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ルーイは結界を張ってまでも2人の時間を大切にしたい

 私は、ルーイが魔女ババロアとカミラのところへ行ってしまい家でお留守番をしている間、暇だったので、読むのを止めろと言われていた魔術師の本を手に取り、読み始めた。相変わらず、何だこの本、と呆れてしまうほど謎の呪文ばかり並んでいる。ページをパラパラとめくりながら、呪文を目で追っていると一つの呪文が気になった。


「n.i..i.y.a.A。 見慣れないアルファベットの羅列。ニ、ニヤア? 何これ変な呪文ー。そういえば魔術師の呪文ってこんな分厚い本にたくさん書かれているんだから、立派な素晴らしい呪文もあれば、くだらない呪文もありそうね」


 私は、ふあーあと欠伸をした。こんなに分厚い本を見ていたら眠くなってしまった。ルーイの家に来てから、実はまだ慣れていないのか、夜に目を覚ますことも多いし、夜の営みもあってぐっすり熟睡できてなかった。私はうとうととソファに横になり眠り始めた。


ーー3時間後ーー


「アリア! アリア!」


「んー? 何? この声はルーイ?」


 時計を見ると、ルーイがカミラを助けに魔女ババロアのところへ行き、私がソファで眠り始めてから3時間経っていた。私は、まだ眠いのに、どうしたの、騒がしいなと思いながら、玄関へ向かった。そこで目を丸くしてしまった。そこに立っていたのは、ルーイと、ルーイは、三匹の猫を抱いていた。ミルクティー色の薄茶色の毛の色の猫と白い毛の猫と黒い毛の猫。


「どうしたの? その猫?! 可愛い!」


「可愛いじゃない! アリア、お前、あの魔術師の本の中の呪文を唱えただろ。そのせいで、フィンリーとカミラと、ババロアが猫になったんだ」


 魔術師の中の呪文? 私は一瞬きょとんとして目を丸くした。本の中の呪文なんて唱えたっけ、と記憶を辿ると、そう言えばーー。一つおかしな呪文があってそれを口にしたかもしれない。けれどそれがまさか、発動してしまうとは。


「その魔術師の本は俺が研究過程で書いた本で、俺専用の呪文がたくさん書いてあるんだ。アリアが唱えた呪文は、俺の周囲にいる者の姿を猫に変える呪文だ」


「え、ええ?」


 それを聞いてどう反応したらいいのか分からない。驚けばいいのか呆れればいいのか、可愛い呪文と換算すればいいのか。


「どうせ、読めないし唱えることもないだろうと思っていたが、うっかり読んで唱えてしまったんだな。もうその本はアリアの手元には渡ることのないように俺がしっかりと保管しておこう。#&*○!」


 ルーイは、最後に訳のわからない言葉を口にした。おそらく魔法の呪文の言葉だろう。その言葉を口にすると、三匹の猫たちの姿が、パッと人間に変わっていくのを私はこの目で確かに見た。そこに現れたのは、フィンリーとカミラと魔女ババロアだった。


「! アリア?! ここは……。ルーイの家? 僕は、誘拐されたカミラを助けようとして、魔女ババロアのところへ行って、そして、そこでルーイと会って…。んんん。その後の記憶がいまいち分からない。なぜ僕はここにいるんだ?」


 フィンリーは、慌て戸惑っている。カミラも同じように戸惑うだろうと思ったら、カミラはそんなことよりも違うことに反応していた。


「あら、アリア! どうして、アリアがここにいるの? しかもなんだか、ラフなワンピース姿に寝起きの顔……。どうしてアリアが魔術師ルーイの家でこんな姿で?」


 カミラは、無駄に鋭いところがある。私はまだルーイの家に一緒に住んでいることをカミラには言っていない。もちろんフィンリーにも言っていない。両親には、ルームシェアを始めると行って家を出てきたけれど。このタイミングで私がルーイの家にいることを不思議に思った。そんなことより、猫の姿に変わってしまっていた自分のことを気にしろよと思ったが……。


「きょ、今日はたまたま! たまたま、ルーイの家で修行に疲れたからゆっくり休ませてもらっていたの」


「そうなの。フィンリーから魔法を極めるために修行をしているって聞いたけど、あれからあまり学校で見ないから、随分とみっちりルーイと魔法の修行をしているんだなぁと思っていたのよ」


「そんな事より、もうカミラを助け出すと言う仕事は終わりだ。もうフィンリーとカミラ、お前たちは家はさっさと帰れ」 


 ルーイは、いつもの冷酷な顔でそう言ってフィンリーとカミラのことを家に帰らせた。そして、ルーイの家には結界が張られた。


 ーーあれ? そう言えば、ババロアは? ババロアは、いつの間にか私たちが話してる隙を狙って、家から出て行ってしまったようだが、兵士が道を見張っているはずなので、おそらく兵士に捕まっているだろう。


「そんなことよりもーー。俺はアリアとの2人の時間を大切に過ごしたい。アリアーー」


 ルーイは、壁に手をついて、私の顔をまじまじと見つめる。これはいわゆる、壁ドンというやつなのでは? ルーイは仕事よりも、私との2人の時間をとにかく大切にしたい様子だ。でも2人の時間を大切にしたいって言うけれど、夜の営みの他にどんなことをして2人の仲を深めていくつもりなの? 私は、こんなに近くにルーイの顔があるだけで胸がドキドキしていた。


「一緒に、デートしよう」

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