魔力の訓練のはずでしたが、濡れています
私とルーイは、この日、魔力の訓練を一緒にすることになった。訓練用の服として、普段令嬢として着ているドレスではなく、動きやすい運動用の長袖のシャツに長ズボンを履いてスニーカーを履いている。
私の魔力も当初に比べるとぐんと上がったので、本格的な訓練をルーイは私と一緒にしてくれる。その為に森にやってきたんだけど……何なの、ここは。りすやいたちや猿などの野生動物がたくさんいて、怖いんですけど。
「あの……、動物たちがたくさんいて怖いんですけど」
「大丈夫だ。ここの動物たちには、俺たちに懐くように魔法をかけてあるから襲ってこない」
ルーイの言う通り、森の動物たちは、たたっと人懐こく私の足に駆け寄ってきて、齧ったりしてこない。
「ふぅ。良かったあ」
私は安心してこの森の中で動き回ることができると認識した。普段、侯爵令嬢としてドレスを着ている私は、この日、運動用のズボンを履くことになかなか慣れていかなかったが、ルーイはそんな私を見て、少しドキドキしている様子だった。私のドレスにはあまり関心のない感じだったのに。
「なんか、その運動用の服……ラフで似合っているな」
「えっ?!」
もしかして私は、令嬢として長い髪を巻いてフリフリのドレスを着て生活するよりも、思い切って髪をショートにして、ズボンを履いた姿の方が似合っているということですか? なんか心外なのですが……。さらっと、長いブラウンの髪をポニーテールに結った私は、下ろしている時よりも気分がさっぱりした。
「やっぱり髪型もそっちの方が似合っているんじゃないのか?」
ルーイにさりげなく言われてドキッとする。ポニーテールの方が似合うなんて思ったことがなかった。てゆうか、ポニーテールなんて何年ぶりだろう。幼稚園の頃から、令嬢としてお淑やかに振る舞うように、そして、第二王子の婚約者になるために清楚で優秀にと生きてきた私が、こんな事を言われたことで、少し本来の自分らしさを取り戻していく感じがした。
そう言えば、私、魔法も料理も楽器もファッションも苦手で不得意で、第二王子の婚約者としては似つかわしくないけれど、小さい頃から活発で動くことは大好きだったのよね。走るのも速かったし。思いがけないところで見つけた自分の長所に1人で感激しているところで、ルーイが話し始めた。
「自惚れるなよ。自惚れは失敗の元だ。これから魔法の修行をするから、俺の真似をしっかりして見よう見まねで続けてやってみろ」
「は、はい」
そうだ。私とルーイはあくまでも魔法を極めるための修行中。言わば、先生と生徒。指導者と教えを乞う者の関係性だ。そこはしっかり一線を引いて魔法を学ばないと。気を張った私にルーイは持ってきた魔法の杖で、私の胸に触れる。
「ひゃ、ひゃあっ!」
それで敏感に感じてしまい、股をぐっしょりと濡らしてしまった。恥ずかしい。気を張ろうと心を入れ替えた瞬間だったのに。相変わらず、この敏感な身体にされたままで真面目に訓練なんてできやしないよぉ。
「ああんっ…。あっ、ああっ、んっ」
その後も、私を面白がるように魔法の杖の先っぽで私の胸やあそこを叩き始める。側から見たらエロおじいさんがすることなのに、こんな美形の冷酷ミステリアス魔術師がすると、こんなことでも様になってしまうのが、世の中のおかしい所だ。なんでもイケメンがやると違うとはこのことか。
「じゃあ、こんな風に今炎を出したから、真似して出してみて」
「はいっ」
ボオッと炎を手から出せたのは早かった。やっぱり、この敏感に感じ取ればとるほど、魔力が上がっていると言うのは本当なのか。疼けば疼くほど、魔力が上がっていく。きっと、ルーイがもっと私の股を突けば突くほど、そして、それに反応して私があそこを濡らせば濡らすほど、炎は大きく、そして自由自在に操れるのだろうと思ったが、この日は、ルーイはそこまで私のことを弄ばなかった。
「……あまり、しないのね。もっと弄んでくるかと思った」
「ああ。急激な魔力の上昇は魔法の使用者の身体に障るからな」
「そっか。さすが、魔術者。そういう規律もしっかり守っているのね」
「魔法も1日に幾つも使えるものではない。ましてや、アリアのような、初めから上手くなかったものがこうやって私の実験台となり、魔力を上昇させていくというのは多少無理があるのは当たり前だろう」
「そうよね……」
私はルーイの話に納得し、その場に座って身体を休めた。持ってきた水も飲んでしっかりと水分補給をした。季節は秋だから、真夏ではないだけ、涼しい風が吹いていて訓練もやりやすかった。
「大丈夫か?」
「えっ? う、うん」
「そうか。少しでも体調や異変があったら俺に言え。すぐに家まで抱いて送っていく」
家まで抱いてーー? ……瞬間移動の魔法を使ってもいいのに。ルーイは私と歩く時間を大切にしてくれているのだろうか。