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9 抱きしめて眠ろう【大人表現有】

この頁は【大人表現有】です。

問題のない方のみ続きをどうぞ。

タイちゃんとアタシ☆9 抱きしめて眠ろう【大人表現有】




「ツキ、眠れないのか?」


 キッチンで冷たい水を飲んでいたアタシに不意に声がかかる。

 振り向くとタイちゃんが上半身裸に半パンという姿で立っていた。

 相変わらず足音させないんだね。

 ビックリして思わず声上げそうになっちゃったよ。


 シャワー上がりなのか髪の毛がしっとり濡れてる。

 無駄に色気ムンムンだぁ。

 均整がとれてて綺麗だなぁ。

 盗撮して学校で売ったら財産築けそうだなぁ。


 そんなアタシの野望も知らずに、タイちゃんはタオルでガシガシと頭を拭きながら冷蔵庫に向かう。


 ガチャリ。

 手にしたのはビールの500ミリ缶。

 ……。

 何も言うまい。


「早かったね。明日お休みだから朝帰りかと思ってたよ?」

 週末はたいていフラリと遊びに出て、朝方まで帰らないからホント珍しいね。

 タイちゃんは交友関係が広いから週末はモテモテくん。

 たまにタイちゃんを取り合った女のコ同士が争っちゃうほど。

 この間はケンカに巻き込まれて腕を引っかかれてのご帰還だっけ。

 人気者は辛いねぇ。


「お前のほうこそ、こんな時間に起きてるの珍しいな」

 言われてみれば。

 何たって鶏と一緒に起きるような生活が基本だから、毎日寝るのも早いんだよね。

 普段だったら休み前でも確実に就寝してる時間。


 でも今夜は……。

「一度寝たんだけど、変な夢見て起きたら寝れなくなっちゃった」

 どんな内容だったかは憶えてないんだけど、自分の唸り声で起きたくらいだから楽しい夢じゃなかったみたい。


 タイちゃんは「ふーん」って興味なさそうな返事。

 でも自分が飲んでいたビールを手渡してくれた。

 元気出せ、ってところですかねぇ。

 普段なら飲まないんだけど……、今日はいいかな?

 明日は学校ないしね。


ゴクリと一口。

むむ。

「やっぱり苦くて不味いぃ…」

 これじゃ気分転換にならないよぉ。

 アタシは思わず眉を八の字にしてビールを丁重にお返ししてしまう。


「大人の味は、まだ無理か」

 まだ無理っていうか、多分ずっと無理ですぅ……。

 ちょっと鼻で笑ったけど、タイちゃんは改めて冷蔵庫からフルーツカクテルの缶を一本出してくれた。

 どれどれ、どんな感じかな?


 わーい♪

「美味しーい!」

 初めて飲んだけど葡萄グレープの炭酸ジュースみたいで、これなら飲めそう。

 こんなに美味しいお酒があるなら、一生大人の味のするビールは飲めなくていいや。

 コクコクと何口か飲んでしまうと途端に顔がポワンと温かくなる。

 飲みやすいけど、やっぱりアルコール入ってる証拠だね。


「ツキ」

「ん?」

「サンルーフで飲も」

 そうだね。

 キッチンで立ち飲みもナンだよね。

 返事をする前にタイちゃんがビールを持ってない方の手でアタシの手を引く。


 そこは3階にあるタイちゃんの部屋近くの階段から上がったロフト部屋。

 屋根が斜めに切り立っていて、夜空を眺めるのに最高の場所なの。

 このあまり広くない感じがアタシは好き。


 部屋に入るとタイちゃんはロウソファーに座った。

 アタシも定位置になってる足元のクッションに座ろうと思ったら、腕を引かれてアッと言う間にタイちゃんの足の間に座らされた。

 あれだな。

 二人して同じ方を向いてるからカンガルーの親子のような感じ?

 このソファーは座る部分が深くて、二人で座っても落っこちる心配がないからいいけどね。

 座り心地が良いから床のクッションの上より楽かも。


「ツキ」

 タイちゃんはビールを握っていないほうの腕を後ろからアタシのお腹の辺りにまわす。

 一拍措いて。

「どんな夢だった?」

 少し気遣きづかってるような声色。


 そっか。

 さっきから何か言いたそうな雰囲気だったのは、それが聞きたかったんだね。

 心配してくれたんだね。

 前にアタシが何度も怖い夢にうなされて叫びながら起きたのを目撃してるから。


「大丈夫」

 回された腕にアタシは自分の掌を乗せる。

「大丈夫だよ」

 タイちゃんの胸に寄りかかりながらもう一度言う。

「あの夢じゃなかったよ」

 あの夢だったら起きても憶えてる筈だから、忘れてるって事は違うってことなんだと思うの。


「そっか」

 やっとホッとしたみたいで、タイちゃんは小さく息を吐いた。

 耳元で喋られると普段は擽ったく感じるんだけど、今夜はフワフワと気持ちがいい。

 お酒が入ってるから?

 タイちゃんの声が優しいから?


「お前、顔が赤いぞ」

 言われてみれば少し目の前が揺れてるかな?

「そろそろ止めとけ」

 タイちゃんは自分のビールを飲み終えると、アタシの手から缶を取り上げてそれも一気に飲んでしまった。


 むーっ。

 もう少し飲みたかったのにぃ。

 でも。

 振り返って睨んだタイちゃんがボヤケて見えるってことは……。

 もしかしてアタシ酔っ払ってる?


 チュッ。


 一生懸命に眼を凝らして見上げてたら、不意にキスされてしまった。

 ボッて一瞬にて顔が火照る。

 続けて唇を舐められて。

 湿った感触が生々しくて体がブルっと震えてしまう。

「ふ……っ…」

 抗議しようとしたらスルリと舌を入れられてしまったぁ。

 触れられた場所からジンわりと気持ちよさが浸透していく感じ。


 むむむ。

 しまった。

 これは慣れ親しんだ済し崩しの王道パターンでは!?


「…や…ぁ…」

 一応、抗議の声は挙げてみるものの見事にスルー。

 そうですか。

 やっぱり却下ですか……。


 それにしても。

 まるで満月の夜のようなキス。

 こんなにディープなの珍しくない?


「…ん……っ…」

 気持ちイイ…。

 ゆっくり口の中を撫でられるの好き。

 いつもより今夜のタイちゃんのキスは甘いのは気のせいじゃないよね。

 まるで舐めとるように丹念に舌が這っていく。

 アタシはドキドキしちゃって、タイちゃんの服に掴まろうとしたけど…。

 タイちゃんてば裸なんだもん、困っちゃうよぉ。

「…ふぁ……」

 この香りはグレープ?

 さっきのカクテルの味だね。

 もしかしてタイちゃんもアタシの口を甘く感じてる?


「月…」

 お腹に回ってたタイちゃんの腕が知らない内にアタシを抱きしめる。

 大きな掌はウエストから脇へと移動して…。

「ぁ…」

 不意にアタシの胸を掠めた。

「やぁ…ぁ…っ…」

 ビクッと身を竦めた反応に気を良くしたみたい。

 事もあろうかタイちゃんは、アタシの小さな膨らみを大きな掌で覆ってきた。

「アアッ…」

 思わず声が漏れちゃう。

 ダメだよ、タイちゃん!

 そんな風に撫で回さないでぇ……。

 キス以外の接触は反則だよぉ。


 アタシを抱えてる体を押しやろうとして、タイちゃんの胸に手をついたのはいいけれど。

 掌から伝う素肌の感触にドキッとしてしまって、思わず抵抗を止めてしまった。

 だって肌がシットリしてて筋肉が硬くて、触り心地良かったんだもん。

 気を抜いたらアタシの方がサワサワと撫でてしまいそう。

 乙女なのに変態の扉を開けちゃいそうでマズイよぉ。


 タイちゃんがキス以外の事をアタシにするなんて珍しい。

 強引乱暴者のくせに割とオトナな理性持ちだから、アタシが本当に怖がるような事は絶対にしない。

 なのに今夜はネジが少し飛んじゃったみたい。

 お酒の威力恐るべし!!


「…や…っ…」

 あまり揉み応えなんて無い筈なのに、感触を気に入ったのか、やたらヤワヤワと撫で回す。

 嫌だよぉ。

 何だか変な感じだよぉ。

 体がジワッて熱くなってきて…。

 胸なんて触られたって恥ずかしいだけだと思ってたのに…。

 何も感じないと思ってたのに…。

 アタシ、もっと触られたいって思い始めてる…。

 その上。

「ひゃ……ッ」

 自己主張し始めた先端を布越しに摘まれて、体によく判らない電流が走った。

 しまった!!

 寝てたからブラ着けてないんだった!!


 掌で揉んで、指の間に挟んで摘んで。

 タイちゃんは留まることなく好き放題。

 マズイよぉ。

 このままじゃ絶対マズイ!!


「タイちゃん、胸ダメぇ! 反則ぅぅ!」

 パジャマの裾から手を這わそうとしていたタイちゃんの腕を必死でアタシは止める。

 直接触られたらシャレにならないよぉ。

 心臓破裂で救急車だよぉ。


 タイちゃんの理性カムバーック!!!

 総動員でカムバァーーック!!!!


「……」

 タイちゃんは少しムッとしたように眉間に縦皺を刻むと、少し唸ってやっと手の動きを止めた。

「仕方ねーな。」

 言いながら力が抜けたようにソファに横たわり、アタシを自分の体の上に乗せるように抱き込む。


「このまま一緒に寝るだけで許してやる」

 ふーーー……。

 とりあえず命拾いですぅ。


 でもお布団なしで平気かな?

 寒くないから大丈夫かな。

 というかアタシを上に乗せてたらタイちゃんが疲れちゃうと思うんだけど……。


うなされてたら起こしてやる」

 小さくタイちゃんが呟いた。


 そっか。

 なら甘えておこうかなぁ。

 もう怖い夢は見ないと思うけどね。

 タイちゃんを抱きしめてれば悪夢も逃げてくよ。


 ありがとね、タイちゃん。


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