第五話 無限藍染め奔走アンケート。
晴れて迎える文化祭。
この学校は非常に運動部門には非常に血気盛んで、一方の文化部門には実に淡白であった。
野球部門では強豪校とされ、熱狂的なファンがいるほどで、実際に野球部がこの学校のシンボルであることは否定できず。
どういうわけか、野球部だけ特別待遇で甲子園出場が決まると共に祝い金と称すのだろうか?
野球部からではなく自分たちの実費で野球部支援として強制的に一万円を搾取されるのが通例というのだから差別甚だしい。
話は戻って文化部門に淡白な当学校は、さらに文化祭そのものへの関心の薄さが露呈している事例の一つとして「文化祭は自由参加」とのことである。
一応朝に学校訪れタイムカードとばかりに出席確認が取れれば、文化祭に参加するもこともせずに帰宅するも良し。
文化祭準備に明け暮れた自分としては、そのようないくらなんでも淡白がすぎる学校の文化祭に対する扱いに驚愕の処置に誠に遺憾であった。
クラス参加もしない自分の所属するクラスメイトの半数はトンボ帰りしたというから、まったくもって皮肉な話でもある。
そんな文化祭の開幕を、開催を多いに知らしめる手段として身近な駅や他校に文化祭ポスターが貼られるのだが。
そのポスターの制作元は、なんと美術部。正確には美術部では請けていないが、美術部員が毎年伝統のごとく制作しているのだ。
そして文化祭、学校の入口を彩るというより鎮座するアーチは当美術部の制作であり、来訪者が必ずその制作物に目を向けてくれるのは非常に喜ばしいことである。
それを改めてアーチの設置のみは生徒会に協力を要請し、生徒会と共同で打ち立てたアーチを眺めてしみじみ思ったものだ。
自分の担当したキラキラシールの「×校祭」の文字が燦々と輝く様を打ち立てて初めて望遠で目の当たりにでき、思いのほかしつこすぎずかつ文字がしっかりと主張も行うキラキラシールの選択がよかったものだと考えさせられる。
そのアーチの真正面は芝生えるグラウンドであり、そのアーチに並ぶようにまたしても当美術部制作の打ち立てられた看板が姿を現す。
来訪者にはほぼ確実に美術部が数ヶ月の歳月をかけて制作した展示を見てもらえるのも、思えば感慨もひとしきりである。
そして美術部にとっての文化祭はこれだけではない。
これまた歳月をかけて制作した自主制作物の展示も行われるのだ。
そしてその自主作品の展示会の設営こそ、美術部員が当日に行う任務の一つである。
まず一つである展示会の設営は主に、作品の盗難や破壊を未然に防ぐ為の監視。
そして制作作品についてのアンケートを来訪者に協力してもらうための云々である。
アンケートはほぼ強制にしており、協力を来訪者に依頼・要請する。
来訪者にとっては面倒または迷惑かもしれないが、作品を制作する美術部員にとっては非常に重要な意見・アドバイスの入手法でもあるからやめられないのが現状だった。
二つに、美術部・書道部・生物部の共同で「藍染め体験教室」の開催である。
藍染めに使う染料も市販されているような粉末のものでなく、数日前に専用の藍畑から摘んできた「生」の藍だ。
粉末状の藍は俗に「藍色」と呼ばれる色を出す一方で。生の藍はどちらかというと、水色に近い色合いをしている。
そんな生の藍を使った体験教室を三部合同で行い、その体験教室の実質的な講師をするのが自分たちの役割である。
その生の藍の扱いも非常に大変であり、藍染めの為に茎付きの藍から葉だけを取るのだがその一枚の葉での染められるのはタカがしれており、ハンカチ一枚で葉っぱ数十枚も使用するからしてその作業量は察していただきたい。
藍染めのために十数名で藍が大量に入ったビニール袋を囲い、ひたすらちぎっては葉入れに入れ、ちぎっては葉入れに入れる作業をひたすら繰り返すのだ。
生の藍は日持ちせず、数日経たぬ間に使えなくなってしまうことも相まって。
それを文化祭準備に明け暮れた文化祭数日前と、文化祭当日に行うものだから凄まじい苦行である。
そんな展示会の設営と藍染教室を人員の少なさから入れ替わりで行うこともあって、あまり自由な時間がないのが現状でもあった。
文化祭に参加をするが故に、文化祭をエンジョイできないとはなかなかに虚しいものでもあるが。
アンケートに書かれ、たまたま自分の元へとアンケート用紙のやってきた「自分の作品についての感想」を見れる瞬間は言い知れない喜びが押し寄せるのも事実だ。
そして中町こと自分の作品「駅にて」は、地元で名の知られた鉄道をモデルにしたこともあってそれなりに好評を博した。
そのほかに今では黒歴史の一つである「牛骨」の木炭デッサンも飾られ、一定の人気があったのは驚きでもあり、複雑な心境でもあり、それでもなんだかんだで嬉しくもあった。
こうして九月から文化祭準備、そして当日も二つの任務に奔走する美術部の今年の大まかな活動は終わりを告げる。
今年の美術部の活動が終わったも同然に疲弊した先輩含む美術部員は、間を空けることなく来年の展示会のための作品の構想や制作に取り掛かるのである。