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婚約破棄と魔法使い失格

「えっ? 今何て……?」


「だからーー。聞こえなかったのか? 俺は、カミラのことが好きになったから、アリア、すまないが君との婚約は破棄させてもらう」


 婚約破棄? え、どういうこと? てゆうか、婚約破棄ってこんなにあっさりとされてしまうものなのですか?


 私は口から言葉が出ず、そのまま高い天井を見つめていた。6畳の部屋が4部屋分くらいある広い部屋の机に彼はとても偉そうにと言う言い方はあれだけど、威厳のある姿で座っていた。


 ここは、特別に大学内に作られた第二王子専用の部屋だ。そして私は婚約破棄を私に告げた第二王子であるフィンリーの部屋を出て、外をしばらくボーッとしながら歩いていた。


 私は初等部の頃から、成績優秀で真面目な性格で、この王家も一緒に通う学校では、トップの成績を誇っていた。現在、大学四年生となり、大学卒業後は、婚姻する予定だったのだ。だから、第二王子の嫁になるのも当然の結果というものだったはずーーなのだが。どうしてだろう。私は納得いかず、またフィンリー王子の部屋へ戻った。


「どうして、婚約破棄などされたのですか? 私よりもカミラが良い理由は何なのですか?」


「カミラは、魔法がとても優秀なんだよ。氷の魔法に水の魔法、炎の魔法に電気の魔法と色々な魔法をすぐにマスターした。その上、気さくで愛嬌のある可愛らしいカミラのことが僕は大好きだ」


 カミラ。私と同学年。確かに生真面目で融通の利かない私と違って、彼女はとても柔軟で、人とコミュニケーションを取るのが上手な子だ。争いごとも好まない性格で温厚で優しくお淑やか。私もガサツなわけではないけど、彼女には上品さで負ける。


 カミラはフルートやピアノの演奏も、得意だし、ファッションセンスも抜群で料理も上手い。私も、楽器はできないことはないけれど、基本的なところまでしかできない。ピアノの簡単な曲をニ、三曲弾けるくらいだろうか。


 そして、センスはややない。料理も下手ではないが、抜きん出て美味しいと評価されるほどでもない。華があるのは、圧倒的にカミラの方だろう。そして、多分、婚約破棄を決定づけたことはーー。


「アリアは、魔法がとてつもなく下手だからね。魔法を極めるために、修行として魔術師ルーイのところへ行った方がいいと思うよ」


 そうだ。私は、魔法がとてつもなく下手だった。何でなの? どうして、自由自在に水や氷、炎や電気を生み出すことができないの? 瞬間移動も透視もできないし、空を飛ぶことだってできない。できる魔法と言えば、その辺に生えてる草を花に変えることくらいだった。それくらい私の魔法は下手だった。王子であるフィンリーがそんな私に幻滅するのも頷けるから反論することができない。


「わ……分かりました。私は、魔術師ルーイのところへ行って、魔法を極めてきます。婚約破棄も承諾いたします」


 パタン


 ドアを閉めて、また第二王子のフィンリーの部屋を出た。淡々といつものポーカーフェイスでそう答えたけれど、心の中はどんよりと落ち込んでいる。今にも泣きたい気分だ。どうして私は魔法が使えないのだろう。


 実は、先週もこんなことがあった。魔法の授業で、瞬間移動をする授業だったのだけど、カミラに不満をぶつけられた。なんでこんな簡単な魔法も使えないの? こんな人が第二王子の嫁候補なんてありえない! と。普段温厚なカミラが不満をぶつけるなんてよっぽどだ。それくらい、カミラと私の魔法の実力の差は天と地だった。


「あら、アリア」


 高級そうな絨毯が敷かれ、幅は5メートルくらいあるであろう広い廊下に似つかわしくない暗くどんよりとした気分で歩いていると嬉しそうに微笑むカミラに声を掛けられた。


 私は、婚約破棄されたことと、魔法使い失格と言い渡されたこと、そして、魔術師ルーイのところへ魔法を極めるために修行へ行くことをカミラに話した。すると、心の優しいカミラは、この間はつい不満を募らせていたようだったが今日は私に同情してくれていた。心の奥では笑っているのかもしれないけれどーー。


「アリア……。それは大変ね。私が言っていいことなのかは分からないけれどーー。魔法、上手くなるように応援しているわ」


 カミラが悪いわけでは決してない。悪いのは、魔法が上達できない私のせいなのだ。まあ、第二王子のフィンリーは、全面的にカミラのことを愛している様子だったけれど。


「ありがとう。カミラ。第二王子は少しわがままなところがあって大変だと思うけれど、よろしくね」


 というわけで、私は早速明日から、魔術師ルーイのところへ行って、魔法を極めることにする。ルーイは、別にそんなに人里離れた山奥にいるわけではなくて、大学からも近い街中に普通にいるの。一軒家があってそこに住んでいるって感じ。それは意外だった。


 そして、どうしてこんなことを普通に知っているかと言うと、第二王子のフィンリーとルーイは、同じ歳で小さい頃から親しかったからなの。つまり、私とルーイも同じ歳ってわけで、多分ルーイは、いつも魔法のプロフェッショナルとして、魔法を専門に仕事をしているんだけど、具体的にどんな魔法を使って仕事にしているのかは知らない。


 とにかく、初めて会う相手だから、変に思われないように、髪もちゃんと整えて、服装もキッチリとしたドレスを着て、食事もちゃんと食べて、前日にはしっかりと睡眠をとって行くようにしなくちゃね。

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