1人目。うさ耳は、何を聞く。⑩
熱、いっ!!
兎と繋がっている手のひらから、なんとも言いがたいエネルギーの様なものが、自分に送られてきているのが分かる。
ドクドクと、激しく動き出す心臓に、流れる血液の音。頭が割れそうなほど圧迫されている感じに、くらりと目眩がした。
何だ、コレ。死ぬっ!!
兎は、目を閉じ神経を集中させている。そしてカッと目を開くと、満足そうに笑った。
「コレでお前は、一生私のものだ。健」
何だと?
兎が、俺の手をゆっくりと離す。それと共に、徐々に和らいでいく嫌悪感。兎が吐いたセリフに、眉ねを寄せた。
確かに助けてくれとは言ったが、一生等とは聞いていない。百円で、どうしてそこまで責任をとらんといかんのだ。
未だ俺に跨がっている亀が、忌々しそうに唸る。
「やってくれましたね、アズベル」
「亀。これでもうお前たちは、私を殺さない限り健の魂を吸う事は出来ない。よって、」
ドガン!
次の瞬間、俺の上から亀の姿が消えた。ガードレールの上に立っていた兎が思い切り飛び蹴りしたのだ。
ボールの様に吹っ飛ばされた亀は、ボーリングの玉のように転がり、看板に直撃。そのままピクリとも動かなくなった。
・・・・汐谷、2号だ。
血も涙もない兎の亀に対する扱いに、青ざめる俺。
「お前ら滅亡組は、私が制裁する」
せめて、今のセリフを言ってから、蹴り飛ばしてあげて欲しかった。心の準備すら、亀は出来なかっただろう。
つか、どうして俺の周りにいる女子は、みんな怪力なんだ。
回復しきっていない、自分の体。しかし、今まで感じたことのない、体の奥底から沸き上がってくるエネルギーに、自分の手のひらを見つめる。
何だ?
「お前に、私の力を注いだ」
「は?」
「人間の体に、この力は負担がかかる。まぁ、徐々にならしていくのだな」
何か、兎なりに事の状況について説明してくれているみたいだが、残念ながら、全くもって意味がわからない。
そもそも、あそこで気絶している亀はどうすんだ、亀は。
だがしかし、兎は亀の事などもう眼中になく、俺に目線を合わせるようにしゃがみこんだ。そして、口を開く。
「この手を繋いだ瞬間から、お前の魂の半分は、私の中にある」
「は!?」
「この魂は、私が守る。無論、お前の体も。いいか、健」
俺の目に映る、兎の顔。こいつの耳がこんなにも長くなけりゃ、テンションがエレベスト超えするほど美人なのだが、ピクピクと動く耳に、テンションがガタ落ちる。
「これから私と共に、生活するのだ」
さも、当然の様にいい放った兎の言葉に、頭が真っ白になった。
口をひくひくさせながら、やっとの事で言葉を紡ぐ。
「リ、リアリー?」
「イエース。リアリー」
・・・・俺の人生、お先真っ暗。