」



「ああ、そうなんスよー。意外と人気なんスよねー」



「本当ですか、残念です。今日は、どうしても大根サラダが食べたい気分だったので」



「それは残念っスねー」




何で、普通に喋ってんの!?どうしたら、その異常なまでにでかい甲羅を無視出来るわけ!?



もういろんな事が意味不明過ぎて、口をパクパクしている俺とは裏腹に、ああ。そうだ。と汐谷が口を開く。





「あ、じゃあ大根サラダ入荷したら、とっておきましょうか?」



「まぁ、それはご親切に。えーと、これ私のメアドなんですけど」



「ありがとうございますっス。いやーそれにしても、大根サラダ最高っスよね!」



「そうなんですよ!やっぱ1日のシメは、大根サラダだと思うのですよ」




友達になってるー!!



ついに、ガールズトークならぬ、サラダトークし始めた汐谷と亀。

あはは、うふふと一頻り談笑した後、それじゃあと亀が此方に向かってまたのそのそと歩いてくる。



え?来る?来ちゃいます?



意味の分からない生物の接近に、バクバクと鳴り始める己の心臓。顔だけ見れば、普通の高校生なのだが、首から下はマジで亀だ。




「・・・・」



「え、えーと、」




ついに、レジの前まで来たその亀。じっと俺を見つめ、眉ねを寄せている。



昨日はウサギで、今日は亀。何、ここ。コンビニだよね?



未だなにも言わない亀に、あの、と口を開きかけた時、スッと亀が俺を指差した。




「お前は、いくらですか?」




デジャヴ!!






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