私を溺愛したルーイと一緒に住むことになった
「ん、んんっ……。あっ……」
ルーイに強く抱きしめられている私は、敏感に感じてしまう魔法のせいで、思ってもいないような色気付いた声を出してしまう。だけど、凄く心地よい。魔法とはいえ、本当にルーイの暖かさや優しさが伝わってくるのだ。この私の身体を感じさせやすくするルーイの魔法と、ルーイが私のことを溺愛する気持ちの相互作用で、私はさらに身体を熱くさせる。
「も、もっと触って……」
「分かった、触るぞ」
ルーイのしっかりとした男性らしい指が、私の中に入ってゆく。私はとろけるような愛液を出して、いかにも、感じているような状態になってしまう。気持ちいい。これは感じやすくなっている魔法のせい……と思いたいけど、絶対それだけじゃないことには私も気づいていた。
「これ……ルーイの敏感に感じさせる魔法のせいだけじゃないよね。……嘘。私やっぱりルーイに触られて本心から喜んでいる?」
「ははっ。確かに俺は感じやすい魔法をかけたが、アリア。お前の恋心まではさすがにコントロールできないぞ。それなのに、アリア、お前本当に俺のことが好きになったのか? 案外、侯爵令嬢というのは魔術師にコロッと落ちてしまうものなのだな」
自分でも呆れてしまう。どうやら私は、ルーイのことがこの短時間の間で好きになってしまったようなのだ。私は、冷徹で乱暴なところがあるが、ルーイの心の奥に秘めた優しさを感じ取ってもいた。証拠に、彼は、私にキスをしたり、私の胸を触ったり、あそこに指で触れたりしてくるが、本当に乱暴に入れてきたりすることはなく、私のことを守ってくれていた。私のことを守りつつ、この感じやすくなる魔法を試したかったということなのだろうか。でもそれだけじゃない。
「魔法が上達しないのは、日頃の生活がだれているせいだ。俺がしっかりとアリア、お前の生活をきっちりと見守ってやろう」
「見守る?」
「アリア。今日からお前は俺の住むこの家で一緒に住め。ベッドもちゃんとある」
確かにこの広い家ならルーイの分のベッドだけでなく、もう一つあってもおかしくない。って冷静に分析してる場合じゃない。一緒に住めって……。ルーイ、どれだけ私のことを溺愛しているの? そんなに自分のもの、女性が欲しかったの? 男性の独占欲とはこういうもの……? 理由もなく、私のことを突然当たり前のように好きになって、魔法を極める訓練に付き合ってくれて。ルーイの本心は掴めそうにない。
「お前に拒否権はないぞ。帰ろうというものなら、せっかく戻った魔力をまた消す。お前は俺と一緒にいないと魔法を使えないんだからな」
ニヤリと微笑むルーイ。私は、ルーイと一緒にいないと魔法を使うことができない。いや、もっと具体的に言うと、ルーイと一緒にいて、恋愛感情を感じたりドキドキすることで思うように魔法を使うことができる。ーーでもなんで? どうしてこんなことしてくるの? ルーイ。貴方が私のことを溺愛してるようなのは分かるけど、どうして突然そんな風に私のことをまるで自分の子供のように愛してくれるの?
「分かった。一緒に住む。……どうしてルーイはそんなに私と一緒にいたいの?」
「理由なんかない」
理由なんかない。その一言で不思議にも突っぱねられてしまったが、理由なんかないけれど、お前のことが好きだということらしい。何故かわからないが不思議に感じ取ることができた。その証拠にその後、ルーイはふふっと優しく笑っていた。
理由なんかないけれど、私も同じように、ルーイのことが好きで、貴方の私に対する十分な恋も感じ取ることができる。これはお互いに一目惚れしてしまい、付き合うことになった状態に近い。きっと、ルーイは私を一目見て、いい恋愛実験対象だと気に入ってくれたのだろう。
ルーイと私は服を着て、2階のベッドがある部屋に向かった。ここが私が今日から住む部屋らしい。8畳ほどの部屋で、床と天井はピカピカ。衣装箪笥も50着以上は軽く入れられる大きさで充分だ。そしてテーブル。
「すごく広い部屋。これなら私も無理なく生活できそう」
「思う存分、自由に使ってくれ。それと、今日の夕食だが……」
「あっ……。今日は私が作るわ!」
「アリア。お前ーー料理はあまり得意ではないんじゃ?」
「でも、魔法も上達したし、こんな綺麗な家に一緒に住まわせてもらえることになって申し訳ないもの。私が作る!」
こんな綺麗な家に一緒に住まわせてもらえることになってーー。実は私は、そろそろ自分の家を出たかったのだ。突然、魔術師の家に住むなんて言い出したら、両親は驚くだろうけど、別にいいか。あんな両親。私は両親とあまり親しくなかった。
私は、街に出て、今夜作るスープの材料を買い、トマトスープを作った。今思ったけど、魔術師のルーイにとってみれば、料理なんて簡単なんじゃ……。わざわざ手は込んでいるけどそこまで美味しくない料理を食べさせる方が申し訳なかったかな。
「はい。できたよ」
「どれ……ーーんっ コホコホ」
「あっ……」
ルーイの反応にもしかして、と思い私は一口自分で作ったスープを飲んだが、美味しくない。トマトスープなのに、どうしてこんなに脂っこい味になってしまうのだろう。大失敗だ。結局、ルーイが残ったトマトでスープを美味しく作り直してくれた。
「これはーー美味しい! 何か魔法を使ってるの?」
「最後の仕上げの味付けに魔法を使っただけだ」
さりげなくさらっと言うルーイだが、その味付けの魔法はどうやって使うのだろうか。今度その魔法もじっくりと聞いてみなくちゃね。