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奪われた魔法と私を抱いた魔術師ルーイ

 街に出ると、三角の屋根の煉瓦造りの建造物が建ち並んでいる。ここで生まれ育った私にとって見慣れた光景だ。果物などを売っている屋台もある。そして、川も流れており、近くは海。ここは海岸沿いの街だ。心地よい風が吹いていて気持ちいい。


 さて、魔術師ルーイが居るところだけど、その場所は、第二王子フィンリーから聞いた通り、屋台が並んでいるこの通りを抜けた先にある青い三角の屋根の煉瓦造りの家らしい。そこにルーイが住んでいる。ルーイには、フィンリーから先に私が訪ねると連絡してあると言っていた。


 ここか。目の前には話に聞いた通りの青い三角の屋根の煉瓦造りの家だけでなく、ラズベリーを育てているのか、ラズベリーも玄関の近くに植えてあった。その大きさは一般的に食べられるものよりも二回りも大きい。これも、ルーイの魔法によるものなのだろうか。


「失礼します」


 ルーイがどんな人物なのか。魔術師と聞いて、ミステリアスな印象は持っているけれど、ファンリーからそれを聞くことはなかった。その為、会うまでは、とても緊張していた。玄関のドアを開けたが、返事がない。奥で何か作業をしているのだろうか。


「ルーイさーん?」


 大きな声で奥まで響くように呼んでみると、私の声に気づいたのか、奥からゆっくりと黒いローブを着た男性が出てきた。黒いローブの中は、気品のある貴族が着るような正装だったので、魔術師と言うのは気品と威厳のある職業なのだなぁと思う。


「お前が、アリアか。……魔法が下手くそな」


 早速、初対面でギロリと睨みつけられてしまった。その顔は冷酷そうで、優しさの欠片もないような表情に私はビクッと怯えた。今日からこの人と一緒に魔法を極めるの?怖いよ。何か最初に言われるのかな。とりあえず、魔法を使ってみろ、とか命令されるのだろうか。そんなことを1人思っていると、ルーイは、黒いローブを脱ぎ、魔法の杖のようなものを私に向けて呪文を唱えた。


「ロスト!」


 ロスト? ……え? 今、ロストって言った? 私は一瞬のことに頭がついていかなかったが、悪い予感がする。ルーイの顔をもう一度見ると、薄気味悪い笑みを浮かべている。


「ふふ。お前の魔力は全部俺が奪った。魔法がろくに使えないやつが持つ魔力なんて無駄だもんな。これでお前は魔法使い失格なんかじゃなくて、もう魔法使いではない。帰れ」


 ルーイは冷酷な表情と感情のない声で、私に言った。私は完全に、魔力をルーイから奪われてしまったようだ。ルーイはまた奥に戻ろうとする。


「ちょっと待って! 私、貴方と一緒に魔法を極めるために来たの。お願いします。魔法を教えてください」


「……いや、駄目だ。お前のような生ぬるい奴に魔法が使えるようになるわけないだろう」


「お願いします。どうか、魔法を上手く使えるようになりたいんです! お願いします!」


 私は必死で懇願した。というのも、私は初等部の頃から勉学に励み、真面目に優秀であるように生きてきた。それでやっと掴んだ第二王子の嫁という立場だった。しかし、ここまで来て、魔法が下手くそだからと婚約破棄された。私のプライドはズタズタだ。魔法使い失格なんて。せめて、魔法を上達させないと示しがつかない。


「なかなかにしつこい奴だなーー。分かった。じゃあお前、俺のために何でもするか? 何でもするなら、一緒に魔法の訓練をしてやってもいいぞ」


 私は必死だった。ここまで来て、魔力も失いましたじゃ、第二王子のフィンリーとカミラにあなたは、結局魔法も使えないし華もない、生真面目なだけの地味な女ね、と一線を引かれてしまいかねない。私は気がつけば、ルーイの前で土下座をして頼み込んでいた。それくらい、ルーイは威厳があり人を仕えさせるのがとても上手だった。この人の命令を無視することはできない。


「お願いします。ルーイ様」


「よしーー。分かった。奥に来い」


 ルーイ様に言われ、私は一緒に家の奥へ向かった。そこに広がっていたのは、魔女が鍋を回して魔薬を作っているようなそんないかにも魔法使いらしい場面ではなく、至って普通の家だった。キッチンにリビングが広がっている。一つ違うのは、キッチンにドレッシングではなく、魔薬らしいものがたくさん並べられていることぐらいだろうか。


「そこに座れ」


「は、はい」


 私はルーイ様の命令で、ソファに座った。私がルーイ様のところに来てからまだ10分くらいであるというのにも関わらず、この短時間で、私とルーイ様の主従関係はすぐに結ばれてしまった。


 私から魔力を奪い、弱みを握って、魔力を取り戻すためには従うしかない状況にさせたルーイ様と、彼自身の持つ威厳や気品、ミステリアスなオーラが私のことを奴隷のように自然に彼に従わせてゆく。


「これから、お前のことを抱かせてもらう。好きにしていいみたいだから」


 私に拒否権は無かった。私はこのリビングのソファの上で、ルーイ様に抱かれることになったのだ。

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