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冷酷不思議魔術師とのほのぼのデート

 店内に並んでいる綺麗に輝いているジュエリーを見ていると一つの髪飾りが目に止まった。青い石がついているもので、アクセントになっているのがとても美しい。私がそれを見ていると、ルーイがチラッとその髪飾りの値段を見た。


「……それくらいなら買ってやってもいい」


「そんなに無理しなくても」


「いや、魔術師もそこまで貧乏ではない。金銭的な余裕があることくらい、あの家に住んでいればば分かるだろう」


「ふふっ。じゃあお言葉に甘えて」 


 私は、ルーイに青い石の髪飾りを買ってもらい、さっそく店を出て、持っていた小さな手鏡を見ながら店の前でそくっと頭につけた。やっぱり、せっかくのデートでは着飾りたいというのが乙女心というもの。私はその青い石の髪飾りをつけて品性がある大人っぽい女性に見えるような気がして嬉しかった。


「どう? ルーイ。似合うかな」


「……ああ」


 もう。なんか、そう言うところが少しそっけないんだから。でも、ルーイの口元が緩まり、口角が上がり微笑んでいることが分かった。私たちは、野菜や果実が並んでいる屋台を見ることになった。普段よく屋台で野菜や果実を買って買い物しているのか、ルーイは慣れている様子だった。


「屋台ってこんなにたくさんの種類の野菜や果実があるんだ」


「アリアはあまり来ないのか?」


「あ……うん。料理はあまり得意じゃなかったから。実家で作ることもそんなに無かった。……っていうより、作らせてもらえなくて」


「はっ……。確かにあの劇的にまずい料理じゃあ、そうだろうな」


「! もう」


 ルーイは、じゃがいもや玉ねぎ、トマトにほうれん草など野菜をたくさん飼い、柑橘系の果物も買った。そう言えば、ルーイは玄関の前でラズベリーも育てていたけれど、こういう野菜や果物の知識が詳しいのだろうか。


 屋台がたくさんありすぎて、普通の人ではどこの店のものがいいのか全然分からないけれど、ルーイはそくっと選んで取ってゆく。


 ルーイは野菜や果実を買いすぎたのか、自分では持ちきれず、私にも持たせた。 


「お、重っ!」


「重いものを持つのも、魔法の修行の一環だ」


「は、はーい」


 重いものを持つのも魔法の修行の一環って……。ルーイの家に一緒に住むようになってから、掃除や洗濯も毎日させられたりするようになったけれど、ルーイは、私にたくましい女性になっていってほしいみたいだ。そう言えば、初めの頃、生活を見直させるみたいなことも言っていたような気がする。


 おろおろと重い野菜を持ちながら歩いてると、私はバタッと誰かとぶつかった。私は、野菜を落としそうになったがなんとか堪えた。


「すみませんっ!」


 見ると、小さな女の子だった。小さな女の子は、そのまま近くの噴水のところまで歩いていき、そこにいた他の子供達と一緒に鬼ごっこをしている。


「少し休憩するか」


「うん。長椅子もあるし、少しここに座って休もう」


 私とルーイは、噴水がある公園の長椅子に座って休んだ。一瞬、さっき、私にぶつかった女の子にルーイは冷たい目で睨みつけるのではないかと思ったけれど、そんなことは無かった。それどころか、目の前で鬼ごっこをしてはしゃいでいる子供達を見て、にっこりと微笑んですらいる。ルーイは魔術師としての自分の魔法を極めるために持っている冷酷な一面と、今日のデートで見せる朗らかな一面と二面性を持つ人物であることが分かった。


 冷酷な一面があるとは言え、それは出会った時の第一印象にすぎなかったと安心していた。


「お兄ちゃんとお姉ちゃん、一緒に紙飛行機して遊ぼう」


「ああ」


「良かった。子供に、私と会ったときのように冷たい目で気をつけろ、とか言うんじゃないかと思ってハラハラしていたの」


「……。アリアはそんなに俺のことが冷酷に見えるのか?」


「う、うん」


 すると、ルーイは立ち上がり、子供たちの方に駆け寄って行った。ルーイは、子供たちの紙飛行機を手に取り、折り直している。そして、それを飛ばすと、より遠くに高く飛んだので、子供たちはうわあっと喜んだ。


 ルーイは子供達の前で魔法を使うことも、冷酷な表情を見せることもなく、普通のお兄さんとして振る舞っていた。なんだかいつもよりもほのぼのする日常に、私は、緊張感がほぐれ、魔法を極めるために修行中であることを忘れ、ただの異性同士のカップルの時間を有意義に楽しんでいた。


「お兄ちゃんすごーい」


「お姉ちゃんも一緒に紙飛行機飛ばそうー!」


 さっきぶつかった女の子に呼ばれて、私も一緒に紙飛行機を飛ばして遊ぶことになった。ルーイは、子供たちに紙飛行機の折り方を教えて少し気疲れしてしまったようで、また長椅子に座っていた。やっぱり本質的には、あまり子供は得意ではないようだ。


「ふぅ。疲れた」


 さりげなくぽろっとこぼしたため息に、私はつい微笑んでしまった。

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