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魔女ババロアにカミラが誘拐される

 私は呑気にルーイと暮らす日々を送っていた。ただ、呑気なだけではない。ルーイとの夜の営みも欠かさずにーーだ。しかし、ルーイは私にとっても優しかった。中に出してこないし、ゴムもつけて必ず私のことを守ってくれる。


 そのことにはホッとした。あれだけ初めは強引な感じだったのに、いざするとなると中には決して出さない。基本的な夜の営みの流れは、私の胸、腕、足を優しく撫でて、キスをし、そして、外に出す。それだけでなくゴムも必ずつけてくれたし、妊娠しないように魔法もちゃんとかけてくれた。


 こんな流れだった。キスは、唇だけでなく頬や胸、腕などいろんなところにしてくれた。これは、世界中の女の子が好みそうな優しいセックスだろう。魔法のおかげで何する危険性が全くない。


「初めはあんなに乱暴で強引に誘う感じだったのに、意外と避妊はしっかりしてくれるし、妊娠しないように魔法もかけてくれる。やっぱりルーイの恋愛魔法の実験用のためなのね」


「そうだよ。無理やりアリアのことを妊娠させようだなんて、そんな怖いこと考えてないから安心しな。本当にアリアがどう感じるか見てみたいだけ」


 私がどう感じるか見てみたいだけ。それって、女である私の反応を面白がっているということなのだろうか。魔術師であるルーイの余興? 


 でも、私がルーイに惹かれていくのは確かだった。それは魔法の効果だけではなくて、本心からどんどん惹かれていってしまう。だってルーイは、私の魔力もどんどん上げてくれるし、こんな素敵な家や住まわせてくれるし、優しく撫でてくれて愛情を感じさせてくれる。


「魔法も随分上手くなったなーー。回復魔法や、再生魔法を使えるようになったし」


 私は、怪我や病気などを回復させる魔法や、枯れた花を再生させて綺麗な状態に戻す魔法を使えるようになっていった。正直なところ、ルーイに愛撫され続けているだけで、魔力が上がっていくのはとても嬉しかった。


「もっと撫でさせてくれ」


 私は完全にルーイに溺愛されていた。彼のお姫様として。私は今、ルーイの家のリビングのソファに裸になって座っており、ルーイに上半身を優しく、そして柔らかく触れるように愛撫されている。


 これが、ルーイの求めている愛の形だったのだろう。自分が思う存分愛でることができる存在が欲しい。そんなことをしながら過ごした藍色の空の夜が過ぎて、太陽が東の空に登り、チュンチュンと鳥が鳴く次の日の朝になった時だった。


「大変です! 魔術師ルーイ様!」


 ルーイの家に1人の兵士がやってきた。青ざめた様子でルーイの顔を見つめている。何か起こったのだろう。私とルーイは玄関に2人してパジャマ姿で立っていた。


「どうした?」


「今朝、カミラ令嬢が、魔女ババロアに連れ去られた模様です!」


 カミラが、魔女ババロアに連れ去られた? 魔女ババロアとは、魔術師ルーイとは違い、悪いことに魔力を使い暴走している魔力の高い魔法を使っている魔女のことだ。確か髪色はルビーピンク色で、年齢は40歳くらいのおばちゃんだったと聞いたことがある。確か森の近くの家に1人で住んでいたはずだ。


「なぜ、魔女ババロアが急に、カミラ令嬢のことを?」


「理由は分かりません」


「あのババロアのことだ。きっと、気まぐれでいたずら心でやったんだろう。分かった。俺がババロアのところに行ってカミラ令嬢を助けよう」


「はいー! ありがとうございます。ルーイ様!」


 ババロアは、なぜカミラのことを連れ去ったのだろうか。私には理由が何となく分かった。ババロアは王国に怒りを抱いているため、第二王子であるフィンリーを困らせるためにカミラのことを連れ去ったのだ。実は、これまでも第二王子の婚約者であった私を連れ去ろうと私の元に訪れることが何度かあった。しかし、その度に、ババロアは私の魔法の低レベルさに幻滅して、こんな人が婚約者なのか、王子も困ったものだな、と呆れて帰っていった。それくらい、私は王家にとっては魔法の使えない無力で無能な存在だったのだ。今回は、カミラが婚約者になったことで、魔法が上手いカミラのことを自分の手下にするために、連れ去ったのだろう。


「俺は、カミラ令嬢を助けに行ってくるが……」


「ちょっと待って、ルーイ。それ、本当にルーイが行く必要があるの? フィンリーに任せていいんじゃない?」


 私は思わず、カミラに嫉妬してしまった。別に、魔術師であるルーイに助けてもらう必要なんかないのではないだろうか。それよりも、私の側にいてほしいと私はこの瞬間に思った。


「アリア……。済まない。これが、魔術師の仕事だ。仕方ないが行ってくる」


「ルーイ……。そっか。仕事から仕方ないわね。気をつけて帰ってきてね」


 ルーイはそう言って、家を出て行った。私は、ルーイの家で大人しくルーイの帰りを待つことにした。何だか、これが、乙女心というものだろうか。ルーイを別の異性のところに行かせたくない。私は、もうファンリー王子の婚約者ではない。魔術師ルーイの気高いお嫁さんだ。

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