恋する乙女と受験勉強
夏休みのとある日、中3で受験生の私は自分の部屋で勉強をしていた
別に「夏を制した者が受験を制す!」みたいな謳い文句に乗せられたわけではない
ただ、私が目指している私立高校は県内では有名な難関なのだ
友達や家族からは「あんたじゃ無理」と散々言われてきた。自分でも正直そう思う
でも、私にはどうしてもその高校に受からないといけない訳がある
私の好きな人がその高校に通っているのだ
好きな人と一緒に登校して、ご飯食べて、それからそれから――
というのは乙女に限らず、恋する中学生なら誰でも憧れることだ
ちなみに、今私の好きな人は何をしているかと言うと――
「………寝てるし」
人のベッドの上で横になって寝ていた
そばには本棚から勝手に取り出された漫画が無造作に置かれてる
というか、人が受験勉強してる時に漫画読みに来るな!集中できないでしょうが!
おかげで今日は朝から勉強してたけどあまりはかどらなかった
「はぁ~~」
ため息をつきつつ、机を離れてベッドの方へ
それにしても、これはもう完全に寝てるね。熟睡しちゃってるよ
膝立ちしてベッドに寄りかかる。寝顔がちょうど目の前に
いつもはかっこいいけど、こうしてみるとなんか可愛いかも
あぁ~、このままずっと眺めてたいなぁ~~………
………………
はっ!?だめだめ、勉強に集中するためにここは叩き起こして追い出さないと
「おーい、起きろー」
まず身体を揺さぶってみる……反応なし
頬をぺちん!と叩いてみる……反応なし
耳元に息と浮きかけてみる……反応なし
こ、これは強敵だ。息を吹きかけても起きないなんて……
どうやって起こせばいいのか、寝顔を見ながら考えているとなんか妙な気分になってきた
だんだんと視線が顔全体からとある部分に集中して――
だ、だめだ私ー!寝ているとはいえそれはやってはだめだーー!!
邪念を振り払え!正気を保て!今の私は受験生!勉強が最優先!
そう、自分に言い聞かせても無駄なようで
受験生以前に私は女の子なわけで、恋してるわけで
気がつくと耳元に顔を近づけて、呟いていた
「いい加減起きないと、キスしちゃうぞー」
起こさないように出てるかどうかすら微妙な声で言った。
いろいろ矛盾してることは分かってる
これは起こすための行動じゃなくて、あくまで確認
起きる様子はまったくなく、そーっと顔を近づけていく
心臓の音なんて聞こえるわけもないのに、鼓動を抑えるように胸に手を当てる
そのままゆっくりと顔を近づけて、近づけて、近づけて―――
あと1~2センチと言うところまで来た時、ふと気がついた
あれ?顔が赤くなってる………ま、まさか――
「お、起きてる?」
震える声で問いかける
すると、目がすぅ~と開いていって、そして―――
「あーあ、バレちまったか」
それを聞いた瞬間、私は枕を思いっきり叩きつけていた
「ごふっ!」
「お兄ちゃんの………ばかぁぁぁぁああああ!!!」