愛を深めるほど魔力を極められます
「そ、そもそも、どうしてそんなに私を抱きたがるのよ……」
初めは、ルーイ様の威厳と冷酷な瞳と態度で逆らうことができなかった私だが、徐々に身体に入っていた力が抜けていき、ルーイ様(これからはルーイと呼ばせてもらおう、ずっと様をつけて従っているのも何だし)に対して、少しは自分らしさをさらけ出せるようになってきた。自分らしさと言っても、従順になりすぎない態度でルーイと話せるようになってきただけだけど。
「それは、お前がいい実験台だからだ」
「いい実験台? どういうこと? ーーあ。もしかして、ルーイ、あなた、私の身体を利用して自分の魔力を試したがっているのね?」
「利用するとか試すとかはどうかな。これは立派な魔術師の実験だよ。俺のこの恋愛魔法を試してみたくて……」
「恋愛魔法を試す……? やっぱり試すって自分で言ってるじゃないのよ! あなたの恋愛魔法の実験台にはなりません。もう帰りますっ!」
そう言っていると、ルーイが私の胸をツンッと触った。
「ひゃっ! あ、ああんっ!」
いたずら心なのだろうか。冷酷なくせになんてことをするの?! 一体今どきの魔術師は恋愛魔法と称してそういうことをしたいだけじゃないのよ。でも悔しくも感じてしまっている自分がいる。一体これは何? どういうことーー?
「うん。俺の指が触れると感じてしまう身体になったってことだ」
ちょ、ちょっと何よ、これ! こんな変な魔法かけないでよ、恥ずかしい! つまり、私は今、ルーイに触れられると敏感な体に魔法で改造されてしまっているってこと?そんな変態的な魔法をかけるなんて、本当に魔術師は何を考えてるの?!
「今すぐ解いてよ、この変な魔法!」
「本当にーー、それでいいのか? この魔法を解いて。アリアの魔力はもう既に戻っているどころか成長している。ちなみに自分の周囲に結界を張ってみて。魔法で」
「えっ?」
私はルーイに言われるがままに、今までは失敗の連続だったが、自分の周囲に結界を張る魔法を使った。すると、生まれて初めてだった。綺麗な水色のクリアーな結界が私の周囲に出来、ルーイにかけられた敏感に感じてしまう魔法も解けている。
「嘘……。初めて。こんなに上手に魔法で結界を張ることができたのは……。何をしたの?! ルーイ!」
私は生まれて初めて結界の魔法をちゃんと使えた嬉しさで、思わず目をキラキラ輝かせてしまった。さすが魔術師。魔法で稼いでいるだけあって、やっぱり、彼と一緒にいると成長していくというのは本当のようだ。
「俺の魔法で、アリアの体を敏感に……まあつまり、俺との恋愛関係が深まるたびに、アリアの魔力が上がるようにした」
??? いまいち言っていることが理解できない。私がルーイとの恋愛関係を深めていくと、私の魔力も上がっていく。つまり、《私とルーイの恋愛関係の深さ=私の魔力》ってこと? 私の頭の中には分かりやすいようにこんな公式が浮かび上がっていた。
「そう。俺と……つまりイチャつくたびに俺が、アリアに魔力を分け与える」
「そ……それってやっぱり、ルーイ。貴方って人は! ただ女性といちゃつきたいってだけでしょう?! 私のことが好きなわけでもないくせに」
私は苛立ちを覚えた。私のことが好きなわけでもないのに、ただ私利私欲のためだけに私を利用してる。ルーイはやっぱり女が欲しいだけだ。あの冷酷な瞳の裏は、やっぱり男としての本能だけが眠っている狼だ。
「違うって! でもこういうの、そんなに嫌じゃないだろ? アリアーー」
「んっーー」
ルーイは私にすかさず口付けをした。なんて強引なんだろう。なのに恋愛に慣れているのかその口付けはとてもスムーズで甘いものだった。無意識なのだろうか。明らかにルーイは私のことを口説いていた。
「魔法が使えない令嬢なんて弱々しくて放っておかないよ。俺が守ってやるから。そして俺が責任を持って、アリアの魔力を上げる。これは交換条件だ。アリアの魔力を上げる代わりに、アリアは俺と一緒になる」
何で甘い口付けだったのだろう。冷酷で乱暴で、無理やり抱かれたのは本当なのに、さっきの口付けはとても優しくて甘かったーー。それに、責任を持って私の魔力を上げるって。
ルーイのしていることは無理やりで乱暴だけど、つまり寂しいから彼は私と一緒にいたいって事よね? 私は正直なところ、第二王子であるフィンリーのことなんてもうどうでもよくなっていた。
フィンリーはフィンリーでカミラに一途な思いを抱いているし。それに、ルーイのことをもっと知りたいと思っている。こんな出来事から始まる恋もあってもいいよね。だって、ルーイは私のことを溺愛してくれてるみたいだし。
「ルーイ、そんなに強く私のことを抱きしめないで……。ねえ……」